クランクイン6/12
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2021年4月よりTOKYO MXほかにて放送中のオリジナルテレビアニメ『Vivy ‐Fluorite Eye’s Song‐』(以下、『Vivy』)。放送開始から徐々に話題を集め、今や今期1位に推す声も多いが、その人気の秘けつはどこにあるのか。同じく「歌」が物語のキーとなる人気アニメ『マクロス』シリーズとの共通点や『Vivy』ならではの魅力を分析しながら、視聴者の心をつかむ“歌アニメ”のポイントを取り上げる。
本作は、「歌で人々を幸せにすること」を使命として与えられた自律人型AIの主人公ヴィヴィが未来から来たAIマツモトと共に、100年後に起こるとされるAIと人間の戦争を避けるため、ターニングポイントと思われる出来事を未然に防ぐSFヒューマンドラマ。『Re:ゼロから始める異世界生活』の原作者・長月達平と同名アニメシリーズ脚本を担当した梅原英司が原案・シリーズ構成を手掛け、「歌」が物語のキーとなる。
YouTubeで期間限定公開されているノンクレジットオープニング映像は140万再生を突破(2021年6月11日時点)。Spotifyの「バイラルチャート(日本)」でもオープニングテーマ「Sing My Pleasure」が2週連続で1位を獲得するなど、その人気がうかがえる。
■芝居と歌の妙
主人公ヴィヴィを演じるのは、アニメ『魔法使いの嫁』の羽鳥チセや『キャロル&チューズデイ』のAIマネージャーなど数々の作品で芝居がさえる声優の種崎敦美。AIでありながらも、どこか人間味を感じられるヴィヴィを見事に演じている。時折のぞかせる感情表現からは学習と変化が垣間見え、キャラクターの解像度を上げている。
一方、ヴィヴィの歌唱パートを担当するのは、歌手の八木海莉。音楽プロデューサーの山内真治が「将来性豊かでまだデビューされていない人」を探してたどり着いた期待のシンガーという。彼女がヴィヴィとして歌唱するのは、オープニングテーマ「Sing My Pleasure」。アップテンポな曲調をAIらしく淡々と歌っているように感じる…にも関わらず、不思議とどこか感情も伝わってくるような表現が印象的だ。
キャラクターの演技と歌唱の担当を分けるケースは『マクロス』シリーズにも前例があり、『マクロス7』の熱気バサラや『マクロスFRONTIER』のシェリル・ノーム、『マクロスΔ』の美雲・ギンヌメールなどがそう。ただ、この手法を取りさえすれば“ヒット”するわけではなく、重要なのは“どれだけキャラクターを表現できているか”。経験が浅いながらも音楽スタッフにディレクションをしてもらいステップアップしていく八木海莉の歌は、作中でさまざまな人や出来事と遭遇し「変化」するヴィヴィとマッチしている。
そんな本作の音楽制作の大部分を担当するのは、神前暁(MONACA)。『化物語』の「恋愛サーキュレーション」、『涼宮ハルヒの憂鬱』の「God knows…」「恋のミクル伝説」をはじめ、彼が手掛けた楽曲は多くのアニメファンから愛され続けている。本作の劇中歌、劇伴などは各場面で効果的に使われており、100年続くヴィヴィたちの旅を彩る。
■実社会の時代背景や音楽シーンを想起させる歌姫
「歌でみんなを幸せにすること」が使命のAIヴィヴィは序盤こそ人を感動させられないものの、さまざまな場面で歌いながら少しずつ人の心に響く歌を届けられるようになっていく“歌姫”。曲調や特性は違えども、AIの歌が感動を呼ぶという点は、ソフトウェアで入力した歌詞とメロディで“歌声”を届けるバーチャル・シンガーが活躍する現代を象徴しているようだ。
現実世界の時代背景や音楽シーンを想起させたり、考察したりできる点は『マクロス』シリーズでも見受けられた。1994年に放送された『マクロス7』のバサラが所属していた4人組ロックバンド「Fire Bomber」は当時のバンドブームを色濃く反映。また、2016年放送の『マクロスΔ』の戦術音楽ユニット・ワルキューレは、アイドルではなく人数も違うものの、AKB48をはじめ2010年代に目覚ましい活躍を見せたアイドルグループを想起させる。
「歌アニメ」における歌姫・歌い手の存在は重要で、これまでのヒット傾向からもその魅力が人気を左右する要因のひとつと言えるだろう。
■歌とストーリーの密接な関係
「歌アニメ」において、物語の転換点や重要な場面で新曲やエピソードに沿った楽曲が流れ、それが視聴者の心をつかむことも多々ある。『マクロスFRONTIER』の歌姫ランカ・リーが第12話「ファステスト・デリバリー」にて歌唱した「星間飛行」もそのひとつで、同曲は物語が大きく動くきっかけとなっただけでなく、現実でも「超時空シンデレラ」と呼ばれるランカを応援する動きが見られた。
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Source: まんがとあにめ
『Vivy』はなぜファンの心をつかむのか 後世に残る“歌アニメ”との共通点とともに考察