「『女性初』というラベルより、何ができるのかの方が重要だと思う」
6月1日に経団連の副会長に就任したDeNAの南場智子会長。
このニュースには、必ずと言っていいほど『女性初』という枕詞がついて回る。
経営者として大事にしている「多様性」は、決してジェンダーだけではない。
「女性」であることは特別なことではないはずなのに、「女性」であることがニュースになってしまう。
でも、「女性初」を積み重ねていかなければ、ジェンダーギャップ指数120位という日本の状況は変わらないーー。
3月25日に配信されたハフライブ 「キャリアとSDGs」では、南場さんと株式会社YOUTRUST代表の岩崎由夏さんと一緒に、そんな葛藤への本音についても語った。
「一点の風穴が開いたという感覚。私たちの世代は女性起業家やキャリアでチャレンジする人が増えている中で、一つ穴が空いたから次はここをこじ開けていこうというモメンタムが高まった」
南場さんが女性初の経団連副会長に内定したというニュースについて、株式会社YOUTRUST代表の岩崎さんは少し興奮気味に語る。
岩崎さんはDeNA出身。独立後、「女性起業家」や「ママ社長」と呼ばれたり注目されたりすることに、「違和感しかなかった」という。
「『初めて』というのは恥ずべきことだと思っている。でもまずはファーストステップとして、価値観が変わり始めている時代になったんだと嬉しかった」
南場さんは「ジェンダーは、多様性の軸の一つに過ぎない」と指摘する。
「経営者としては、多様性は組織を強くして事業を発展させるために絶対に重要。だけど、転職経験の有無や、得意分野、どういうストレスに強いか、性格やスキル、バックグラウンドなどが多様化した方がいい」
ただ、日本の状況は、南場さんのいう「多様性」のもっと手前にあるのが現実だ。
上場企業の女性役員の比率はたったの5%。男女格差を示すジェンダーギャップ指数でも、日本はずっとG7最下位。
たくさんあるはずの多様性の軸のうち、ジェンダーばかりが注目して語られるのは、それだけ男女不平等な状況だということの裏返しなのでは?
そう問われると、スタジオ全員が同意していた。
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「多様性がある組織であるべきだ」という考え方は日本全体に浸透しつつある。
だが、多様性がある組織がなぜ強いのか、という点を自分の言葉で語れる人が少ないのではないかーー。
岩崎さんの問題提起に、南場さんはこう応じた。
「予期せぬショックが起きたときの強さは多様性があるチームの方がずっと強い。新しいことを始める、常識に支配されないプロダクトを作るときも、多様性がある組織の方がいい」
同時に「多様性がある方がマネジメントの難易度は格段に上がる」として、経営者側の力量が問われること、中長期の視点で経営することの重要性も指摘。
岩崎さんは「多様性のあるチームで大成功する」と今後の目標を語り、「私は多様性のある組織が強いと信じている。大成功して、背中で示していく」と力強く宣言した。
日本の経済界の変化を予感させる、南場さんの経団連副会長就任。
『女性初』だけでなく、1999年設立のITベンチャー・DeNAが経団連に加入してすぐに副会長を輩出した、というのも大きなニュースのポイントだ。
「スタートアップは慈しむものではなく、その国の経済のイノベーションや経済成長のドライビングフォース。経済のど真ん中に来なければいけない」
「日本からポストGAFAに匹敵するスタートアップを出していく。そのためにできることは何でもやりたい」
副会長就任後にやりたいことを問われ、DeNAやスタートアップへの思いがあふれた南場さん。スタートアップを活気づけるための意欲を語る言葉に、熱がこもった。
Source: ハフィントンポスト
“女性初“は、しっくりこない。南場智子と岩崎由夏、師弟リーダーが語った組織を強くする方法