ブウンッ! ブンッ!
格闘家「どれだけ馬鹿力でも、当たらなきゃ意味ないぜ」
大男「く、くそっ!」
格闘家「そろそろケリをつけるか……蹴りでなァ!」シュッ
バキィッ!
ハイキック一閃。
カンカンカーンッ!
実況『格闘家、一撃ももらわず大男相手に圧勝だァ!』
格闘家「どうも」
記者「鮮やかなKO勝利でしたね」
格闘家「まあね。頭ががら空きだったから、綺麗に蹴りが入ったよ」
記者「さすが“無敗の王者”です」
格闘家「チッチッチッ、その呼び名はいい加減やめてもらおうか」
記者「え?」
格闘家「俺は“無傷の王者”……俺に傷をつけられる奴はいねえ!」
格闘家「むふふ、俺かっこいい~!」
格闘家「もう一回、動画を最初から見よ」ポチポチ
妻「もう、だらしないよ。寝ながらスマホ見て」
格闘家「リングの上じゃダウンさせられたことないんだ。家でぐらいゆっくり寝させてくれよ」
妻「そんなに自分の動画見て楽しい?」
格闘家「楽しい!」
妻「ったくナルシストなんだから……」
拳闘家「俺は打撃のエキスパートだ」シュッシュッ
格闘家「ふうん」
拳闘家「今までの連中とは違う。あんたの無傷伝説にキズをつけて……」
拳闘家「リングの上に沈めてやるぜ!」
格闘家「せいぜい頑張れや。ジャブの一発ぐらい当ててくれよ」
拳闘家「シッ!」シュッ
実況『いきなり攻め込んだァ!』
拳闘家「シッ! シシッ! シィッ!」
実況『素早いパンチの連続! しかし当たらない! 一発も当たりません!』
拳闘家(……な、なんだとォ!?)
拳闘家「!?」
格闘家「ノーガードでいいよ。当ててみろよ」
拳闘家「な……舐めんなァ!」
シュシュシュッ シュシュシュッ シュッ
格闘家「かすりもしねえなぁ。どうしたどうした?」
拳闘家(完全に見切られてる……!)
拳闘家「!」
格闘家「セイッ!」
ガゴォッ!
拳闘家「ぶっ!」
強烈なアッパーカット。
ドザァ…
実況『拳闘家、立てない! 打撃のエキスパートが打撃で沈みましたァ!』
カンカンカーンッ!
実況『両選手、入場しました!』
格闘家「なかなか派手な道着を着てるじゃないの」
黒帯「ふん……なにしろ私が王者になる試合だからな」
格闘家「あんたは投げの達人で、相手を掴みさえすれば即投げれるらしいな?」
黒帯「その通り。柔道、レスリング、合気道を学び、どんな状況からでも投げられる!」
黒帯「貴様の王座も今日まで! 投げて投げて投げまくってやる!」
バキィッ!
黒帯「……」ニヤッ
格闘家(この野郎、今の一撃は受ける覚悟だったか!)
ガシッ!
黒帯「掴んだ!」
黒帯「投げ飛ばしてやるッ!」
ブオンッ!
フワッ…
黒帯「な……!」
実況『あの凄まじい投げを、なんなく着地してしまったァ!』
格闘家「残念ながら、あんたも俺にキズをつけるのは無理なようだ」
黒帯「くそっ!」ブンッ
格闘家「そんなヘタクソな打撃、当たるかよ!」ヒョイッ
黒帯「うわっ!」
格闘家「ほぉれ!」
グオオッ!
黒帯「あぁぁぁぁ……っ!」
ドズンッ!
実況『バックドロップで後頭部から叩きつけたァ! 決まったァァァァァ!』
格闘家(今日の相手は関節技の使い手らしいな)
ヒゲ「ずいぶん調子に乗ってるが、それも今日までだ」
ヒゲ「傷をつける……ぐらいではすまさん。骨をヘシ折ってやる!」
格闘家「威勢はいいが、あんたも今までの奴らと同じさ」
格闘家「俺の“無傷伝説”の1ページを飾るにすぎない」
実況『これは……お互いに挑発しあっている! 激戦の予感がします!』
ヒゲ「ぬおおおっ!」ダッ
格闘家(速いッ!)
ヒゲ「取ったァ!」ガシッ
ヒゲ「このまま腕を折ってやるゥ!」
格闘家「……!」
実況『格闘家、腕を極められている! 万事休すか!?』
ヒゲ「な……!?」
実況『あっさりと抜けた!』
格闘家「ほれ、腕ひしぎだ」ガチッ
ヒゲ「し、しまっ――」
格闘家「折れちまうぞ」ググ…
ヒゲ「くうっ!」パンパンッ
実況『タップしたァ! 関節技の達人を関節技で仕留めてしまうとは!』
格闘家「俺は腕を折るなんて野蛮なことはしない。心をヘシ折ってやるのさ」
格闘家「俺、かっこいい~!」
格闘家「この試合、もう一回見よう! 我ながら惚れ惚れしちゃうよ!」
妻「また寝そべって……だらしないなぁ」
格闘家「だらしないのは俺の対戦相手どもだよ。どいつもこいつも俺にキズ一つつけられねえ」
妻「そうやって、相手を見下してばかりいるといつか痛い目見るよ」
格闘家「痛い目? 誰かに見せて欲しいもんだな」
Source: みじかめっ!なんJ
格闘家「俺は無傷の王者……俺に傷をつけられる奴はいねえ!」