長時間労働が改善されず、「働き方改革」が最も遅れていると指摘されるのが、霞ヶ関で働く国家公務員。河野太郎・国家公務員制度担当相は、この問題を解決するために2021年1月、「残業代は厳密に付けて手当ては全額払う」と宣言した。残業時間の抑制効果を狙ったものだ。
果たしてその後、霞ヶ関の働き方改革は進んだのか。
働き方改革コンサルティングを手がけるワーク・ライフバランス(WLB)社は3〜4月、国家公務員の働き方についての実態調査を行なった。2020年8月に公表した調査結果が「どう変わったのか」という続編にあたるものだ。オンラインアンケートには316人の回答が寄せられた。
その結果、回答者の3割が「現在も正しく残業代が支払われていない」とした。特に労働実態とかけ離れている省庁として名前が上がったのは「財務省」「厚生労働省」だった。
残業代が支払われなかった理由で最も多く寄せられたのは「テレワーク分はカウントしない」ため。また、残業が増えてしまう理由は「国会議員の質問通告時間の遅さ」と「デジタル導入の遅れ」という実態が浮かび上がった。
悲痛な声からは、国家公務員の働き方改革はまだ道半ばであることがわかる。
調査対象となったのは3月度の給与支払い。対象期間の残業代がすべて正しく支払われたかとの質問に、61.4%の人は「支払われた」と回答。その一方で、28.2%の人が「支払われていない」と回答した。
また、「支払われていない」という回答者を省庁別に分析すると、割合が最も高かったのは「財務省」。続いて「厚生労働省」「総務省」の順になっている。
フリーコメントには以下のような回答があった。
「テレワークは基本的に認められないと言われた。実際の時間で申請したが認められなかった」(財務省、20代)
「年度末で超過勤務予算が枯渇し支払えないと言われた」(総務省、40代)
「3割支給されている程度で、前と全く変わっていません。噂では予算がないからとのことですが、予算がないなら残業させないでほしい」(厚生労働省、40代)
「そもそも残業を減らそうという意識はまるで無い。また、そういう幹部ほど出世していく」(国土交通省、40代)
前回の同社による調査で、長時間労働の原因として、国会会期中の国会議員の「質問通告の遅さ」というコメントが多数寄せられた。
質問通告とは、国会の審議などで質問する議員が趣旨を政府に事前に通告し、準備をさせることが目的。国家公務員は通告内容に応じて大臣らの答弁を準備するため、通告が出るまでは待機、直前に出た場合はそこから早朝出勤・深夜対応を強いられることになる。
そのため、与野党の合意で「通告2日前ルール」も設定されているが、実際に守られているかどうかは公表されていない。
今回のアンケートでは、回答者の85%が「2日前ルールは守られていると感じない」と回答。さらに、政党別では守っていないことが多い議員の所属政党について「立憲民主党」「共産党」の順で名前が挙がった。
フリーコメントでは、「夜10時を超えても通告を出さず、全省庁が待機させられました」(文部科学省)、「「翌日中」が期限で遅れると土下座させられることもある。オンラインレクを実施できる場合もあるが、うまくつながらないと省庁のせいになる」(農林水産省)、「時間通りに行っても議員都合によって待たされることが多い」(厚生労働省)など、「遅い」だけではない国会議員の横暴な振る舞いも浮かび上がった。
その一方で、同社は「真の問題」としては、個別の議員による対応に加えて、そもそも委員会を開催するかどうか、その日程が与野党の闘争材料となり、ギリギリまで決まらないこともあると指摘している。
デジタル化については前回調査よりも、大きく進んでいることが伺える結果になった。
「オンラインで議員レクができる」と答えた人は17%から67%に急伸した。
一方で、直近1カ月間でテレワークを全くしていないとの回答も約4割あった。
「大臣や幹部には全て対面を求められる」(20代、財務省)「紙資料が常に数十部のコピーがいるのは理解できない。資料のインテックスの付け方一つとっても、やたらとルールが厳しく時間の無駄」(40代、国交省)などコメントからは、デジタル化の遅れを伺わせた。
ワーク・ライフバランス(WLB)社では、国家公務員や議員秘書の働き方改革を進めたり、コスト削減を実施したりするため、また国民の要望を漏らさずキャッチできることなどを目指し、IT化を進めることを目指す「デジタル実践議員宣言」をする国会議員を募集している。
2021年4月22日時点で86人が宣言している。
Source: ハフィントンポスト
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