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ドンキの「ビジネスシューズ」が1年で4万足突破!見た目「革靴」なのにスニーカー以上の履き心地。なぜ実現できた?

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「革靴のような見た目でありながら、スニーカーのような履き心地」——。

そんなビジネスパーソンの理想を形にした商品が、ドン・キホーテの「スニーカー心地のラクすぎビジネスシューズ」。2023年11月、同社のオリジナルブランド「情熱価格」から誕生した。

発売当初は、ドン・キホーテ系列の469店舗のうち、わずか143店舗での取り扱いだったが、予想を上回る人気で生産が追いつかないほどに。現在は423店舗で取り扱われ、想定の4倍以上の売り上げを記録している(2024年11月現在)。

なぜこれほど支持されているのか。企画開発を担当したパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の月足(つきあし)義広さんに話を聞いた。

コロナ禍で世間のトレンドが「革靴」から「ビジネスシューズ」に

企画開発に取り組む前、月足さんは3年間営業を経験し、革靴の疲れやすさに悩まされていた。硬く蒸れやすい革靴への不満は、多くのビジネスパーソンに共通する悩みだ。

「革靴のストレスが、仕事のパフォーマンスに悪影響を与えていると感じたんです」

そんな中、コロナ禍でテレワークが普及し、仕事をするときの服装がスーツからビジネスカジュアルに移行。従来の革靴離れが加速し、市場も縮小傾向にあったという。

「従来の革靴では消費者のニーズを満たせない。もっと快適で、スタイリッシュなビジネスシューズが求められている」と感じた月足さん。2021年、まるでスニーカーのような履き心地を持つ革靴を作るという目標を掲げて開発に乗り出した。

見た目「革靴」なのに「安くて軽い」を実現できたのは?

「革靴のような見た目とスニーカーのような快適性を融合させる」というコンセプトは、革新的である一方、大きな挑戦でもあった。素材選定から設計まで、従来のビジネスシューズの常識を打ち破る開発が始まった。

開発担当は、月足さんたった一人。中国の製造工場と密にやり取りし、現地の技術者と密なコミュニケーションを取りながら、品質向上とコスト削減のバランスを探ったという。「伸縮性が足りない」「もっと柔らかくできないか?」といった細かな調整を繰り返しながら、約1年半をかけて製品を完成させた。

開発したビジネスシューズの特徴は、「心地よさ」「高級感」「安さ」にある。

1つ目は商品名の通り、「徹底的な心地よさ」だ。高級感があって皮のように見えるシボ合皮を、履き口にはクッション性の高いネオプレーン素材を採用した。

2つ目は、片足わずか261グラム(※Mサイズ)という圧倒的な軽さだ。一般的なビジネスシューズは400~500グラム、スニーカーでも300~350グラムあるという。一方、ラクすぎビジネスシューズは、靴底に軽くて弾力のあるEVA素材を採用することで、一般的なスニーカーを超える軽量化を実現した。

履き口が伸びるので、靴ひもをほどかなくても脱いだり履いたりできる履き口が伸びるので、靴ひもをほどかなくても脱いだり履いたりできる

サイズは「M(25.5cm)」「L(26.5cm)」「LL(27.5cm)」という3パターン。デザインはストレートチップとウィングチップの2種類、カラーはブラックとダークブラウンの2色。シンプルな商品展開にしたことで、4389円(税込み)という安さを実現させた。

想定の4倍以上の売り上げを記録。取扱店舗数は143→423に

今でこそ「情熱価格」の看板商品だが、企画段階では「『ビジネスシューズ市場は縮小しているのに、なぜ作るのか?』と、否定的な意見も少なくなかった」と月足さんは話す。

PPIHグループの経営は、現場のスタッフが商品仕入、価格設定、陳列及び販売に至るまで、あらゆる自由裁量権をもつという徹底的な「権限委譲」が大きな特徴だ。

「情熱価格」の新作商品も、各店舗のスタッフが参加するオンライン説明会で商品担当者が各自プレゼンすることで、最初の取扱店舗と取り扱い数が決まる。

「このプレゼンでも、『ドン・キホーテに訪れる人がビジネスシューズを買いに来るのだろうか』という疑問を持つ人が多く、最初に取り扱いが決まった店舗は、143のみでした」

しかし、202311月に発売するやいなや、反響は予想以上だった。メディアにも取り上げられ、生産が追いつかない事態に。20242月には取り扱いが220店舗、現在は423店舗にまで拡大した。

一日中履いても疲れにくい!女性向け商品も検討中

際に履いてみると、まず驚くのはその軽さ。革靴から履き替えると、何も履いていないように感じるほどだ。

写真は一番人気のあるストレートチップのブラック(Mサイズ)写真は一番人気のあるストレートチップのブラック(Mサイズ)

実際に通勤するときに履いてみたところ、1日中履いていても、足の疲労をほとんど感じなかった。上品な見た目で高級感があり、カジュアルなスーツにもよくなじむ。周囲の人も「革靴だと思った」と驚いていた。

靴底は足への負担を減らすために、柔らかく厚みのあるインソールを採用靴底は足への負担を減らすために、柔らかく厚みのあるインソールを採用

月足さんもヒットの理由の一つに、高級感が普段ドン・キホーテに足を運ばない層に刺さったことを挙げている。

「もっとも多い購入層は40代以降の男性です。ドン・キホーテにはECサイトがありません。そのため、メディアや口コミでスニーカー心地のラクすぎビジネスシューズを知った方が実際に店舗に訪れて心地よさを実感し、購入したケースが多いようです。低価格なので、まとめ買いする人も少なくありません」

高級感のある「靴ひもの光沢」もこだわりの1つ高級感のある「靴ひもの光沢」もこだわりの1つ

好評の一方で、「滑りやすい」「蒸れやすい」といった改善点も挙がっており、これらの声を基に改良が進められている。改良版は12月中旬に発売を予定しているという。

また、レディース向けの「ラクすぎ」シリーズの開発も始まっており、パンプスやローファーなど、女性向けの快適なビジネスシューズも展開予定だ。

月足さんは「今後は、女性にも快適なシューズを届けたい」と意気込んでいる。

(取材・執筆:橋本岬、編集:荘司結有)

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