6月15日(火)に最終回を迎えるドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系、火曜21時〜)。魅力的な登場人物が織りなす温かいストーリーが、大きな反響を呼んでいます。
坂元裕二さん脚本作といえば、軽妙な会話劇や記憶に残るセリフが持ち味の一つ。『とわ子』にも、じんわりと心に沁みわたる名言がたくさんありました。
最終回を前に、ドラマの名ゼリフとともに、ストーリーや作品の魅力を振り返ります。
※第9話までのネタバレを含みます。ご注意ください。
とわ子(松たか子さん)の良き友人、綿来かごめ(市川実日子さん)のセリフ。
とわ子の家で、美味しそうなご飯とワインを飲みながら、2人が語らうシーンは印象的でした。
このセリフは、「3回離婚しているのに?」と自虐したとわ子に対し、かごめが返した言葉です。
「離婚」したことを決してネガティブにとらえず、とわ子の選択を肯定する。かごめの優しさを感じます。
第2話は、とわ子の3番目の元夫・中村慎森(なかむら しんしん)がメインの回。
岡田将生さん演じる慎森は、皮肉屋でひねくれものなのに、どこか憎めない。視聴者からとても愛されたキャラクターでした。
この回では、慎森が今もとわ子を思い続けていることが明らかになりました。
とわ子に正直な気持ちをなかなか伝えられなかった慎森。2話の終盤で、慎森はついにとわ子にその思いを伝えます。
「君は昔も今もいつも頑張ってて、いつもきらきら輝いてる。ずっとまぶしいよ」「それをずっと言いたかったんだ」と話した慎森に、とわ子は「別れたけどさ、今でも一緒に生きてるとは思ってるよ」と返しました。
別れたけれど、いまも繋がっている。
とわ子と、3人の元夫たちとの今の関係性を象徴するようなセリフでもありました。
第4話では、かごめに焦点が当てられました。
10歳の頃に出会い、30年来の付き合いになるとわ子とかごめの絆が描かれたこの回。
絵を描くことが好きだった2人は、小学生の頃に「空野みじん子」というペンネームでマンガを共作します。空野みじん子は喧嘩の末、解散してしまいますが、その後もとわ子とかごめの友情は続きました。
4話の終盤、かごめはマンガに再挑戦することを宣言します。
この時のかごめととわ子の会話が印象に残った人も多いのではないでしょうか。
「あたしにはルールがわからないの。みんなが当たり前にできてることができない」。かごめは自分のことについて、そう話します。
かごめ:じゃんけんで一番弱いのが何か知ってる?
とわ子:グーチョキパー、みんな一緒でしょ?
かごめ:じゃんけんで一番弱いのは、じゃんけんのルールがわからない人。あたしにはルールがわからないの。会社員もできない。要領が悪いって言ってバイトもクビになる。みんなが当たり前にできてることができない。あたしから見たら全員山だよ。山、山、山、山。山に囲まれてるの。あなたは違うでしょ。
とわ子:私だってできないもん。
かごめ:社長できてるじゃない、じゃんけんできてるじゃない。
とわ子:つらいもん。
かごめ:でも、できてる。それはすごいことだよ。あなたみたいな人がいるってだけでね、あ、私も社長になれるって、小さい女の子がイメージできるんだよ。いるといないとじゃ大違いなんだよ。それはあなたがやらなきゃいけない仕事なの。あたしには何にもない。この歳になって手に入ったのは、太くて長い眉毛だけ。だから、うまくいこうがいくまいが、やりたいことをやる。ひとりでやる。
かごめというキャラクターの魅力がつまったやりとりでした。
このセリフも、4話で登場しました。
ある男性と食事の約束をしたかごめ。とわ子は面倒くさがるかごめの背中を押しますが、結局、かごめは食事の約束をすっぽかしていました。
4話の終盤で、かごめは自分の恋愛観について打ち明けます。
「恋愛が邪魔。女と男の関係が面倒くさいの。あたしの人生にはいらないの。そういう考えがね、寂しいことは知ってるよ。実際、たまに寂しい。でもやっぱり、ただただそれがあたしなんだよ」
とわ子はその言葉を聞いて、「そう」とだけ返事をしました。
坂元裕二さんが手がけるドラマには、さまざまな生き方や考えをもつ登場人物が描かれます。『大豆田とわ子』には、「恋愛をしない」人生を選ぶかごめというキャラクターが描かれました。
恋愛や結婚がすべてではない。そんなメッセージが込められているようにも感じます。
放送後、かごめのセリフにはSNS上で多くの共感が寄せられました。
第5話で登場したこのセリフ。
とわ子は、仕事で知り合ったイベント会社の社長・門谷(谷中敦さん)と、“バツ3”同士という境遇で意気投合します。
しかし、この門谷がなかなかの曲者。
突然とわ子にプロポーズし驚かせたかと思えば、3度離婚したとわ子に向かって、「人生に失敗している。僕はそんな傷を丸ごと受け止めてあげようと思ってるんです」と言いのけました。
男性の離婚は『勲章』になるが、女性の離婚は『傷』になる――。そんな歪んだ偏見もあらわにします。
とわ子はあっけにとられ、戸惑いの表情を見せますが、すぐさま“反撃”します。
「確かに色々あっての結果ですけど、私自身いま楽しくやってますし、何だったらなかなか面白い人生だなって思ってます」と話し、「失敗した人生なんてないと思います」と門谷にはっきりと言い返しました。
どんな人生でも生きる価値があるのだと、励ましてくれるようなこの言葉に、ハッとさせられました。
『大豆田とわ子と三人の元夫』は中盤で、かごめが突然亡くなるという衝撃的な展開を迎えます。
かごめが亡くなってから1年後。とわ子はひょんなことからオダギリジョーさん演じる小鳥遊(たかなし)と出会います。
小鳥遊と雑談をするうち、かごめへの思いが止めどなくあふれてくるとわ子。
かごめは幸せだったのか、自分にできることはなかったのか。
そんな後悔や悲しみを語るとわ子に、「人間にはやり残したことなんてないと思います」と、小鳥遊は優しい言葉をかけます。
人生って、小説や映画じゃない。幸せな結末も、悲しい結末も、やり残したこともない。
あるのは、その人がどういう人だったかということだけです。
だから、人生にはふたつルールがある。
亡くなった人を、不幸だと思ってはならない。生きている人は、幸せを目指さなければならない。
人は時々寂しくなるけど、人生を楽しめる。楽しんでいいに決まっている。
このセリフは、4話での「たまに寂しい。でもやっぱり、ただただそれがあたしなんだよ」というかごめの言葉とも重なります。
7話から登場した“新キャラ”の小鳥遊でしたが、回を重ねるたび、そのキャラクターに魅了される人が続出しました。
このセリフは、小鳥遊ととわ子がファミレスで交流を深めていくシーンで登場しました。
少し離れた席に座る4人の若者たち。4人は、3個のケーキをどうやって分けるか話し合っていました。
それを見たとわ子は、数学が好きな小鳥遊にケーキを分ける方法を教えてあげたらどうかと提案しますが、小鳥遊は「自分たちで考えるでしょう」と若者たちを見守ります。
若者たちは結局、ケーキを細かく刻んで食べることに。
「ダメだったじゃないですか」と笑うとわ子に、小鳥遊は「いいんですよ。あの方が思い出になるでしょう」と少し微笑みながら答えるのです。
小鳥遊の魅力と優しさが垣間見える一幕でした。
とわ子が小鳥遊からプロポーズされたことを知った慎森は、デート前のとわ子を止めに自宅まで押しかけます。
半ば無理やり、デートを妨害しようとする慎森。とわ子のことを誰よりも思っている、とその気持ちを伝えます。
困り果てながらも、とわ子は「もう一人は嫌なんだよ。限界なんだよ」と吐露します。
慎森はそう言ったとわ子に、涙を流しながら、この言葉を返しました。
結局、とわ子は小鳥遊からのプロポーズを断りました。
そして、1番目の夫である八作(松田龍平さん)の働くバーを訪れます。
「今さ。この人素敵だなって思う人とお別れしてきた。一緒にいて安心できる人だった」。とわ子はどこか清々しい顔をして、八作に告げます。
この後、とわ子と八作は、お互いにとって大切な存在だったかごめの思い出を語り合います。ここからのシーンは、物語全体のハイライトと言えるほど、素晴らしいものでした。
もし離婚せず、夫婦として生活を続けていたら、どうなっていたか。2人はそんな想像をします。
家族として一緒に生きていく未来があったかもしれない。2人は思いを馳せますが、結局、ひとりで生きていくことを選択したのです。
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心に響く、たくさんの名言を残してくれた『大豆田とわ子と三人の元夫』。最終回は、6月15日(火)夜9時から放送されます。
Source: ハフィントンポスト
『大豆田とわ子と三人の元夫』の名言が心に響く。セリフから、その魅力を振り返る