サザエ「はーい! あら、どちら様?」
男「初めまして。私こういう者です」スッ
名刺を差し出す。
サザエ「ご丁寧にどうも」
男「実は奥様に折り入ってお話がありまして……」
サザエ「え……?」
…………
……
サザエ「お帰りなさい」
マスオ「ん、どうしたんだいサザエ? やけに上機嫌じゃないか」
サザエ「あのね。私、枕営業することになったの」
マスオ「ええーっ!?」
マスオ「待ってくれ、サザエ。それはどういうことだい!?」
サザエ「なによ、そんなに血相変えて」
サザエ「な、なんでよ」
マスオ「枕営業だなんて……君には僕という夫がいるのに……!」
サザエ「ちょっと待って。違うわよ。そっちの枕営業じゃなくって!」
マスオ「え?」
サザエ「ベッドやお布団を作ってるメーカーの人にお願いされたのよ」
サザエ「今度、“枕の販売会”をやるからその時に宣伝を手伝ってくれないかって」
マスオ「な、なんだ……そういうことかぁ……」
アッハッハッハッハ!
波平「それはサザエが悪い。紛らわしいことをいうからだ」
フネ「ホントですよ。枕営業なんて言葉を使って」
サザエ「ごめんなさい……」
マスオ「ビックリさせないでくれよ」
サザエ「だってぇ、枕の営業だからつい、そういう言葉が出てきちゃったのよ」
ワカメ「あたしも分かんない。枕営業ってなに?」
サザエ「え、えぇとね……」
カツオ「タラちゃん、ワカメ。子供は知らなくていいことだよ」
ワカメ「えー、なにそれ!」
タラオ「ずるいです!」
サザエ「あんた、枕営業のこと知ってるの?」
カツオ「まあね~」
波平「まったくどこで覚えたんだ……」
サザエ「そうね。枕を持って、『この枕いかがですか』なんて言うんじゃないかしら」
カツオ「じゃあさ、もしそこにテレビのお偉いさんなんかが登場したら……」
サザエ『この枕があればぐっすり眠れまーす!』
お偉いさん『彼女明るくていいねえ。ぜひ女優にしたい!』
カツオ「……なんてことが起こるかも」
サザエ「やあねえ、そんなことあるわけないでしょ」
サザエ「でも、“女優・フグ田サザエ”……悪くないかも」
波平「すぐその気になるんじゃない!」
サザエ「……てへっ」
カツオ「……というわけなんだ」
中島「磯野の姉さんが?」
花沢「スカウトされたってこと?」
カツオ「アハハ、そういうこと」
早川「その販売会って結構大きな規模だって聞くわよ」
カオリ「すごいじゃない!」
カツオ「ぼくも弟として鼻が高いよ」
中島「磯野はスターの弟ってわけか!」
カツオ「ってことは……」
キャーキャーッ! 『フグ田サザエさんの弟さんよ!』 『サインしてー!』
カツオ『みんな、押さないで押さないで』
カツオ「それも悪くないかも……」ムフフ
ワカメ「そうなの」
堀川「だったらワカメちゃんは布団営業をしたらどうかな」
ワカメ「布団営業?」
堀川「ワカメちゃんが布団になって色んな人に覆いかぶさるんだよ」
ワカメ「え!?」
堀川「きっと気持ちよく眠れるだろうなぁ」
ワカメ「もう! なにいってんのよ堀川君!」
サザエ「だけど、宣伝ってどういうことすればいいのかしら」
タイコ「そこは会社の人に任せておけば大丈夫ですよ。向こうもプロなんですから」
サザエ「そうね。あっちの言う通りやってれば大丈夫よね」
タイコ「頑張って下さいね」
サザエ「ありがとう、タイコさん」
イクラ「バーブー!」
サザエ「イクラちゃんもありがと」
サザエ「平気よ。子供じゃあるまいし」
マスオ「ならいいけど」
サザエ「明日は寝坊しないようにしなくっちゃ」
マスオ「枕を売るのに寝坊したら、笑い話にもならないもんなぁ」
サザエ「ホントね」クスッ
念入りに化粧するサザエ。
サザエ「……」
カツオ「気合入ってるね」
サザエ「まぁね」
カツオ「化粧しすぎると、会社の人が姉さんの顔が分からなくなったりして」
サザエ「なんですって!」
カツオ「わわっ、もう出かけないと。時間だよ」
サザエ「行ってきまーす」
タタタッ…
波平「大丈夫か、あいつは」
フネ「さぁ……どうでしょう」
ワイワイ……
男「あ、フグ田さん。お待ちしておりました」
サザエ「おはようございます」
サザエ「こんなに大勢の人が集まってるんですね。驚いちゃった」
男「ええ、弊社だけでなく色んなメーカーが展示や販売を行いますから」
サザエ「じゃあ私も頑張らないと!」
サザエ「あら、衣装があるんですか」
男「ええ。これに着替えて下さい」
サザエ「え、パジャマ?」
男「あちらのスペースでどうぞ」
サザエ「分かりました」
サザエ(枕だからパジャマ姿で宣伝するってことかしら)
Source: みじかめっ!なんJ
サザエ「私、枕営業することになったの」マスオ「ええーっ!?」