無料チャットアプリ「LINE」に登録された個人情報などが、中国の技術者から閲覧可能だった問題で、データ保護の観点などから検討を行ってきた特別委員会は6月11日、途中経過を公表した。
この中で、LINEが2013年、2015年、2018年の過去3度にわたり、個人情報などについて「主要なデータは日本に閉じている」という趣旨の説明を決定したことが明らかにされた。実際には画像や動画などは韓国で保管されていて、特別委員会では「大きな乖離が存在している」と指摘している。
LINEは3月、ユーザーの電話番号や本名といった個人情報が、業務委託先の中国・大連の拠点にいる中国人技術者から閲覧可能だったことが判明。個人情報の取り扱いをセキュリティやガバナンスの観点から検証するため、有識者による特別委員会を設置していた。
総務省は4月、LINE社に「安全管理措置等や利用者に対する説明に関して一部不十分なところがあったと認められる」などとして行政指導を実施している。
この日の会見には、座長を務める宍戸常寿(ししど・じょうじ)東京大学大学院教授らが出席し、冒頭「利用者のデータの取り扱いが、開発・サービス側の目線から捉えられる傾向があったことが明らかになった。利用者の目線に立って、プライバシーやセキュリティの保護のあり方を常に確認し、見直すとともに、正確な情報発信によりアカウンタビリティを果たすという姿勢が社内で不足していたことが原因だったのではないかというのが、現時点での私たちの認識だ」などと説明した。
その上で、LINE社では過去に2013年、2015年、2018年の3度にわたり、データの取り扱いの対外的な説明について「主要なサーバーは日本国内にある」などといった内容と決めていたことが明らかにされた。こうした「日本国内に閉じている」趣旨の説明は官公庁や政治家、地方自治体にもされていた。
実際は、画像や音声などは韓国国内のデータセンターに保管されていて、特別委員会では「(実態と)大きな乖離が存在」「なぜ今日まで、こういう形になるまで明らかにならなかったのか、ということに尽きる」という指摘がされている。
宍戸座長はこれに対し「LINEはメッセージサービスであり、通信の秘密を強く順守しなくてはいけない。また成長していく過程で特に韓国との関係が報道で指摘されることもあり、(日本に保管されている)トーク(テキスト)の部分に力点を置いて考えたのだろう。しかしその後、画像や動画が増え、『主要』という言葉の中に入れるべきだったのに見落としてきた」と話した。
また、LINE問題をめぐっては、国民や企業などに国の諜報活動への協力を義務付ける中国の「国家情報法」などへの検討が十分に行われていなかったことが、問題発覚当時の出澤社長の記者会見で分かっている。
宍戸座長はこの点について「国家情報法が施行されるときに、問題視する声が意味のある形で上がっていなかったというのが今のところの認識だ」と話した。
今回の報告ではさらに、日本国内へのデータ移管スケジュールについても、当初の説明が不正確だったことが改めて指摘された。LINE社は2021年6月中までに画像や動画ファイルなどを移転させると説明していたが、実際には「KEEP」は2022年上半期、「アルバム」は2024年上半期にそれぞれずれ込む。LINE社はこの点について「説明に不十分な点があった」と陳謝している。
特別委員会は今後、不正確な対外説明が行われてきた原因や、中国からの個人情報へのアクセスなどについてさらに調査を進める。宍戸座長は「調査は6合目。夏の終わりくらいが一つの目処ではないか」と話した。
Source: ハフィントンポスト
LINE社「主要なデータは国内保管」と不正確な説明を3度決定。実際は一部、韓国に 「大きな乖離が存在」