国が「スティグマ」を社会に根付かせている。結婚の平等裁判で原告が訴え「景色を変えたい」

裁判所の前で「同性婚の法制化を」というメッセージを掲げる支援者

こちらもおすすめ>>差別する人たちが大きな声を持っている――。結婚の平等裁判、少数派の人権の砦になるよう訴える

性的マイノリティ当事者が結婚の平等(法律上の同性カップルの婚姻)を求めて国を訴えている裁判で、東京2次訴訟9回目の口頭弁論(飛澤知行裁判長)が9月28日に東京地裁で開かれた。

この裁判では、これまで5件の1次訴訟のうち4件で、法律上同性カップルの婚姻が認められないのは「違憲」という地裁判断が示されている。

28日の口頭弁論では、原告側の弁護士が「スティグマ」と「国際人権法」の面から、結婚の平等の必要性を訴えた。 

🌈「結婚の自由をすべての人に裁判」とは:30人を超える性的マイノリティが、結婚の平等(法律上の性別が同じふたりの結婚)の実現を求め、全国6つの地裁・高裁で国を訴えている訴訟。 東京2次訴訟では8人が原告になっている。

裁判所に向かう原告ら

国がスティグマを社会に根付かせている

スティグマとは、特定の属性に対する負のイメージで、差別や偏見を生じさせる。

意見陳述した原告の北條友里恵弁護士は、性的マイノリティ当事者に対するスティグマは未だに社会に根強く残っており、見下す態度やヘイトスピーチなど様々な形で精神的苦痛を生じさせている、と説明。

その上で、国が同性カップルの結婚を法律で認めていないことが「性的マイノリティは社会に承認されない、劣ったもの」というスティグマを社会に根付かせる要因になっていると主張し、同性カップルも異性カップル同様に結婚制度を利用できるようにすべきだと訴えた。

同じく原告の油原麻帆弁護士は、国際人権法の観点から、結婚の平等の必要性を求めた。

油原弁護士によると、性的指向や性自認に基づく差別に対し、国際人権法の理念を踏まえて取り組みをアップデートする動きが国際社会で近年急速に進んでおり、「同性婚」とも呼ばれる法律上同性のカップルが婚姻制度を利用できるようにすることが国の義務であるとの見方が有力になっている。

その中で、日本は国際社会から性的指向や性自認に基づく差別禁止などの法的保護を強化するよう何度も勧告されてきた。

2022年11月の自由権規約委員会の総括所見では、結婚の平等の権利を享受できるようにすべきという勧告が出されている。

油原弁護士は「それにもかかわらず、法制化が未了のままだ」と述べ、国際社会から何度も結婚の平等実現を求められている状況を考慮して、裁判所は判決を下してほしいと求めた。

景色を変えたい

口頭弁論後の記者団の取材で、北條弁護士は「異性同士のカップルにしか法律婚が認められていないことで、国家が同性カップルに対するスティグマを肯定するメッセージを送ってしまっている」と述べた。

「法律上同性のカップルに法律婚を保障したからといって、すぐに世の中からスティグマがなくなるわけではありません。しかし、少なくとも国がスティグマを肯定するメッセージを発しなくなることで、スティグマ強化の悪循環が止まります。社会に与える影響はとても大きいと思います」 

(左から)原告の山縣真矢さん、北條友里恵弁護士、沢崎敦一弁護士

東京2次訴訟の原告の一人である山縣真矢さんも「これまでの人生で、様々な形でスティグマを経験したり見聞きしたりしてきた」と記者団の取材で述べた。

山縣さんは、2022年6月の意見陳述で「パートナーが法律上同性であるということだけで結婚制度から排除され、差別を受けたまま、二級市民として生涯を終えたくはありません」と語っている。

9月28日の取材でも「結婚が認められないことで与えられてきたマイナスの面というのもたくさんあるなと思います」と述べた。

また、山縣さんは「平等な結婚ができるという景色を見たことがない我々からはどういうものなのかわからないけれど、実現すれば大きな一歩を踏み出せるし、それによって次の世代も変わっていくと思います」とも語った。

「10代の頃を振り返ると、男性が好きだと思った時に結婚の平等があれば全然違っただろうと思います。そういう景色をぜひ若い世代に見せてあげたいと思います」

…クリックして全文を読む

オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
国が「スティグマ」を社会に根付かせている。結婚の平等裁判で原告が訴え「景色を変えたい」

Satoko Yasuda