クリエティブディレクターで、「ハフライブ」メインパーソナリティの辻愛沙子さんが代表取締役社長をつとめる「arca」(東京・渋谷)が6月にオンライン上の“学校”をつくる。
政治、ジェンダー、経済、SDGsなど様々な専門家が月2回、オンラインで授業をする。参加者同士がオンラインのチャットツールで交流できる“クラブ活動”のような場も設ける予定だ。
仕事が忙しくて勉強するヒマがない大人は多い。
日本や世界にはたくさんの社会課題がある。でも「どう考えたら良いのか分からない」という人もいる。
資格の勉強だけでは心は満たされないし、Twitterを眺めていてもモノ足りない。そんな人たちに向けて、この学校の“生徒会長”をつとめる辻さんは呼びかける。
「社会を変えるためでもいいし、人生を楽しくするためにでもいい。みんなでゆっくり学びませんか」
学校の名前は、Social Coffee House(ソーシャルコーヒーハウス)。「現代の大人たちが今改めて知っておきたい教養」を学ぶためのコミュニティだという。2021年6月に始まる予定。「Club(交流)」と「Class(学び)」の2つの場に分かれている。
① 1つ目の「Club」では、参加者がオンラインのチャットツールに招待される。「これってどうなの?」という質問をしたり、「自分はこう思うよ」と感想を言い合ったりできる。「間違えたらどうしよう…」なんて考えなくても大丈夫。誰もが意見を言えるし、誰もが耳を傾けてくれる。オススメの本や映画、音楽について語り合ってもいいし、授業の感想を話し合う場にもなりそうだ。
② 2つ目の「Class」は、月に2回、各分野に詳しいゲストが授業をしに来てくれる。合計90分。まず前半の60分は、ゲストの解説をもとに、辻さん(生徒会長)が質問をしてテーマを深掘りしていく。後半の30分は、何でも聞けるQ&Aの時間だ。
いまのところ隔週金曜日の20:00から21:30の開催を予定しているという。テーマは、LGBTQ+、ジェンダー、政治、ESG投資、ルッキズム、環境問題、アート、ネットの文化史…。様々だ。
Social Coffee House には、2つのコースがある。1カ月7000円の「アクティブ」コースと、1カ月4000円の「マイペース」コースだ。それぞれ解説しよう。ちなみに申し込みは、専用サイトから行える⇒https://socialcoffeehouse.arca.tokyo
■「アクティブコース」でできること:
・オンラインチャットツールを使ったClubへの参加
・月2回のClassの参加+ディスカッションの参加
・リアルな場でClassを開くときの参加(予約制)
・課外Classやイベントなどの参加(予約制)
・辻さんによるラジオ配信を聞ける
・Classの授業のポイントをまとめた記事コンテンツの閲覧。
■「マイペースコース」でできること:
・オンラインチャットツールを使ったClubへの参加
・月2回のClassの参加(ディスカッションには参加できません)
Social Coffee Houseの「コーヒーハウス」は、17世紀半ばから18世紀のイギリスで花開いた文化のことだ。1杯のコーヒーを求めて、多くの人が集まった。政治、経済、文化、身の回りの出来事などを話し合う社交の場だったそうだ。
ここで政治や社会の課題を共有してみんなで議論をすることで「ジャーナリズム」が育まれたと言われる。
さらに、株や投資の情報交換が活発だったことからイギリスの有名な「ロイズ保険」の発祥ともされている。ジャーナリズムと金融という現代社会のタネが詰まっていた。
辻さんは、これまで企業の広告や企画づくりを通して、社会課題について考えてきた。日本はなぜジェンダーギャップ指数が120位でG7最下位なのだろう。若者はどうしたら政治にもっと興味を持つだろう。SDGsを進めるためには何をしたらいいのか。
さらに、日本テレビ系の「news zero」やハフポストとTwitterのSDGsライブ番組「ハフライブ」にも出演し、ニュースについてコメントしてきた。
そうした活動を続ける中、発信するだけでなく、みんなと一緒に基礎から社会について「学び合える」場が必要だと思ったそうだ。社会を変えるためには、知ることから始めないといけない。それも、今の日本の小中学校とはひと味違う、大人が学べる場を作ることで。
辻さんはこう話す。
「今の日本は課題ばかりで、進むべき方向を見失っています。たとえて言うと、みんながサーカスの大きなボールの上に乗っかってゆらゆら不安定に揺れているような感じです」
「ネットを見れば、役に立つ情報があふれています。うまくボールを乗りこなすとか、ボールに乗りながら他人より1歩前に進むとか、そういうノウハウが多い印象です。もちろん大切な情報ですが、私たちはいつボールから落ちてしまうか分からない世界を生きています」
「Social Coffee Houseでは、まず土を持ってきて、耕して、不安定なボールに乗らなくてもいいように、大地を積み上げていきたいと思います。そうしたら、『ボールから降りたって良いんだ』という発想も生まれます。ボールに乗るのだって、1人の力ではなく、みんなが横で支え合って乗ればいいかもしれません。そういう“知識”を学べる場所にしたいです」
ところで、17-18世紀のイギリスのコーヒーハウスは「男性以外の客が立ち入りが許されなかった」として、「その点では明らかな差別が行われていた」(小林章夫「コーヒーハウス」講談社学術文庫)という指摘もある。
辻さんのコーヒーハウスは誰もが参加可能だ。
2020年代型のどんなコーヒーハウスになるのだろうか?
Social Coffee Houseは、5月14日のサイトオープンと同時に会員募集が始まる。でも「オンラインの学校」が初めての人も多いだろうし、不安もあるに違いない。そんな人向けに、5月14日、5月21日、5月28日の計3回、無料のプレオープン「授業」が開かれる。迷っている人はぜひのぞいてみては?
参加方法は専用サイトまで⇒https://socialcoffeehouse.arca.tokyo
Source: ハフィントンポスト
辻愛沙子さんが「学校」を作った。政治からジェンダーまで「知っておくべきことを学べる場にしたい」