自民党は5月24日、性的指向と性自認の多様性に寛容な社会の実現を目的とする「LGBT理解増進法案」を条件付きで了承しました。
この日開かれた内閣第1部会と性的指向・性自認に関する特命委員会合同会議は3時間半に及び、賛成派と反対派の両方から様々な意見が出されました。
しかし最終的に「反対した議員の懸念点を国会対策委員長らに伝え、内容を政調審議会などで議論することを条件に、党内手続きを進めることで了解を得た」と、特命委員会幹事長の新藤義孝議員は、会議後記者団に説明しました。
反対議員が懸念を示した点の一つは、法案の目的と基本理念に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されないものであるという認識の下」という文言が加えられた点です。
この文言について、「理解増進を超えて差別の禁止につながっていかないか、こういう法案を作ることによって行き過ぎた運動や、訴訟につながらないか」という指摘があったといいます。
この懸念に対して、特命委員会側は「この文言は、差別は許されないものであるということを認識するものであって、立法の目的や理念そのものではない」ということを説明。
「LGBTへの理解を増進させるための理念法であり、国がこれから基本計画を定め、自治体が調査研究を行い、何が日本にとってLGBTについての理解を深めるかを議論していこうという法案だということを議論をしながら、皆さんにご了解をいただいた」と、新藤議員は説明しました。
反対議員が「差別禁止にならないか」「行き過ぎた運動や訴訟につながらないか」という懸念を示したという一方で、「理解増進法案」は、明確に差別を禁止してはいません。
しかし、LGBTQ当事者団体や人権団体などはこれまで、差別を禁じる法律が必要だと訴えてきました。
差別的取り扱いを禁止した法律がないと、LGBTQ当事者が差別に直面した時に当事者を守ることができないからです。
法案に差別禁止を盛り込まなかった理由について、特命委員会委員長の稲田朋美議員は24日の会議で「差別の中身が固まっていないから」と説明。
「差別とはなんであるか、何が差別であるかということがわからない段階で、それに禁止や罰則をつけていくということについては、時期尚早だと自民党全体は思っております。なので、まずは理解増進をするということです」と述べました。
性的指向や性自認を理由にした差別的取り扱いについては、近年「トランスジェンダー職員の女性用トイレ利用禁止は違法」という判決や「同性カップルが、異性カップルが受けられる結婚の法的効果を受けられないことは憲法14条違反」という司法判断が示されています。
稲田議員はこういった判決を挙げつつ「今は差別の線引き段階だと思う」という考えも示しました。
また、「差別の内容が明らかになれば差別禁止を定めた法律を作ることも考えているのか」という質問に対して、特命委員会事務局長の橋本岳議員は「今後明らかになっていけば、差別を禁止することも考えられることだと思うし、法案にはそのために今回調査をするということも入っている」と述べました。
さらに、これまでの会議で自民党議員から「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろなどばかげたことはいろいろ起きている」など、トランスジェンダー当事者を傷つける発言があったことについて見解を問われ、橋本議員は「当事者がどう受け止めをされたかについて、私たちは勉強しないといけない」という考えも示しました。
Source: ハフィントンポスト
LGBT法案、自民党で条件付きの「了解」。最後まで「差別は許されない」を懸念。