言わずと知れた世界最大『AppStore』を持つAppleと、世界で最も人気のあるゲームの1つ『フォートナイト』を展開するEpic Games。Epic Gamesは「AppleがAppStore外でのゲームアイテム販売は課金を認めないのは独占禁止法違反である」との訴えを起こし、法廷で世紀のバトルを展開しています。
この裁判において行われている無数の応酬の中で、Appleの弁護士は「Epic Gamesが同社のアプリストアの中で『Itch.io』というゲーム・ストア・アプリを提供していますが、この中には成人向けゲームやフェティッシュな物が含まれています」と指摘。そのようなストアアプリを配信しているEpic Games Storeは、性的にセンシティブなコンテンツへのアクセスを許可していることと同義だ、という旨を主張していました。
この件は「Appleが独禁法に違反しているか?」という点に直接的に関わることではありませんが、AppleがEpic Gamesのストアと自社のAppStoreを比べて「我々のほうがユーザー保護を徹底している(その分ゲーム会社から手数料を徴収することも理にかなっている)」という印象を与えることに成功しているように見えます。
こうして「成人向けゲーム」を切っ掛けに、判事の心証がEpic Gamesに不利になるように仕向けたAppleですが、さらに、ダメ押しで『フォートナイト』に登場するバナナを模したスキン(キャラクター)「ピーリィ」を持ち出します。
Apple側の弁護士「この画面には何が表示されていますか?」
Epicの副社長、ワイシンガー氏「マッチメイキングロビーですね」
弁護士「ええ。そして、ここにはタキシードを着た大きな黄色いバナナがいますね?」
ワイシンガー氏「はい、あれはピーリィです」
弁護士「そのピーリィ、ピーリィとおっしゃいましたね?」
実はここには、Appleの弁護士の巧妙な罠が。英語では「Peel」は皮であり、「Peeling」は皮を剥ぐことであるため、バナナにピーリィ(Peely)と名づけることは、ペロンと皮をむく様子を想像させるものなのです。「だんだん皮がむける」演出のあるこのスキンにはピッタリの名前で、バナナの皮を剥くこと自体はなんら問題はありません。
しかし、Epic Gamesが「成人ゲーム」に関した“弱点”をAppleに突かれているという流れにおいて「Epic Gamesが裸のバナナ男に、ペロンと皮をむくことを連想させる名前をつけていた」という事実は、判事が堅物であれば「Epic Gamesは下品な下ネタを好む会社なのだ」と心証を損なう、Epicにとっては悪夢のような展開になりかねません。
これに焦ったワイシンガー副社長は、自社の弁護士に「服を来ていないピーリィに問題はありますか?」とわざわざ自分に質問させました。
Epicの弁護士「私達のバナナ、ピーリィについて話しましたよね」
ワイシンガー氏「はい、確かにしましたね」
弁護士「あの話には、スーツを着ていない(裸の)ピーリーを見せるのは不適切だ、という意味合いがあったかもしれません」
ワイシンガー氏「ええ、確かにね」
弁護士「では、スーツを着ていないピーリィは、不適切なモノですか?」
ワイシンガー氏「いやいや、まさか!」
弁護士:「もしスクリーンにピーリィの画像を映したら、裸のピーリィは不適切ですか?」
ワイシンガー氏「いやいや、ただのバナナですよ、奥さん!」
ピーリィは実際、ただのバナナを模したキャラクターであり、これを成人向けとみなしたりフェチと見なす人はまずいないはずです。しかし、ジョークなのか本気なのかは別にして、たかが「服を着ていないバナナ男」すら不適切な存在だと言い、自分たちに有利な雰囲気を醸成していくApple側の弁護士の手腕には舌を巻かざるをえません。
もし、判事ゲームに詳しくなければ「性的に不適切なキャラクターを扱う会社だ」という印象を持ってしまっても不思議ではありませんし、判事といえども人間、より重要な部分に対する判断にも影響を与えないとは言い切れません。
AppleとEpicの真の争点は「AppleがAppStore以外のストアアプリ(この場合Epic Games Store)を認めるかどうか」にあるようで、判決の結果によってはAppStoreの存在を揺るがしかねない大きな争いです。しかし、少なくとも「裸のバナナ男論争」に関する法廷でのやりとりでは、Appleが上手のようですね。
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Source: AppBank
「皮がむける裸のバナナ」は不適切?Apple弁護士がEpicとの裁判で仕掛けた“巧妙なワナ”