明治神宮外苑の樹木には、地表面温度上昇を抑える効果があることが、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが実施した調査で明らかになった。
神宮外苑の再開発では、1000本近い樹木が伐採や移植されることになっている。
グリーンピース・ジャパンは、こういった樹木が、周辺の地表面温度や気温に与える影響を調査。その結果、神宮外苑の地表面温度は周辺地域より低いことがわかった。
グリーンピース・ジャパンで気候変動・エネルギーを担当する鈴木かずえ氏は11月2日、東京都庁で記者会見し、気温上昇を抑制するためにも、神宮外苑の樹木保存が重要だと訴えた。
グリーンピース・ジャパンは、神宮外苑の樹木による冷却効果を調べるために、2022年6月と9月に調査を実施した。
6月の調査では、衛星画像を使って神宮外苑と周辺の住宅密集地の地表面温度を測定して比較。その結果、神宮外苑の方が2〜4℃程度低かった。
さらに、代々木公園や新宿御苑などの都内の大きな公園の地表面温度も、周辺地域と比較して約6〜7℃低かった。
また、9月の調査では、赤外線サーモグラフィーを使って神宮外苑内4カ所の表面温度を測定したところ、樹木によって作り出された日陰部分のアスファルトの表面温度は、日向に比べて最大18℃低かった。
グリーンピースは、これらの調査結果から「神宮外苑の樹木が、日陰を作って表面の温度を下げることや、都市の中に涼しいエリアを作っていることがわかった」と説明。
ヒートアイランド現象や気温上昇を緩和するために、既存の樹木を保存すると同時に、新たな緑地をつくるよう求めた。
記者会見に参加した東京都立大学の三上岳彦名誉教授(気候学)によると、大規模な緑地に気温を低下させる効果があることは、過去の調査でも実証されている。
三上氏によると、緑地の温度が低くなる理由は、大きくわけて2つある。
1つは「蒸散効果」と呼ばれる、葉の表面から水分が蒸発する現象で、水分を大気中に放出することで、周辺の気温が上昇するのを和らげる。
もう1つは日差しを遮る「遮蔽効果」だ。木が日陰を作ることで、夏の暑い日中に、道路の表面温度だけでなく気温も下げる。
また、夜になると緑地にたまった冷たい空気が流れ出して周辺の市街地を冷やす「天然のクーラー」の効果もある。
三上氏は、神宮外苑の樹木を伐採して冷却効果が失われれば、周辺の歩行者や屋外で働く人たちに熱中症などの健康被害が起きる危険がある、と語った。
神宮外苑の再開発で伐採される樹木には、樹齢100年以上の歴史的な大木も数多く含まれる。
再開発事業者は、新たに植樹する意向を示しているが、三上氏は「既存の樹木の替わりにはならない」とも指摘する。
「若い木は葉の密度が少なく、日射を遮る効果も、蒸散効果もありません。同じ本数の木を植えるので構わないというのは、詭弁だと思います」
さらに、再開発では高層ビルやホテルの建設が予定されているが、それにより更に気温が上昇する可能性があると話す。
「ビルから出る人工排熱は気温をあげます。伐採で緑の効果がなくなると同時に、建物を作ることで、人工的な熱がさらに増えると思います」
地球温暖化が問題になる中、特に都市部で急速に温度上昇が進んでいることがわかっている。気象庁によると東京では過去100年で3.3℃上昇した。
このヒートアイランド現象を抑える効果があるとして注目されているのが都市部の樹木だ。
それにも関わらず、今回の再開発では、歴史ある大木も含めて1000本近い樹木が伐採や衰退の危機にさらされている。市民からは反対の声が上がっており、見直しを求める署名活動には、11月3日時点で10万8000筆以上が集まっている。
署名活動の発起人である経営コンサルタントのロッシェル・カップさんも、2日の記者会見に参加。
「今回の調査で、神宮外苑の樹木が東京のヒートアイランド化の減少に大きく貢献していることが証明されました。樹木が私たちを守ってくれるなら、私たちが樹木を守らなければなりません。気候変動に関する環境の面からも、計画の見直しが必要です」と訴えた。
グリーンピース・ジャパンは、独立した第3者による追加評価を実施して、健康な樹木が伐採されることを防ぎ、移植などによる損失を最小限にするよう求めている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
神宮外苑の樹木の冷却効果は「気温抑制に欠かせない」伐採で熱中症など健康被害の恐れも指摘【調査結果】