横浜市戸塚区名瀬町のアパートの一室で飼育されていた「アミメニシキヘビ」が、逃走から6日後の5月12日になっても見つかっていない。
神奈川新聞によると、このヘビは男性会社員がペットとして飼育していたもので、体長は約3.2メートル、重さ約13キロ。飼い主の男性が6日の外出中に、ケージから抜け出し、換気のために開けていたベランダの窓から逃げ出したとみられる。
神奈川県警などが連日捜索をしているが、目撃情報もない状態だという。
【※この記事にはヘビの画像・動画が掲載されています】
朝日新聞デジタルは6日、逃走したヘビの写真を掲載した。飼い主が提供したもので、黄色と茶色の網目のような模様が確認できる。
横浜市役所は「逃げたヘビは、無毒ですが、大型で力が強いため、噛まれたり巻き付かれたりすると、大変危険です。見つけても決して近寄らずに、動物愛護センターまたは戸塚警察署に、通報をお願いします。また、草むらなど見通しが悪い場所には近寄らないようにしてください」と市民に警戒を呼びかけている。
アミメニシキヘビは、現存する種類では世界最長のヘビと言われている。日本大百科全書によると、全長5~8メートルで、最大記録は9.9メートルに達する。タイ、マレーシア、インドネシアなど主に東南アジアに棲息している。
「世界大百科事典」(改訂新版)によると、胴が太い割りには頭が細長く、眼が小さい。体背面は淡褐色か淡黄色で、黒く縁取りされた黄色または黄褐色の美しい網目模様がある。これが樹上では保護色の役割を果たしており、名前の由来にもなっている。
野生下ではジャングルやゴム林に生息し、居住区にも出没する。夜行性で、大形の哺乳類や家畜、鳥類を襲って強い力で巻き締め、窒息させる。
体重50キロのブタを呑んだ記録もある。きわめてまれなケースとして、子どもや女性が全長7~8メートル級の大きな個体に襲われることもある。美しい網目模様の皮が装飾品として大量に利用された結果、生息地が減り、ワシントン条約附属書IIで保護されている。
大型のアミメニシキヘビに襲われたとみられる死亡事故も近年、相次いで報じられている。
BBCによると、インドネシア・スラウェシ島で2017年3月、行方不明になっていた25歳男性がアミメニシキヘビの腹部から遺体で発見された。このヘビは長さ7メートルで腹部を大きく膨らませていた。人間を飲み込んだのではないかと疑い、ヘビを切り開くと、男性の遺体が中から出てきたという。
2018年6月にもスラウェシ島南端にあるムナ島で、長さ7メートルのアミメニシキヘビから54歳の女性の遺体が見つかっている。
国内でも飼育下の個体による被害が出ている。千葉日報によると、2012年6月には茨城県牛久市のペット飼育場で、ペットショップ経営者の父親である66歳男性が倒れているのを家族が見つけ、搬送先で死亡が確認された。全長約6.5メートルのアミメニシキヘビがおりの外に出ており、頭や腕にヘビにかまれた痕があり、出血していた。警察はヘビに襲われた可能性が高いとみていたという。
「爬虫類飼育完全マニュアル vol.1」(笠倉出版社)は、アミメニシキヘビについて「欧米ではペットとして人気が高い」としつつも、あまりに大型なので「一般家庭で飼育できるサイズの生き物ではない」と注意を促している。
日本では動物愛護法で定められた、人間に危害を与える恐れがある「特定動物」に指定されている。飼育するためには、知事もしくは政令指定都市の市長に届け出て、許可を得る必要がある。飼育する設備についても一定の基準を満たした「おり型施設」を使うことなどが法律で義務付けられている。
今回逃げた個体は、2017年に横浜市の許可を得たものだった。法改正を受けて、2020年6月以降は「特定動物」を愛玩目的で新たに飼うことは禁止されている。
横浜市でのアミメニシキヘビの逃走を受けて、群馬県太田市にあるヘビ専門の動物園「ジャパン・スネークセンター」は5月9日、YouTubeで啓発動画を公開した。園内で飼育している3.5メートルのアミメニシキヘビを撮影したものだ。
身の危険を感じたときや空腹時以外はあまり攻撃性を示さず「実は比較的大人しいヘビ」と説明。しかし、驚かされたり、嫌がることをされ続けると、首を持ち上げて攻撃態勢に入る。そのときに不用意に近づくと、飛びかかって攻撃してくる可能性がある。もし遭遇してしまった場合は「2メートル以上離れるように」と注意喚起した。
頭の大きさよりもはるかに大きなものを呑み込めるため「小型や中型の犬や猫、乳幼児がいる家庭は十分に注意するように」とした上で、「怪しいヘビを見かけたり、見つけた場合はすぐに警察に連絡するように」と訴えている。
Source: ハフィントンポスト
アミメニシキヘビとは? 横浜で逃走。人間が呑み込まれた事故もある「世界最長のヘビ」