アメリカ食品医薬品局は2020年12月に、アメリカの製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」やモデルナの「mRNA-1273」を相次いで承認しました。2種類の「mRNAワクチン」がパンデミック収束の鍵として脚光を浴びている傍らで、両ワクチン開発の礎を築いた移民の女性化学者であるカタリン・カリコ博士には光が当てられていないと、アメリカ・フィラデルフィアの地元紙Billy Pennが報じています。
新型コロナを予防する「mRNAワクチン」を実現に導いた女性科学者は大学で冷遇されていた
アメリカ食品医薬品局は2020年12月に、アメリカの製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」やモデルナの「mRNA-1273」を相次いで承認しました。2種類の「mRNAワクチン」がパンデミック収束の鍵として脚光を浴びている傍らで、両ワクチン開発の礎を築いた移民の女性化学者であるカタリン・カリコ博士には光が当てられていないと、アメリカ・フィラデルフィアの地元紙Billy Pennが報じています。
UPenn COVID vaccine researcher Karikó was dismissed and demoted – On top of Philly news
https://billypenn.com/2020/12/29/university-pennsylvania-covid-vaccine-mrna-kariko-demoted-biontech-pfizer/
The story of mRNA: From a loose idea to a tool that may help curb Covid
https://www.statnews.com/2020/11/10/the-story-of-mrna-how-a-once-dismissed-idea-became-a-leading-technology-in-the-covid-vaccine-race/
ファイザーやモデルナが開発した新型コロナウイルスワクチンはいずれも、ウイルスが遺伝情報を基にタンパク質を合成するのに使うメッセンジャーRNA(mRNA)を用いた「mRNAワクチン」です。ウイルスを不活性化させて作る不活化ワクチンや、弱毒化させたウイルスを用いる生ワクチンといった従来のワクチンとは異なり、mRNAワクチンはインターネットで公開されているウイルスの遺伝情報さえあれば製造可能なので、従来のワクチンが直面してきたウイルスの培養や無毒化といった技術的な課題とは無縁です。
中間おすすめ記事 (外部サイト)
ワクチンの開発には10年以上の歳月がかかることも珍しくない中、新型コロナウイルスワクチンが「1年未満」という異例の短期間で実現したのは、mRNAワクチンは「実物のウイルスなしでも作成可能」という点が大きいとされています。
このmRNAワクチンの開発に多大な貢献を果たしたのが、アメリカ・ペンシルベニア大学の元研究者であるカリコ氏です。母国のハンガリーにあるセゲド大学で遺伝子学の博士号を取得したカリコ氏は、mRNAの研究が盛んなアメリカで研究を続けるため1985年に渡米。夫と2歳の娘とともにペンシルベニア州に移住し、同州のテンプル大学でポスドク研究員として働き始めました。しかし、テンプル大学の上司がカリコ氏を国外退去させようとしたため、やむなく4年間務めた同学を辞職してペンシルベニア大学に籍を移すことになりました。
こうしてペンシルベニア大学でmRNAの研究を続けることになったカリコ氏ですが、ここでも冷遇を受けてしまいました。なぜなら、mRNAの研究が進むにつれて「重大な健康被害につながる免疫反応を引き起こす危険性がある」「人体の中では極めて不安定で壊れやすい」という欠点が表面化して研究が下火になり、助成金もつかなくなってしまっていたからです。
2005年には、同僚のドリュー・ワイスマン博士とともに「修飾ヌクレオチドを使うと免疫反応を抑えられる」ことを発見し、論文として発表。一定の成果を挙げたカリコ氏ですが、ペンシルベニア大学はカリコ氏の功績を認めるかわりに減給処分とし、教授職からも遠ざけてしまいました。
研究の道を閉ざされたカリコ氏は、2012年にペンシルベニア大学に見切りをつけてドイツの製薬ベンチャーに就職しました。その会社こそ、ファイザーとともにmRNAワクチンを共同開発したBioNTechです。カリコ氏をシニア・バイス・プレジデントとして迎え入れたBioNTechは、脂質の膜でmRNAを保護することによりmRNAの不安定さを克服し、新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」を開発しました。また、もう1つのmRNAワクチンであるモデルナの「mRNA-1273」も、カリコ氏の研究を基に開発されたワクチンです。
2020年12月にペンシルベニア大学で新型コロナウイルスワクチンの予防接種を受けたカリコ氏は、インタビューに対して「私は謙虚で幸せな気持ちでいっぱいです。私はどちらかといえば基礎科学の研究者で、ワクチンや感染症の研究はしていませんが、いつもmRNAを用いた治療法のことを考えてきました。mRNAの研究に関心が集まる中、mRNAワクチンの技術が他の病気の予防や治療にも役立つようになることを願っています」とコメントしました。
Source: ギガジン
新型コロナを予防する「mRNAワクチン」を実現に導いた女性科学者は大学で冷遇されていた
おすすめ記事 (外部サイト)
注目ピックアップ記事
おすすめ記事 (外部サイト)
おすすめ記事 (外部サイト)
注目ピックアップ記事
おすすめ記事 (外部サイト)