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新型コロナウイルス第8波の影響で、現場で活動する救急隊員の疲労がピークに達している。
救急搬送先がすぐに見つからない「救急搬送困難」が日常的に起き、隊員らは休憩も取れずに現場から現場へと転戦する日々が続いている。2022年末には、このような環境下で救急車が横転する事故もあった。
「みんな極限の状態で仕事をしている」ーー。現場の隊員らを取材し、その声を聞いた。
(この記事は2023年1月16日にBuzzFeed Japan Newsで配信した記事で、一部を編集しています。筆者は同じく相本啓太です)
食事は感染リスクのある救急車の中で
「朝から連続で搬送し続け、気づいたら深夜0時を過ぎている。ようやく消防署に戻っても、未明に再び2、3件ほど出場する。体力、精神的にとても辛い」
関東地方の救急隊に所属する男性隊員は、深いため息をついた。
「出場」とは消防の現場で使われる言葉で、「出動」とほぼ同じ意味だ。男性隊員によると、この第8波では予備用を含めたほぼ全ての救急車が消防署から常に出払っている状態が続き、署内で休む時間もほとんどない。
朝から深夜まで15時間ぶっ続けで救急車に乗る日は当たり前だ。場合によっては土地勘のない遠方まで出場している。
さらに、現場から現場へと転戦しているため、普段なら署に戻って食べている昼食と夕食も、救急車内で食べている。患者を運ぶ車内での食事は感染リスクがあるが、仕方なくそうしているという。
男性隊員は「こんなにも消防署に戻れず、連続出場することはあまりない。隊員らの疲労はピークに達し、このままでは何かミスや事故も起きてしまうかもしれない」と話した。
24時間働いた後も事務作業
男性隊員の働く職場では、救急車(救急隊)の乗員は救急隊長以下3人で構成されており、24時間交代の3交替勤務となっている。
しかし、24時間の勤務を終えた後も、普段なら業務の合間に処理する事務書類がたまっているため、そのまま机に向かう日もある。
体力だけでなく、精神的にきつくなる時も多い。搬送先の病院がすぐに見つからない「救急搬送困難」が常態化し、すぐに次の現場に駆けつけることが難しくなっている。
そんな環境下で、自分たちの目の前で心肺停止となる患者もいる。家族から「119番がつながらなかった」と言われ、「もう少し早く駆けつけてあげることができれば」と涙をこらえたこともあった。
重症の家族がいる中で、どのような思いで119番をかけ続けたのだろうかーー。
「助けられたかもしれない命が目の前で失われていくのは、本当に辛い。救急の現場から病院に電話をしても『ベッドがないから日帰り以外は受診できない』と“お決まり”の文句が返ってくる」
男性隊員は、こう語る。
そして、「コロナの軽症者で『熱が下がらない』や『不安だから』といった理由で119番をする人もいるが、病院や救急隊は大変なことになっている。医療が必要な人たちのためにできることをしてほしい」と訴えた。
年末には救急車の横転事故も
東京都内では2022年12月29日、東京消防庁の救急車が衝突し、横転する事故があった。
関係者によると、29日午前1時50分頃、昭島市の国道で救急車が中央分離帯に衝突し、横転。乗車していた救急隊員3人が軽傷を負ったという。患者は乗っていなかった。
東京消防庁は当時、事故原因を「調査中」としたが、現場は片側3車線の直線道路で、事故を起こすような複雑な地形ではなかった。
また、救急隊員らはこの日、朝から立て続けに搬送業務を続けていた。事故は、7件目の搬送を終えた帰り道に起きたという。
関係者は、事故原因は警察の捜査が終わるまでなんとも言えないとしながらも、「現場はかなり疲弊している。早く何らかの対策を講じなければ……」と危機感を強めている。
東京消防庁のTwitter(当時)を見ると、22年12月19日から救急車の出動率が95%を超える日が多発している。
岐阜でも消防車が事故⇨炎上
東京消防庁はホームページやYouTubeで、「その119、本当に緊急ですか?」と呼びかけている。
YouTubeにアップした動画では、「救急車の出動件数が増加しています」と字幕をつけた上で、「もし緊急性のない利用が増えると、救えるはずの生命が救えなくなる可能性が高まります」としている。
2021年度では、救急搬送された人の半数以上にあたる51.4%が軽症だったという。
では、救急車を呼ぶ必要がある時はどういう場合だろうか。総務省消防庁の資料では、顔半分がしびれや呼吸困難、手足の硬直など、年齢別に解説されてある。
また、救急車を呼ぶかどうか迷った際は、救急安心センター事業の「♯7119」に電話ができる。
総務省消防庁によると、医師や看護師、トレーニングを受けた相談員らが電話口で症状などを聞き取り、「緊急性のある症状かどうか」や「すぐに病院を受診する必要があるか」などを判断する。
緊急性が高い場合は救急車の出動に繋いでもらうことができ、そうではない場合も医療機関や受診のアドバイスについて聞くことができる。
都内では、「東京版救急受診ガイド」というものもある。急な病気やけがを患った際、病院へ行くべきなのか、救急車を呼ぶべきなのかを判断する自分で判断することができる。
◇
2024年12月10日午前5時頃、岐阜県下呂市の国道41号で、救急車が道路脇のガードパイプに衝突し炎上。乗っていた医師や救急隊員ら3人が足を骨折するなどのけがを負った。
救急車は同市内の病院から転院する患者を約50キロ離れた別の病院に搬送した後、同市内に戻る途中だった。
名古屋テレビによると、事故原因は運転していた隊員の居眠りだった可能性がある。前日から24時間勤務の中で仮眠を取る予定だったが、午前1時頃に救急患者の対応が発生。「仮眠できていなかったとみられる」としている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
救急隊員が明かした“極限”の日々。「15時間ぶっ続けで搬送」「救えるはずの命が…」 現場で起きていること