『マンションの「音のトラブル」を解決する本』(井上勝夫 著、あさ出版)より、
隣の家から聞こえてくる声が気になってしまうとか、逆に「生活音がうるさい」と苦情をいわれるなど、マンションでの暮らしに「音のトラブル」はつきもの。
コロナの影響で在宅勤務となり、近隣の物音がいままで以上に気にかかるようになってきたという方もいらっしゃるかもしれません。
とはいえ感情が絡んでくる場合も多いだけに、対応はなかなか厄介ですよね。
そこできょうは、『マンションの「音のトラブル」を解決する本』(井上勝夫 著、あさ出版)をご紹介したいと思います。
私たちはマンションを選ぶとき、交通の便、間取りや部屋の向き、設備、立地、周辺環境など目に見える部分には注意を向けても、音に対する建物の性能の問題までシビアに検討する方は少ないと思います。
しかし、音の問題は住んでみないとわからず、住み始めてみると、長期にわたる生活に深くかかわる大問題であるのです。
おおげさにいえば、人生を左右する要素のひとつといっても言い過ぎではないかもしれません。(「はじめに」より)
こう主張する著者は45年余にわたり、建築物の音や振動に関する教育や研究に携わっているという人物。
音に関する専門家として、20年あまり裁判所や公的団体の専門委員、調停委員も務めているのだそうです。
本書ではそうした豊富な経験をベースに、マンションの音について性能や住まい方、対応策などについて幅広く解説しているわけです。
きょうは音に悩まされることになったときの策を紹介した第5章「被害者になったらどうする?」のなかから、2つのポイントを抜き出してみたいと思います。
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音はいったん気になりだすと、とても神経にさわるもの。とはいえ、いきなり苦情をいいに行くようなことは避ける必要があります。
「耐えられない」という気持ちのままいくと、どうしても感情的ないいかたになってしまうからです。来られたほうの立場としても、突然だと気分を害して当然。
マンションの場合は、空気中を伝わる「空気音」のほかに、躯体を振動として伝わる「固体音」があるのだそうです。
しかも固体音は上下階や隣戸ではなく、思わぬところから伝わってくることもあるのだとか。そのため、「音を出しているのは上の階に違いない」などと最初から決めつけるべきではないわけです。
そこで苦情をいう前に、ワンクッション置くことを心がけることが大切。最初は管理組合に申し出て、掲示板か全戸配布で「騒音に関する注意」をしてもらうのがいいそうです。
特定の住戸を名指しするのではなく、一般論として「マンションではこれこれの音が響きますので、注意しましょう」とか、もう一歩踏み込んで「何曜日の何時くらいに、何階付近でこんな音がします。お互いに気をつけましょう」というような提示をし、注意喚起をうながします。
それでも解決しない場合は、管理人を通して管理組合から当事者に話してもらうのが良いと思います。(121ページより)
もちろん相手との間に人間関係が構築されているのであれば、直接話してみてもOK。
ただし最初はあくまで「もしかしたら、お宅かもしれないのですが」「間違っていたらごめんなさいね」というように、角の立ちにくい湾曲的な表現で聞いてみることがポイントだといいます。
つまり、意識してソフトな聞き方をすべきだということ。もし可能であれば、相手の人に自宅まで来てもらい、実際に出ている音を聞いてもらうという手段も考えられます。
なお管理組合にお願いする場合は、正直に、正確に状況を説明することが重要。できれば口頭ではなく文書で、以下の「8項目の記録」について簡潔にまとめたものを提出するとわかりやすいそうです。(120ページより)
音がうるさくて我慢できないと思ったら、音に関する記録をつけてエビデンスを残すことが大切。
先方や第三者に説明するときに必要となってくるばかりか、こじれて訴訟になったりしたときにも重要な証拠になるからです。
著者によれば、理想は次の8項目を記録に残すこと。
1 音の大きさ
(できれば何デシベルなど数値で記録したものを残すのが理想)
2 音がする時間帯
(朝、昼、夜、深夜など。できれば時間帯を特定する)
3 音の頻度
(継続していくのか、単発なのか、間をおいて繰り返すのかなど)
4 音の種類
(高い音か低い音か。ドンとかコンとかパタンといった音の聞こえ方)
5 音の発生場所
(キッチンとかリビングといったように、場所が特定できれば)
6 経過
(いつからその音が始まり、どのような経過をたどったのか)
7 音による影響
(夜眠れない、精神不安定になった、勉強できないなど)
8 対策の有無
(相手に話しに行ったとき、どんな対応をされたか。相手はどんな対策をとったかなど)
(123ページより)
なお、こうした記録をつけていることは、必要以上に相手方には知らせないほうがいいそうです。
あくまでも自分用の記録としてとっておき、「聞かれたときにだけ答える」というスタンスを保っておくことが賢明だということ。
理由は明快。
そうしないと、「お宅はうちの物音をいちいち記録していたのか。それは盗聴だぞ。プライバシーの侵害じゃないか」というような怒りを買ってしまい、別の問題に発展しかねないからです。
音の記録のとり方ですが、音の大きさの測定は騒音計を使うと便利です。
市町村役場の公害を扱う部署で、騒音計を貸し出しているところがあります。
これを使って、実際に騒音レベルで何デシベルの音が響いているのか記録すれば、客観的に音の大きさが記録できます。(124ページより)
また費用はかかるものの、音響性能の調査機関に依頼して音の測定をしてもらうという手段も。
いずれにしても、音を出している相手とまともに話し合える状況ではないときは、将来の訴訟も踏まえ、きちんと音の測定をし、記憶を残しておいたほうがいいということです。
ただし振動計測など、あまり踏み込んだ測定をしてしまうと、盗聴と勘違いされかねないので注意。それは素人に勧められる手段ではないといいます。(122ページより)
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本書のポイントは、一般の方が理解しやすいように、専門用語はできるだけやさしく書き換えてある点。
専門知識を持たない一般の方々にとっての「わかりやすさ」を重視しているわけです。要らぬトラブルを避けるためにも、書棚に常備しておきたい一冊だといえるでしょう。
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Source: あさ出版
Photo: 印南敦史
Source: ライフハッカー
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