店に入る。
女「…………?」
女(パン屋なのにパンが置いてない……?)
店主「いらっしゃい」
女「あの、パンを買いにきたんですけど……パンは?」
店主「パン? 食べるパンなんかないよ。ウチは腹パン屋だ」
女「腹パン屋……?」
店主「初回サービス」シュッ
ドズゥッ!
女「うげえっ!」
店主「腹パンチ。通称“腹パン”だ」
女「ふざけ……ないで! いきなり人を殴って……! お腹が痛……!」
女「あれ? 痛くない?」
女(それどころか、腸の動きが活発になって……。三日は出てなかったお通じが……)
店主「トイレはあっちにある」
女「あ、ありがとうっ!」タタタッ
店主「晴れやかないい笑顔だ」
女「お代はいくら?」
店主「初回サービスといったろ。タダでいい」
女「ありがとう……ございます」
店主「どういたしまして。またお越し下さいませ」
女(一目で私の体調を見抜いて、最適な腹パンをやってのけたというの……!?)
女(これが……腹パン屋……)
女(また来ちゃった。この腹パン屋に……)
女「え!?」
『アルバイト募集 業務内容:簡単な接客・売上の管理等』
女(この前はこんなポスターなかったのに……)
女「あ、あのっ! バイト募集のポスターを見たんですけど――」
女「ありがとうございます!」
店主「明日から来れるか?」
女「はい!」
女(簡単な面接の後、拍子抜けするほどあっさりと採用は決まった)
女(私の腹パン屋店員としての生活が始まる……)
女「おはようございます」
店主「おはよう」
女「いきなり失礼な質問しちゃいますけど、腹パン屋ってお客来るんですか?」
店主「そう思うだろ? だが、これが意外と来るもんなんだ」
女「へえ……」
店主「ほらさっそく来た」
女「え……!」
女「いらっしゃいませー!」
青年「え……どなた?」
女「ああ、今日からこちらに勤めることになったんです」
青年「そうだったんですか」
店主「さて、今日はどんな腹パンを希望する?」
青年「最近食欲がなくて痩せちゃったんで、食欲が出る腹パンをお願いします」
店主「分かった」
ズンッ!
青年「ぐふぅっ!」
女「私の時みたいにいきなり!」
店主「不意打ちの方が余計な力がかかってなくて、より効果が出るんだ」
青年「ううっ……!」ギュルルル…
青年「食欲が……食欲が湧いてきました! 今すぐなにか食べたい! 胃の中に入れたい!」
店主「ここから80メートル行ったところにあるパン屋に行くといい」
青年「はい、そうします! ありがとうございました!」
女「パン屋あるんだ!」
女「いらっしゃいませー」
会社員「ストレスで胃がおかしくて……」
店主「ストレス……ということはこの腹パンでいいかな」
ドムッ!
会社員「はぐうっ!」
会社員「おおっ、胃薬を飲んでも治らなかった胃の痛みが消えた!」
Source: みじかめっ!なんJ
女「あ、パン屋さんだ」店主「ウチは腹パン屋だ」