卓球に魅せられた女性の起業。やりきる力の源は「反骨心」だった。

「卓球レディース」を立ち上げた西村友紀子さん

「卓球女子の前髪解決策」「推しの卓球選手からサインをもらう方法」「夫婦ダブルスは掟破り」など独自の目線で情報を発信する世界初の卓球女性専門メディア「卓球レディース」。立ち上げたのは、自身も卓球の経験がある西村友紀子さんだ。

「レディースとは卓球界で30歳以上の女性を指す言葉です。名前の通りに、今ではユーザーの7割がその世代の女性で、初中級の卓球女性に興味を持たれています」

「卓球レディース」ホームページ

オリンピックや世界大会などで日本人選手が活躍し華やかに見える女子卓球界。しかし、アマチュアの世界では「卓球=地味」という刷り込まれたイメージが残っているという。卓球雑誌やメディアを見ても、女性をターゲットにしたものが少なく、初心者にはわかりづらい専門的な情報であふれている。このような現状を変えることがメディアを立ち上げた目的だ。

「卓球の魅力を伝えてイメージを変えることで一般の人の参加を促し、将来的には卓球人口を増やしたいという大きな目標があります。その手段として最適だと思ったのが卓球に興味のある女性向けのメディアでした」

しかし、立ち上げの道のりは険しいものだった。

「卓球=地味」というイメージを変えていく

「卓球は短距離走しながら囲碁将棋をしているようなもので、2手3手先を読みながら動いています。これほど面白くて刺激的なスポーツはないと思います」

西村さんが卓球と出会ったのは幼少期だ。押し入れの中から元国体選手だった母の卓球ラケットとゼッケンを見つけた。卓球への興味を抱くも、母からは「卓球ほどつらいスポーツはない。卓球だけはあかん」と禁じられていた。西村さんは母の言いつけを守り、中学時代はバスケットボール部に所属していたが、やはり卓球への興味を忘れられず、高校に入ると卓球部に入部した。しかし、同時に周りの同級生の態度が変わった。

高校では卓球部に所属していた西村さん(右)

「中学の時に仲のいい男子生徒がいたんですけど。高校に入ると全然口をきいてくれなくなりました。ある日、すれ違いざまにクスっと笑いながら『卓球部』と言われて、その時に避けられている理由がわかりました」

1980年代には、テレビ番組で有名タレントが「卓球は根暗だ」という発言したことをきっかけに「卓球根暗ブーム」が起きたと言われている。

西村さんはこの根暗ブームに嫌気がさし、高校卒業と同時に卓球をやめた。大学に入ると、友人と卓球で遊ぶときはわざと下手にプレイするなど卓球部だったということを隠して過ごしたという。

西村さんと息子

それからメーカーへ就職し、結婚、出産し、専業主婦として過ごしていた。2020年に子どもが小学校へ入ると、友人の勧めでPTAの卓球部に入った。久しぶりの卓球界、高校時代には存在しなかった卓球をテーマにしたYouTubeチャンネル、卓SNSの卓球アカウントなど、新たな情報源は新鮮で期待に胸がふくらんだという。しかし、どれをみても中身は25年前の「卓球根暗ブーム」時代から変わっていないように感じた。上級者向けの難しい情報、女性を寄せ付けない閉鎖的な雰囲気、そしてデザインが魅力的とは言い難かった卓球ウェア。「卓球根暗ブーム」に嫌気がさし卓球から離れていたが、今度は自ら、卓球自体のイメージを変えていくことを決意した。

「もっと初中級の女性が楽しめるメディアが必要だと思い、いろんな人に教えを乞いながら一人でメディアを作りました」

「こんなのビジネスじゃない」批判されても、自分を信じて道を進む

西村さんは、図書館に通って本を読みあさり、サイト制作を進めた。同時に起業塾に通っており、そこでも一定の評価を得られたため、ビジネスとして成り立つと自信を持てた。そして2021年、ウェブメディア「卓球レディース」が誕生した。当初は、周りの起業家から「マネタイズが難しいのでは?」という疑問の声もあった。印象に残っているのはあるビジネスコンテストでプレゼンした時のことだ。大勢の参加者がいる中で、審査員から「こんなのビジネスじゃない」「これは趣味だろ」と激しく批判を受けた。

「私を馬鹿にしてるのじゃなくて、卓球を馬鹿にされているみたいで悔しかったです。ここで負けてはいけないと思いました」

ビジネスイベントでプレゼンする西村さん

西村さん自身もマネタイズできるのか不安に感じる部分もあった。営業に行っても門前払いされたり、「卓球場を経営してから来て」と言われたりするなど周りからの風当たりも強い。しかし、これまで批判的な意見をしてきた人を見返すため、卓球のイメージを変えるため、意地でも卓球業界に風穴を開けたいという思いで、必死にコンテンツを生み出すことに集中した。

プロ選手へのインタビューや女性視点の記事などを増やし、1年後にはコンテンツの数が100本を超え、サイトの認知度も高まっていった。ビジネスパートナー探しのために、ビジネスコンテストにも積極的に参加し、2023年には公益社団法人大阪産業局が主催する女性起業家応援プロジェクト「LED関西」でファイナリストに選ばれた。最近では、大手スポーツメーカーからタイアップ広告の依頼もくるようになっている。

「自分を信じて努力を重ねていれば、お金は後からついてきました。卓球ファンを増やすためのアイデアがまだまだ溢れてきています」

今後はさらに事業領域を広げ、温泉卓球をテーマにしたツーリズム事業やオリジナルグッズの開発も進める予定だ。

「LED関西」に登壇する西村さん

卓球レディース

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ぶっ飛びラバー級卓球女子的情報メディア

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卓球に魅せられた女性の起業。やりきる力の源は「反骨心」だった。

Jun Kitada