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見えない世界にきた8歳が、いまの気持ちを詩によんだ。「僕はちからがある。」

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夏休みに突然、両目とも見えなくなった小学2年生が、Twitterで自作の詩を発表しています。直感的で力がみなぎる言葉に心を動かされる人が続出中。作者のカイ カセイさんに話を聞きました。   

コットンコットン

この詩をよんだのは、小学2年生のカイ カセイさん(8歳)。Twitter(@kai201409)で自作の詩を発表しています。

うつぶせ生活からうまれた言葉

カイさんは生まれたときから弱視で、治療を重ねながら普通学級に通っていました。2022年の夏休み、治療の影響で両目とも見えなくなりました。

詩をよむきっかけになったのは、治療中に3週間うつぶせで過ごさなければならなかったときに、「とっても暇」だったから。

大好きだったマインクラフトができない。YouTubeも見られない。身体を動かすこともできない。Amazonのオーディオブックを聴いたり、すでに動画配信サービスで何度も観た「クレヨンしんちゃん」を聴いたりしながら、時間を持て余していました。

通っていた弱視通級指導の先生が、オンラインでクイズを出してくれたり、詩を読んでくれたりました。

「カイくんも、つくってみたら?」

もともと音楽が好きで、ギターを手に即興で歌をつくっていたカイさん。先生の一言に背中を押され、詩にも挑戦してみることにしました。

いつでも下向きいつでも下向き

カイさんは、生み出した言葉を録音したり、パソコンに音声入力したりして記録します。句読点や改行、漢字など表現のこだわりを母親が聞き取って文章にし、父親が画像をつくって点字の署名を入れます。画像をTwitterに投稿するのはまた母親の担当。ALTバッジをつけて画像の説明を追加しているため、読み上げ機能を使えば目が見えない人でも詩を聴くことができます。

母親のかおりさんは、こう話します。

「ALTバッジのような機能があることを初めて知りました。見えない世界って、どこかの新しい国に留学したみたい。言語や文化が違い、コミュニティがある。新しい世界のおもしろさを、家族でゼロから学んでいます」

5歳のときにつくった歌 道のまんなかで5歳のときにつくった歌 道のまんなかで

頭の中でしゃべってくれる

見えていたときの歌は、目から入ってきていた情報から思いついた言葉が多く、見えなくなってからの詩は、耳から入ってくる情報から思いつく言葉が増えました。

カイさんは、創作の手順をこう説明します。

「考える詩と、無意識の詩があります。無意識の詩は、頭の中に浮かんだ文字を読むというよりは、頭の中でしゃべってくれるような感じ」

夢の中に出てきた言葉を覚えていて、朝起きたときに歌が自然に出てくることもあるので、忘れないように起きたらすぐに歌っておく、ということもあるといいます。

びゅんびゅん

「びゅん」は、考えた言葉と無意識の言葉をコラボしてつくった詩です。

「快速急行が通ったから、速い電車かなと思った。『弾丸よりも速く』というところは考えた言葉で、『つくられたとき』は無意識の言葉。両方を並べてつくりました」

大人の感覚では「この詩にはこんなストーリーがあるのではないか」と想像を膨らませてしまいがちですが、実はまったく違う場面で出会った単語を「おもしろいから並べてみた」というものも。直感的な感性と小学生ならではの遊び心が、私たちの想像を超えた世界観をつくりだしています。

マイクラの葉っぱとは違ってた

勉強では、算数は好きだけど、国語はあまり得意ではない、というカイさん。

「でも、しりとりとか言葉あそびは好き。お母さんやお父さんの話をよく聞いて、知らない言葉が出てきたら質問しています。『合理的ってなあに?』とか『依存ってなあに?』とか。意味を知りたいし、どういうときに使ったらいいのかがわかるから」

天気のいい日は散歩に行く天気のいい日は散歩に行く

見えなくなってからの世界について聞くと、大好きなマインクラフトにたとえて、こんな話をしてくれました。

「散歩に出て、風を感じたり、カラスの鳴き声を聞いたり、葉っぱを触ったり、金柑のにおいをかいだりしています。金柑は嫌なにおいだと思っていたけど、意外といいにおい」

「マイクラをやりこんでいたから、iPadの画面の触り心地に慣れていた。マイクラの世界にあるブロックはぜんぶ同じ形で、葉っぱもぜんぶ同じ形だった。外に出ると、葉っぱの長さや大きさがそれぞれ違ったり、車の音も毎日違ったりするからおもしろい感じがする」

ハシル枯れ葉ハシル枯れ葉

いまは点字を勉強したり白杖を使う歩行練習をしたりしながら、盲学校に転校する手続きを待っています。1日にいくつも詩が生まれることも。

見えない世界を前向きに受け止めているカイさんに影響され、かおりさんは「正しくポジティブに親バカを発揮していいんだ」と感じるようになったといいます。

「親が謙遜して子どもを過小評価するのはありがちですが、子どもの良いところを胸を張って、素晴らしい!天才!と言うことってとても大切だと、ここ数カ月で思うようになりました。見えなくなったことがきっかけで、聞こえるように声に出して褒めまくるようになりました。片付けなさいー!といつも怒ってもいますが(笑)」

「目が見えないことは、カイにとっては武器にもなりえます。親バカは親にしかできないことなので、外に対しても『この子は目が見えないけどすごいよ』って声をあげるようになりました。Twitter開設もその一環なのかもしれません」

点字を練習する点字を練習する

カイさんがいま一番、ほしいものは、ドローンだそうです。

「飛ぶって、不思議でしょう? ぼくは飛べないけど、飛ぶってなにかを知りたい。だから自分でドローンを飛ばしてみたい」

将来のことはまだ決まっていないけれど、いま気になっている仕事はアーティストか詩人。触ったり聞いたりしてわかる作品をつくりたい、と話します。

カイさんからどんな言葉が生まれるのか、これからの作品に注目です。

(取材・文:小林明子)

(2022年12月7日のOTEMOTO掲載記事「見えない世界にきた8歳が、いまの気持ちを詩によんだ。「僕はちからがある。」」より転載)

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