「セクシー田中さん」編集者のメッセージにSNSで大きな反響。「現場」からの発信で問われるテレビ局、出版社の責任

「プチコミック」の公式サイトに掲載された編集者らのメッセージ

これまでの流れはこちらに>>「セクシー田中さん」の編集者とドラマ脚本家がメッセージ発表「著者の意向尊重は当たり前」「初めて聞くことばかり」

日本テレビでドラマ化された漫画「セクシー田中さん」の作者、芦原妃名子さんの突然の死去に対し、脚本づくりの交渉にあたっていた漫画編集者らが自ら声を上げた。

ドラマ化の経緯や交渉過程に関する公式の説明がほとんどない中で、「現場」から情報を発信した形になり、大きな反響を呼んでいる。

泣いてしまった

現場から声があがりはじめました。(中略)覚悟と誠意がこもっています

現場の力を信じます

2月8日、編集者らのメッセージがネット上で公表されると、SNSは漫画家やファンの反応であふれかえった。その多くは、編集者らの行動に「勇気」を見出し、背中を押すものだった。



https://twitter.com/namidausagi/status/1755523166309585223?ref_src=twsrc%5Etfw

芦原さんの死去が報じられたのは1月29日で、自ら死を選んだ可能性が高いと報じられている。3日前の26日に書かれた芦原さんのブログには、「原作に忠実に」というドラマ化の条件が脚本づくりの際になかなか守られず、疲弊していっている様子がつづられていた。

突然の訃報を受け、日本テレビは29日、小学館も30日にそれぞれのサイトで追悼コメントを発表した。しかし、ドラマ化の経緯や交渉の中身は、ほとんど説明されていなかった。

小学館では、2月6日に社員向けの説明会が開かれたという。だが、そこでは「自ら対外的に発信する予定はない」という会社の方針が明らかにされたと、新聞やテレビが報じていた。

編集者一同による8日のメッセージ発信は、閉塞的とも言える状況下で起こした行動だった。「本メッセージは、我々現場の編集者が書いているものです」と冒頭で説明。「私たちが声を挙げるのが遅かったため、多くのご心配をおかけし申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉もつづった。

漫画などの著者には「心を守るための権利」が保障されていることを説明し、自分たちが芦原さんの心を守り通すことができたのか、見つめ直していることが語られた。

メッセージは、コミック誌「プチコミ」の公式サイトで発表され、Xの公式アカウントにも転載された。小学館の少女・女性漫画を担当する編集者らが、自分たちの土俵で行動を起こしたといえる。

一方で、小学館の公式サイトも8日、新たなプレスリリースを発表した。「セクシー田中さん」のドラマ化の経緯に同社として初めて触れ、「芦原先生のご要望を担当グループがドラマ制作サイドに、誠実、忠実に伝え、制作されました」と記した。

その上で、編集者たちの声明が「別に」あることを伝え、全文を転載した。

ハフポスト編集部は、編集者のメッセージと会社のプレスリリースはどちらが先に作られたのかを小学館の広報に尋ねたが、「サイトに掲載されているメッセージがすべて」いう回答で、それ以上の説明はされなかった。

ただ、編集者らの「プチコミック」のメッセージと、会社としてのプレスリリースはいずれも午後6時、同時刻に掲載したという。

詳しい経緯は不明だ。だが、「対外的には発信しない」という方針を決めていたとされる小学館が、2日後に一転して、ドラマ化の経緯について言及する展開になった。

くしくも同じ日に、「現場」のもう一方の当事者であるドラマの脚本家も、自らのInstagramでメッセージを公表した。

芦原さんが記したブログの内容について、「私にとっては初めて聞くことばかりで、言葉を失いました」とつづった。自身のSNSで脚本づくりについて発信したことには「深く後悔、反省しています。(中略)もし私が本当のことを知っていたら、という思いがずっと頭から離れません」と記した。

日本テレビは、1月29日に発表した追悼コメントで、「小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」と説明している。

同社はハフポストの取材に対し、小学館と同様に「サイトでの説明がすべて」と応じていた。しかし、「初めて聞くことばかり」という脚本家の説明とは大きな隔たりがあるように見える。

ドラマ化の「現場」で何が起きていたのか、詳しいことはいまだに明らかになっていない。それでも、原作者の死去という悲劇から10日あまりがたち、当事者たちがそれぞれに声を上げ始めた。

今後は、ドラマ制作について責任を有し、メディア企業として社会的責任も背負っているテレビ局と出版社が、つぐんでいた口を開くのか、どのように行動するのかが問われる。

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