男「いや……」
女「お願いしますよ! しましょう!」
男「あの……」
女「絶対損させませんから! さあ、手始めに婚約から……」
男「し、失礼します!」ダッ
女「ちょっと! 逃げないでぇ!」
ニート「ええ、まあ」
女「よかったね。私がずっと養ってあげるから。もう仕事しなくていいんだよ」
ニート「でも……」
女「というわけで、結婚しましょう!」
ニート「ハロワ行きます!」
女「なんで!?」
女「顔だって……そりゃ超美人とはいえないけど決して悪くないはず!」
相談員「なんていうか……あなたのその強引すぎるオーラが、男性を怖がらせてるんじゃないでしょうか」
女「ううう……」
女「じゃあさ、あなた結婚してよ。ね? いいでしょ!」
相談員「私には心に決めた人が……」
女「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!」
女「ううう……結婚したい。結婚、結婚、結婚……」
女(こうなったら片っ端から求婚してやろうか……)
女(あの会社員!)ギロッ
会社員「ひっ!」サッ
女(あの若者!)ギロッ
若者「わっ!」サッ
女(あのおじいちゃん!)ギロッ
老人「くわばらくわばら……」サッ
女(あの少年!)ギロッ
少年「怖いよう……」サッ
女(どいつもこいつも目を逸らしやがってぇ……)
青年「…………?」
青年「ボクになにか?」
女「おおっ、目を逸らさない! さてはあんた、只者じゃないわね?」
青年「よく分かりましたね!」
女「ふうん、何やらかしたの?」
青年「えぇと……あの……ケッコン詐欺を少々……」
女「まさかの結婚詐欺!」
青年「あ、いや……そういうわけじゃ……」
女「もうやってないの?」
青年「はい……やってません」
女「ならいいや。贅沢いえないし、この際詐欺師でもいい! 結婚しよ!」
青年「えっ、あ、はいっ!」
女「やったぁぁぁぁぁ! じゃ、とりあえず結婚を前提にしたお付き合いということで、よろしくね!」
青年「はい!」
女(フッ、勢いって大事ね)
女はファッションデザイナーとして、自分の事務所を持っている。
女「おはよ」
地味娘「おはようございます、先生」
女「さ、今日もはりきって仕事しよっか!」
地味娘「あれ? 先生、何かいいことあったんですか?」
女「分かるぅ? 私にもついに春が来たのよ、春が! スプリング・ハニ・カム!」
地味娘「ハニカムだと蜂の巣になっちゃいますよ」
女「あら、嬉しい。メール転送してくれる?」
地味娘「送りました」
女「……なるほど、新しいブランドを立ち上げたい、か。これは大きな仕事になるね」
女「さっそく打ち合わせに出かけてくる!」
地味娘「行ってらっしゃいませ」
女「ル~ルルル~。は~るがき~た、は~るがき~た、ど~こ~に~きた~♪」
女「それは……イッツミー!」
地味娘(いつにもましてハイテンションだなぁ……)
女「おはよう、詐欺師君」
青年「おはようございます。できれば、詐欺師はやめて下さい……」
女「ああ、ごめんごめん」
女「デートしたいんだけど、私恋愛経験ほとんどないから、デートコースに自信ないのよね」
女「というわけで、ここはあなたに任せたいんだけど」
青年「ボクもそうですよ」
女「えっ、恋愛経験ないのに結婚詐欺なんかやってたの!? チャレンジャーすぎない!?」
青年「すみません……」
女「じゃあさ、家に来ない? おいしい手料理ご馳走してあげる!」
女「シチューを作るからね」
青年「楽しみです」
女「さっそくジャガイモを剥いて……」
たどたどしい手つきでジャガイモを剥く。
女「うわっとぉ! 手を切るとこだったぁ!」
青年「ボクがやりますよ!」
手際よくシチューを作っていく。
女「わぁ、上手! 特に包丁さばきなんてプロみたい!」
青年「訓練でよくやらされたんで……」
女「訓練? なんの?」
青年「あ……えぇと、あの……詐欺師の」
女「へぇ~、詐欺って刃物の扱いも重要なんだ。奥が深いんだね」
女「いただきまーす!」パクッ
女「おいひぃ~! グルメ漫画の女の子みたいな顔しちゃうぅ~!」ホワァァァ
青年「すごい顔ですね」
女「こんなおいしい料理を作れるのに詐欺をやってたなんて、よほどの事情があるのね」
女「よっしゃ! 私の愛のパワーであなたを暗黒の世界から救ってあげる!」
青年「あ、ありがとうございます」
地味娘「先生、おはようございます」
女「おはよう……あれ?」
地味娘「なにか?」
女「今日はいつもとはずいぶん雰囲気が違うね。垢抜けたというか……」
地味娘「ちょっとイメチェンしてみたんです」
女「ふうん。色々試してみるのはいいことよ」
女(この子もデザイナー志望だしね)
二人は公園をデートしていた。
女「天気がよくて、気持ちいいね」
青年「ホントですね。雲一つない青空です」
女「おっ、あそこ歩いてる人、いいセンスしてる」
女「んー……あっちの人はイマイチね。素材はいいのに」
青年「どうしたんです?」
女「あ、ごめん。職業柄、ファッションチェックするのクセになっちゃってて」
青年「分かります。ボクにもそういうクセってありますよ」
女「あっ、やっぱりそうなんだ!」
女「へ?」
青年「よっと」パシッ
背後から飛んできたボールをなんなくキャッチする。
女「すごい、見ないで取った!」
青年「背後への警戒は欠かさないようにしてるんです。これがボクのクセですね」
女「へえ……詐欺師って大変なんだ」
スミマセーン… アリガトウゴザイマース…
女「さっきのお店、おいしかったねー」
青年「ええ、最高でした!」
ブロロロロ…
すぐそばをスクーターが通りすぎる。
青年「あ、こける」
女「え?」
茶髪「いたたた……」
女「本当にこけた!」
青年「大丈夫ですか!?」ダッ
茶髪「う、うう……」
女「うわ、ひどい出血……」
青年「救急車を呼んで下さい!」
女「うん、分かった!」
Source: みじかめっ!なんJ
婚活女「まず年収は1000万以上、優しくて、頼りがいがあって、将来性は抜群で……」