1: 通りすがりのコメンテータロシア人がロシアを見放した足許で、ロシアの通貨“ルーブル”の下落が鮮明だ。
7月末、1ドル=91ルーブル台だった為替レートは、8月14日に1ドル=101ルーブル台まで下げた。2023年の年初来からの対ドル下落率は約40%に達した。
新興国通貨の中でも、ルーブルの下落率はかなり大きい。
ルーブル下落の要因として、ロシア人自身がロシアを見放していることだろう。富裕層中心に、ルーブルを打って外貨に乗り換える動きが鮮明化している。
その背景には、軍事支出増加による財政の悪化、西側諸国の制裁などを背景とする経常黒字の減少がある。
国内経済の悪化懸念は高まり、海外に資金を持ち出そうとする国民は増加しているようだ。
ルーブル下落は輸入物価を押し上げ、ロシアのインフレ圧力は急速に上昇し始めた。
8月15日、ロシア中銀は通貨下落に歯止めをかけてインフレ圧力を抑えるために、大幅な追加利上げを急遽実施した。
一方、戦費の拡大などによって財政の悪化は急速に進んでいる。
追加利上げを実施したとしても、ルーブル安、インフレ懸念の高まりを食い止めることは難しいと考えられる。ロシアはさらに厳しい状況に直面するだろう。
国際金融から孤立
ウクライナ紛争の発生後、ロシアの経済環境は悪化した。まず、軍事費の増大によって財政赤字は拡大した。西側諸国による金融・経済制裁のインパクトも大きかった。
米国や欧州委員会は、ロシアの大手銀行を国際送金・決済システムである“SWIFT(国際銀行間通信協会)”から排除した。
ガスプロムバンクとズベルバンクは制裁から除外されたが、事実上、ロシアは国際金融システムから孤立した。
西側諸国はウラル産原油に上限も設けるなど制裁を強化した。
原油、天然ガス、穀物などを輸出して外貨を獲得してきたロシアの経常黒字は急速に減少した。
インドや中国などがウラル産原油を購入したことはロシア経済を一時的に下支えしたが、中国経済にかつてのような強さは見られない。
インフレ懸念も上昇
海外企業の撤退などを背景に、半導体や自動車部品などの資材も枯渇した。ロシアから流出する資金は増加した。紛争の長期化によってロシア国内の社会心理も徐々に不安定化し、海外への移住や資金の持ち出しを企図する国民は増加の一途をたどる。
そうした要素に下押しされ、2023年の年初以降、ルーブルはドルに対して下落した。
自国通貨の下落は輸入物価を押し上げ、ロシアのインフレ懸念は上昇している。
7月、中銀はインフレを抑えるために政策金利を1.0ポイント引き上げ、年8.5%にすると発表した。利上げ幅は市場予想(0.5ポイント)を上回った。
また、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.25%上昇と、中銀目標の4%を下回った。
その状況下での予想を上回る利上げ実施は、経済統計から確認できる以上にルーブル安による輸入物価押し上げが強かったことを示す。
その後、7月のCPIは同4.30%上昇し、インフレは加速した。
財政悪化が止まらない
ウクライナ紛争の長期化や制裁の影響によって、ロシアの財政悪化は止まらない。対応措置としてロシア政府は、大企業に対する課税を強化した。
今後、中小企業などに対する課税も強化される可能性は高い。それによって企業の業績は悪化する。
ロシアの雇用、所得環境の悪化も避けられず、個人消費は減少するだろう。
輸出面では、中国経済の停滞が大きい。
中国では不動産市況の悪化に歯止めがかからない。土地の譲渡益減少によって地方政府の財政は悪化し、本格的な景気回復には時間がかかる。
原油の需要は簡単に盛り上がらず、ロシアは原油輸出を削減した。
ロシアから資金が流出する
西側諸国による制裁が続くこともあり、経常収支は悪化する。海外企業の撤退などによってロシア国内の設備投資も停滞するだろう。
ロシア経済の縮小均衡は避けられない。
続きはソースで
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ec5840f500151b4110fd3e4c7f0b32866a41a1df?page=1
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