そのトップであり、“駐車場界の首領(ドン)”と呼ばれた男に異変が起こっていた。
会長「ごほっ、ごほっ、ごほっ……!」
秘書「大丈夫ですか、会長!」
会長「ワシはもう……長くはあるまい」
秘書「そんなことありません。会長はまだまだお元気で……」
会長「気休めはいい。自分の体のことは自分が一番よく分かっている」
秘書「会長……」
会長「だが、一つ心配事があるとすれば……」
秘書「なんでしょう?」
会長「後継者が決まっていないことだ」
会長「三人の息子のうち、誰を次のトップにするか……そろそろ決める時が来たようだな」
会長「さっそく、息子達を呼び出してくれんか」
秘書「承知しました」
次男「なんだ、オヤジ?」
三男「入ります!」
会長「お前たちを呼んだのは他でもない」
会長「次にこの月極グループを背負う者を決めようと思ったからだ」
長男「!」
次男「!」
三男「!」
次男「なにいってやがる兄貴。“やっとか”って思ってるくせによ」
長男「なんだと……」
三男「……」オロオロ
会長「もうよい。さて、どうやって決めるかだが……」
会長「今から三ヶ月、お前たちはそれぞれ一つの駐車場を建て、好きに運営しろ」
会長「その結果、我がグループを背負うに最も相応しいと思った者を後継者として指名する」
長男「分かりました」
次男「やってやるぜ!」
三男「あのボクは……」
会長「お前も参加しろ。ワシに報いたいと思うならば」
三男「わ、分かりました!」
次男(俺こそが月極グループ会長に相応しい……!)
三男(とりあえず、やれるだけのことはやろう)
次男「おう兄貴、負けねえぞ」
長男「私こそな」
次男「あとお前」
三男「なに?」
次男「お前なんざ泡沫だ。せいぜい月極グループの名を落とすような真似すんじゃねえぞ」
長男「その通りだ。若く未熟なお前では、まともな駐車場経営など期待できんからな」
三男「わ、分かってるよ」
長男(さて、私の実力を父さんに見せつけてやるとしようか)
長男(駐車場に必要なもの――それは“利便性”に他ならない)
長男(駅から近いこの場所……駐車場には最高だ!)
長男「おい、地主」
地主「は、はい」
長男「これでこの土地を買い取る」バサッ
地主「ひええええ、売ります売ります!」
長男「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい。我が駐車場へようこそ!」
「お、いい場所に駐車場できたな」
「停めていくか」
「助かるなぁ」
ブロロロロロ…
ブロロロロ…
ブロロロロ…
ブロロロロロ…
長男「ふふふ……どんどん車が入ってくる」
長男「これなら大儲け間違いなし! 後継者に選ばれるのは私だ!」
次男(俺が考える駐車場に必要なもの――それは“安さ”だ!)
次男(ただでさえ車なんて金かかるもんに乗ってるのに、これ以上金はかけたくねえ)
次男(これが運転手のサガってもんよ!)
次男(駐車場は安ければ安いほど人が集まる!)
次男「ってわけで、俺は徹底的に安さにこだわるぜぇ!」
次男(他にも設備や装飾は最小限に抑え、安くなる工夫をしまくるんだ!)
次男「――完成だ!」
「あの駐車場やけに安いな」
「やっす!」
「ちょっと使わせてもらおうかな」
ブロロロロ…
ブロロロロロ…
ブロロロロ…
次男「飛びついてきた、飛びついてきた!」
次男「月極グループを仕切るのは、この俺だ!」
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Source: みじかめっ!なんJ
会長「そろそろ月極グループの後継者を決めねばな……」