急に意見を求められたり話を振られたりしても、焦らず的確な返答や発言をするためのコツを、スピーチのプロが伝授します。
まだ慣れないリモート会議で、「Aさんが病欠となったので、まず今年の営業方針について、Bさんはどのように考えていますか?」などと、急に話を振られたらスムーズに受け答えできますか?
結婚式のようなセレモニーの場でのスピーチと異なり、ビジネスシーンでは、予期しないタイミングとテーマで話をする機会が結構あるものです。
その際、すぐに応答できるのと、しどろもどろになってしまうのでは、外部の評価も大きく変わってしまうでしょう。
こうした、事前の準備なしの対応を「即興スピーチ」と呼び、体系的なスキルとして書籍『即興スピーチ術』(芸術新聞社)でまとめているのが、株式会社スピーキングエッセイの代表取締役・大嶋友秀さんです。
大嶋さんは、商談など重要な場面で即興スピーチをする状況は「一種のピンチ」としつつも、「すぐに的確な返答や堂々とした発言ができたら、ピンチはチャンスに変わる」と述べ、このスキルを伸ばすことを大いにすすめています。
では、どのようにして即興スピーチの力を向上させられるのでしょうか?
本書からその一端を紹介します。
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即興スピーチの能力を伸ばす基本のキとして、大嶋さんが挙げるのが3つの心構え。それは、インプット、アウトプット、メンタル強化だそうです。
インプットとは、社会で話題になっている出来事に関心を向け、それに関連した話の材料(話材)を頭に入れておくこと。
アウトプットは、会話なりSNSなり機会をとらえては、インプットした情報を外部に発信することです。
報告書や企画書の作成も立派なアウトプットだそうで、「仕事だからやらなければ仕方ない」でなく、即興スピーチ力向上のチャンスとみて、前向きに取り組むとよいそうです。
最後のメンタル強化は意外かもしれません。ですが、「人前で話すことなどなんでもない」という心強さがなければ、即興スピーチどころではないのは確か。
メンタル強化の具体的な方法としては、アウトプットの機会を増やすというのが1つ。もう1つは、「自分は情報の発信者である」という自信づけです。
人前で話すのを嫌がる人の多くは、情報は人から与えられるものだと思っています。
すると自分が何かを発言するときには「やれと言われたから仕方がない」と受け身の姿勢になってしまいます。さらに「自分の話は下手だと思われるに違いない」と後ろ向きになりがちです。
このように、自分は人から指示され評価される立場だと思ってしまうと自信は持てません。
そうではなく、発言を求められたら「この機会に、言いたいことを言ってやろう」「自分が周囲に情報を与えてやろう」という積極的な気持ちで臨んでください。
(本書24~25ページより)
こうやって自信がついてくると、即興スピーチの質も上がるのは間違いないことでしょう。
さらに、これに関連して大嶋さんは、「身体を鍛える」ことの重要性にも言及。
スポーツや筋トレを習慣づけることで、姿勢や体格が改善されるし、大きく通りのよい声も出せるようになります。あわせてメンタルも強化されるそうです。
大嶋さん自身も10年以上水泳を続け、最近は空手を始めたんだとか。周囲のスピーチ上手な人にも、マラソン大会に出場するなどスポーツ愛好家がたくさんいるそうですが、これは偶然ではないでしょう。
大嶋さんは、話下手な人の問題点として「何を、どういう順番で話せばいいか」悩んでしまう点を指摘します。
その問題を解決するキーワードが「フレームワーク」。これには、一定の枠組みをあらかじめ作り、それを使って物事を効率よく行うという意味があります。
そこで、話す内容にフレームワークを当てはめることで、「どういう順番で話せばいいか」を悩まずにすみ、あとは「何を」を考えるだけでよくなります。
具体的なフレームワークの手法として、大嶋さんはPREP法、ホールパート法、箇条書き法、時系列法、起承転結法、さらにこれらをミックスした「合わせ技」を取り上げています。
ここでは、PREP法について触れましょう。
PREP法の「PREP」とは、Point・Reason・Example・Pointの頭文字をとったもの。つまり、要点・理由・事例・結論の順序で話を運ぶやり方です。
これは、「自分の意見や主張を、論理的に説得力を持って述べたいときに効果的」とのことで、PREP法を用いた例と、用いない例を挙げています。
わたしは、案Aに賛成です(P)。
なぜなら、一番経費の節約になるからです(R)。
具体的に言いますと、案Bと比べれば30万円も安く済みます。その分を来月のイベントに回せば、より効果的なPRができます(E)。
ですからわたしは、案Aを採用すべきだと考えます(P)。
経費が安い方がいいですよ。来月もイベントがあるんですから。
案Aは、Bと比べると30万円も安く済みます。その分を来月のイベントに回せば、効果的だと思います。
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PREP法のもう1つの効用は、使い慣れてくると「1回の発言でひとつの内容を話す」「ワンセンテンスを短くする」「つなぎの言葉を使う」のが自然と身につく点。
これによって、PREP法を意識しないでも、わかりやすい話し方ができるそうです。
たとえば、雑談で「好きなスポーツはなんですか?」と不意に尋ねられても、
私の好きなスポーツは、野球です。その理由は、組織的なチームワークが重要なスポーツだからです。
具体的に言いますと、監督が作戦を立てメンバーを決めますね。そして選手はそれにそって自分の力を発揮します。これはビジネスにも役立つように思います。
というふうに、受け答えが巧みになります。
即興スピーチがうまくなるために、大嶋さんは「柔軟な発想」の必要性についても述べています。
これが欠けると、どうしても「他人基準で自分が何を言えばいいか」を考えがちになるからです。
だから、「こんなことを言ったらどう思われるだろう」などと気を遣ってしまい、緊張するばかり。話下手を自認する人の根っこにある問題だと、大嶋さんは指摘しています。
逆に柔軟な発想ができる人は、たとえば「好きなタレントは誰ですか?」という質問がきても、仮にそういうタレントがいなくても悩みません。
では、どう答えるかというと、「好きなタレントはいませんので、好きなキャラクター、ということで答えさせていただきます」とか、「テニス選手の錦織圭です。彼はスポーツ選手でタレントじゃないよと言われると思います。しかし、彼のタレント性はいろいろなCMやバラエティ番組で発揮されています」というふうに、スピーチテーマを拡大解釈して乗り切ります。
大嶋さんは、次のようにアドバイスを続けます。
知識や関心がないことを質問されたりテーマとして与えられたりしても、ちょっとした機転を利かせて、自由に自分の好きなことを言えばいいのです。
そうするとそこに個性が生まれ、「発想が豊かだ」「ユーモアがある」という評価にもつながります。
(本書144ページより)
他人からの質問を、試験問題のように真面目に受け取ってしまうのでなく、もっと自由に考えて会話の翼をはためかせてみてはいかがでしょうか。
大嶋さんが、「スピーチをする力とは、その人の日頃の生きる姿勢を反映しているのです」と説くように、即興スピーチは、付け焼き刃ではすぐに上達しない側面もあります。
逆に言えば、日々ちょっとした訓練・改善を積み重ねさえすれば、いつの間にか話す力がついていることが実感できるでしょう。
『即興スピーチ術』は、そのための道しるべとして、役立つ1冊になるはずです。
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Image: G-Stock Studio/Shutterstock.com
Source: 芸術新聞社
Source: ライフハッカー E
急に意見を求められたら? 即興スピーチ力を伸ばすコツ