村上隆さんの展覧会、トレカ求めて長蛇の列「数時間並んだ」の声も。メルカリで高値で転売【村上隆 もののけ 京都】

京都市京セラ美術館の「村上隆 もののけ 京都」では、先着5万人に限定トレーディングカードが配布された。

世界のアートシーンの最前線で活躍する現代美術作家・村上隆さんの大規模個展「村上隆 もののけ 京都」が、2月3日に京都市京セラ美術館(京都市左京区)で開幕した。会場では初日からエントランス前に長い行列ができ、SNS上には「9時間並んだ」といった投稿も。先着5万人に配られる「トレーディングカード」(トレカ)を求めて多くの人が集まったと見られ、フリマアプリでは高値で取引されている様子も見られる(カード配布は6日で終了)。

長蛇の列に「9時間並んだ」の声も

3日に開幕した「村上隆 もののけ 京都」は、名実ともに日本を代表する現代美術作家・村上隆さんの京都では初となる大規模個展だ。東京国立博物館所蔵の国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」を独自に解釈した注目の新作や、オリジナルキャラクター「DOB君」の巨大オブジェなど約170点を展示。会期は9月まで続き、桜や五山の送り火といった季節の風物に合わせた「仕掛け」も検討されているという。

「村上隆 もののけ 京都」の内覧会に登壇した村上隆さん=2024年2月2日、京都市左京区

日本の美術館で開く個展としては、「村上隆の五百羅漢図展」(森美術館、2015-16年)以来およそ8年ぶりということもあって、大きな注目を集めていた今回の展覧会。京都市京セラ美術館によると、開幕日の3日は未明から来場者が集まり始め、午前9時半の時点でエントランス前に約2000人が列をつくっていた。行列は午後になっても解消されず、同館は急遽、開館時間の延長を決定。午後4時には列への新たな受け入れを停止したが、その時に最後尾だった人が展示室に入ったのは午後8時半ごろだった。

また一部の来場者による不正な列の横入りが横行したため、現場では警備員の増員や整理券配布などの対策が取られることに。強引な割り込みに対して来場者同士がトラブルになり、警察官が対応にあたる場面もあったという。

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【村上展に長蛇の列、整理券配布へ】 2月3日に開幕した京都市京セラ美術館の「村上隆 もののけ 京都」。開幕初日に長蛇の列が生じる事態となり、美術館は今日から整理券を配布すると発表しました。

X(旧Twitter)では、展示室にたどり着くまで「9時間並びました」といった投稿がみられたほか、あまりの待ち時間にやむなく鑑賞を諦めたという人も。こうした状況が周知されなかったことに対し、「SNSなどを通して状況のアナウンスを定期的にしてほしい」と苦言を呈する声もあった(その後、美術館のHPや展覧会公式アカウントで待ち時間の目安がアナウンスされた)。

ただ、現代美術の展覧会でこれほどの行列ができるのは日本では極めて異例のこと。なぜ多くの人が、開幕日の美術館に殺到することになったのか。

「転売ヤー」殺到、フリマで28万円

その理由の一つと見られるのが、展覧会の入場特典である限定トレカだ。本展では先着5万人を対象に、入場券1枚につきカード1枚(1パック)が配布されることになっていた(入場券を複数持っている場合は、1回の入場につき10枚まで交換可)。

このカードは、村上さんが手がけているトレカのプロジェクトの一環で、今回は来場者限定バージョンとして、全12種類の絵柄を日本語版と英語版の2パターンで用意。いずれもここでしか入手できない限定品であることから、コレクターやファンに加え、転売目的の人が殺到したとみられる。実際、フリマアプリでは「来場者限定カード20パック ¥120,000」など多数の出品が確認され、「50パック」が28万円で売買されたケースもある。

「来場者限定カード」などが高値で取引されていた(2月5日時点)。

 村上さんは2022年4月に、1万1664種のドット柄のフラワーを生成したNFTアート「Murakami.Flowers」を発表。そこから派生した新たなコレクターズアイテムとして、108種類+αのトレカ「Collectible Trading Card 108フラワーズ」を23年12月にリリースした。カードは予約開始から即完売となるなど話題を呼び、年明けからレアカードを中心にセカンダリーマーケットで価格が高騰。そうした中、個展に合わせて新たに配布されたのが、今回の来場者限定バージョンと、京都市ふるさと納税限定バージョンだった。

開幕3日目には配布終了

初日の状況を受けて、運営側は2月4日以降も入場整理券を1人1枚ずつ配布し、その際にオンライン等で事前購入したチケットの提示を求めることを発表。そして、休館日を挟んで開幕3日目となった6日午後には、早くも「枚数上限に達した」として配布終了がアナウンスされた。

異例の混乱ぶりに、ルールを守らない人への批判や会場運営の不備を指摘する声が上がった今回の展覧会。一方で、村上さんが仕掛けた試みに対しては、美術関係者などから「会場運営とかシステムはダメだが(中略)改善していけば美術のすそ野を大きく広げられる」「美術館をテーマパーク化するというのが村上隆のシニカルな戦略」といった反応もみられた。

高度資本主義と芸術の関係をテーマの一つとし、近年はNFTアートにも積極的に取り組んでいる村上さんは、マーケットでの二次取引や価格変動も織り込んだプロジェクトとしてトレカを展開しているとみられる。はたして、その目論見はいかなるものなのだろうか。

今回の個展では、トレーディングカードの絵柄を108枚のパネルに描いた作品も展示されている。村上隆《Murakami.Flowers Collectible Trading Card 2023》2023-24年 (c)2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
会場の冒頭に置かれた、村上隆《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》2023-24年(部分)(c)2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

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