男性の育児休業取得を促進するために提案された改正育児・介護休業法などが6月3日、衆議院本会議で可決され、成立した。
厚生労働省の調査では、過去5年間に育休などを取得しようとした男性のうち26.2%が上司から嫌がらせを受けるなどの「パタニティハラスメント(パタハラ)」被害にあっていたことがわかった。そのために、育休取得を諦めるという実態も浮かび上がる。
これまでも、企業で働く人であれば男性でもほとんどが育休を取得する権利があった。にも関わらずこれまで、取得率は伸び悩んでいる。
新しい法律では、取得の障壁となっていた職場の雰囲気を変えることで、育休取得を促進していくことを目指している。
具体的に、法改正で変わるのはどのような点なのか。男性だけでなく、女性の育休取得に関わる部分もある。
男性の育休について、政府は2025年までの取得率30%を目標に掲げ啓発活動などを実施してきたが、2019年度は7.48%と低い水準にとどまっている。
公益財団法人「日本生産性本部」が2017年度の新入社員に行ったアンケートでは、「子供が生まれたら育休を取得したい」と回答したのは、女性で98.2%、男性で79.5%に上る。
一方、厚労省が行なったハラスメントに関する調査(2021年3月発表)で、育休などでパタハラを受けたと回答した男性の割合は26.2%とおよそ4人に1人が被害にあっていることが明らかになっている。要因としては「育休を取得しようとした」ことが最も高く、およそ半数。次いで残業や時間外労働の免除などを求めたことが38.9%だった。
制度があるのに利用者が伸び悩んでいる背景に、「パタハラ」もあるという現状が明らかになった。
受けたハラスメントの内容としては、「上司による、制度等の請求や利用を阻害する言動」が53.4%が最も高い割合となった。また、同僚による同じ行為も33.6%と次いで高かった。
ハラスメントを受けて利用をあきらめた制度では、「育児休業」の割合が最も高く、42.7%の人が取得をあきらめていた。
働く女性は年々増加しているのに対して、男性による家事・育児は進んでいない。6歳未満の子を持つ共働き夫婦の家事・育児時間は、妻が4時間54分であるのに対し、夫が46分と大きな差があることが明らかになっている(2016年社会生活基本調査)。
こうした偏りが女性の負担となり、社会進出の妨げとなっていることが以前から指摘されてきた。
また、産後の女性の死因の第一位となっているのは自殺で、その要因となる「産後うつ」を予防するためにも、産後直後の男性の育児参加が欠かせないと指摘されている。
法改正にあたっては、自民党内でも、2019年6月に有志による「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」が発足。提案を受け、2020年5月の少子化社会対策大綱にも給付金制度や育休の分割取得制度の拡充について検討することが盛り込まれた。
一方、政治だけでなく、民間の動きも加速している。
企業に対して働き方改革などのコンサルティングを手がけるワークライフ・バランス社が取り組んできた「男性育休100%宣言」を掲げる企業は、2021年3月に100社を超えた。
同社は「男性が子育てのために休みが取れる体制になっている職場は育児以外の事情を持つ人にとっても働きやすい職場」とコメントしている。
Source: ハフィントンポスト
男性のパタハラ被害、4人に1人が経験。「男性育休」取得促進する法律が成立。変わる5つのポイント