“ドレッドヘアー”理由に薬物所持を疑う。人種めぐる職務質問6件、警察庁が調査「差別的な意図ない」

イメージ写真(記事中の警察官とは関係がありません)

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警察庁は12月1日までに、人種や国籍などを理由とした職務質問に関する全国調査の結果を発表した。2021年中に、4都府県警の計6件の職務質問で「不適切・不用意な言動があった」としている。

警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャル・プロファイリング(Racial Profiling)」と呼ばれる。

同庁は6件について、いずれも「(対応した警察官は)人種や国籍への偏見に基づく差別的な意図は持っていなかった」とハフポスト日本版の取材に回答。「警察として、レイシャル・プロファイリングがあったとは判断していない」との見解を示した。

人種差別的な職務質問の問題に詳しい専門家は、「差別する意図がなくても、不利益な効果が発生すれば人種差別に当たる」と指摘する。

「外国人が車を運転するのは珍しい」「ハーフですか」

調査は、2021年に全国の都道府県公安委員会などに寄せられた職務質問に関する相談が対象。

このうち、人種や国籍、髪型などの容姿、服装といった特徴を理由とした職務質問の相談を都道府県警が抽出し、警察庁が各ケースを精査した。

その結果、同庁が「不適切・不用意な言動があった」と認定したのは6件で、内訳は警視庁2件、神奈川県警2件、大阪府警1件、宮城県警1件ーーだった。

具体的には、

・ドレッドヘアーでおしゃれな人が薬物を持っていたことがあるから、と職務質問の理由を説明した(警視庁)

・フィジー国籍の人に対し、外国人が車を運転しているのは珍しいから、と職質の理由を説明した(警視庁)

・車両の検問時に、「ハーフですか」と質問した(神奈川県警)

などがあった。

警察庁は、6件を不適切だと判断した理由について、「人種や国籍などに対する偏見や差別との誤解を受ける恐れのある言動が認められた」からだと説明する。

一方で、いずれも「差別的な意図を持ったものではなかった」との見方を示し、「警察として、いわゆるレイシャル・プロファイリングがあったと判断しているわけではない」とした。

同庁は、問題が確認された4都府県警に対して個別指導を行ったという。

今後の対応について、「引き続き法に基づいて適切かつ的確に職務質問が行われるよう、教育や指導を繰り返し行う」と述べるにとどめ、具体的な改善策は示さなかった。

「ズボンを脱がされた」東京弁護士会の調査に訴え

海外にルーツのある人に対する人種差別的な職務質問は近年、日本でも問題になっている。

在日アメリカ大使館は2021年12月、Twitterで「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告がありました。数名が拘束され、職務質問や所持品検査をされています」などと投稿。日本で暮らすアメリカ国民に対し、異例の警告を出した

レイシャル・プロファイリングの問題に詳しい宮下萌弁護士は、警察庁の調査について「人種や国籍を理由とした不当な職務質問が国内でも起きている、ということ自体を警察が受け止め始めたのは画期的なことで、第一歩ではある」と評価する。

一方で、1年間で6件との調査結果に対し、「明らかに数が少なく実態を反映していない」と指摘。「公安委や警察に直接相談するケースはごくわずかであり、調査対象が不十分だと言わざるを得ない」としている。

レイシャル・プロファイリングをめぐる東京弁護士会の調査(2022年1〜2月)には、全国から2000人を超える回答が集まった。過去5年間ほどで職務質問を受けた人は62.9%だった。

職務質問の根拠となる「警察官職務執行法」は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断」し、犯罪を犯しているまたは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある場合に、相手を停止させて質問することができると定めている。

東京弁護士会の調査では、こうした規定に該当せず、外国にルーツを持つこと以外に警察官から声をかけられる理由はなかったと認識している、と答えた人は76.9%に上った。

自由記述では、「いきなりズボンを脱がされ、下のものを見られた。侮辱的だし差別的。とても心が傷ついた」「『お前ら外国人は国に帰れや』と怒鳴りつけられました。警察を見るたびに怯えています」など、人権侵害を訴える声も寄せられた。

専門家「差別する意図がなくても、不利益な効果があれば人種差別」

警察庁は、問題があったとする6件はいずれも「差別的な意図は持っていなかった」とした上で、「レイシャル・プロファイリングがあったとは判断していない」と説明している。

これに対し、宮下弁護士は「人種や肌の色、出身国など特定の属性に基づいて不利益な効果をもたらすことが人種差別。差別する意図がなくても、不利益な効果が発生すれば人種差別に当たります」と指摘する。

海外にルーツのある人を対象にした差別的な職務質問をなくすために、どうすれば良いのか。

宮下弁護士は「最大の問題は、違法な職務質問だったのか、外国人を『犯罪者予備軍』とみなして人種上の偏りのある職質を行なっていないかを検証するための統計がないこと」だとみる。

「一度きりの調査で終わらせず、職質対象者の属性や職質の理由などを記録すること、国による当事者へのヒアリング、警察内部の研修強化といった警察組織としての対策が必要です」

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警察庁が「不適切・不用意な言動があった」と認定した6件の概要は、以下の通り。

(1)警視庁

職務質問の理由について、外国人が車を運転しているのは珍しいからと説明した

(2)警視庁

職務質問の理由について、ドレッドヘアーでおしゃれな人が薬物を持っていたことがあるためと説明した

(3)神奈川県警

車両の検問時に、「ハーフですか」と質問した

(4)神奈川県警

人身事故の取り扱いの際、氏名にカタカナが入っていたことを理由に外国人と思い込み、在留カードの提示を求めた

(5)大阪府警

職務質問の際、「何人(なにじん)ですか」と質問した

(6)宮城県警

職務質問中に身分証の提示を求めた際、目鼻立ちがはっきりしていて、海外出身者または「ハーフ」の人かと間違えた、と説明した

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“ドレッドヘアー”理由に薬物所持を疑う。人種めぐる職務質問6件、警察庁が調査「差別的な意図ない」

Machi Kunizaki