インドには、高さ182メートルという世界一高い銅像があります。この巨大な像は、地震や強風に耐えるために数多くの技術が注ぎ込まれています。その技術について、海外YouTubeチャンネル「Tech Vision」が解説しています。
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高さ182メートルの銅像が「地震」や「強風」に耐えられる理由とは?
この巨大な像の元になった人物は、インドの政治家であり、独立運動家でもあったヴァラブハイ・パテル氏です。彼は、1940年代にイギリスがインドから去った後、562の国をまとめて国家建設活動を行いました。彼はこの功績から「インドの鉄人」という異名を持っています。
この銅像は、すべてのインド人のためのものであることを強調するために、各地の農民たちの使わなくなった古い鉄くずを集めて製造されています。鉄くずは、1億人もの農民から129トン集められ、それが溶かされて銅像の土台になっているそうです。
像の高さが182メートルというのも偶然ではありません。182という数字はインドのグジャラート州の議席数と同じになっているのです。ちなみにこのサイズは自由の女神像の約2倍。どれだけ大きいかがよくわかります。
デザインは、インドを代表する彫刻家であり、祖国への貢献によりパドマ・ブーシャン賞を受賞したラム・V・スータール氏によって作成されました。スータール氏は、最初91㎝、次に548㎝、そして914㎝の粘土の模型を作りました。そして、完成した粘土の模型を3Dスキャンし、それを元に外層が製造されています。
このプロジェクトの資金は、グジャラート州政府を中心に、個人の寄付やチャリティーマラソンなど、さまざまな資金源から集められました。最終的に像の総工費は526億円近くに上ったと推定されています。また、このプロジェクトでは、約4,000人の労働者と250人のエンジニアが57カ月という時間を要して進められました。
2013年10月31日、パテル氏の138回目の誕生日に、当時グジャラート州首相、現首相のナレンドラ・モディ氏が基礎を築き、本格的な建設が始まりました。パテル像を建築する際、最も大きな問題となったのが「細長比」と呼ばれる部分です。一般的に高層建築は下部よりも上部をより細くするのが理想的です。
しかし、パテル像はあきらかに、底辺が狭くなっています。さらに、この像の両足は約6.5メートルも離れていてバランスが悪いという問題がありました。
この問題を解決するためにエンジニアは、超高層ビルの建設現場で何度も目にしたことがあるような、2つの独立したコンクリートのコアを作ることにしました。この2つのコアには、約21万立方メートルのセメントとコンクリート、6500トンの構造用鋼、1万8500トンの鉄筋が組み込まれています。そして、そのコアの中にはエレベーターが設置され、観光客が頂上の展望室にアクセスできるようにしています。
また、コアの中には地震対策としてダンパーが設置されています。なぜなら、パテル像が建っている地域では地震が多いからです。このダンパーのおかげで、深さ10km、半径12kmのマグニチュード6.5までの地震に耐えることができます。
また、パテル像にはスチール製の「スペースフレーム」が設置されています。このフレームに、銅色のパネルがボルトで固定されています。このパネルはわずかに重なるように設計されていて、時速180kmの強風の中で動きます。その結果、強風の威力を像全体に伝わらないように受け流すことができるのです。
このように、パテル像にはたくさんの技術が注ぎ込まれています。しかし、高額な建造費を貧困対策として使った方が良いという主張も出ているようです。この銅像の建築に関しては賛否両論ありますが、技術力が素晴らしいということは間違いありません。
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建設費500億円:全長182mの「世界一巨大な銅像」地震や強風に耐える驚異の技術力