冷戦時代、月は宇宙開発、そして軍事基地の主要なターゲットでした。実際にアメリカ空軍は「月で核兵器を爆発させた場合の影響」について、本格的な調査を行っています。
仮に人類史上最も大きな人工爆発を記録した「ツアーリ・ボンバ」などと同等の100メガトン級の核兵器を月で爆発させた場合、どのような影響があるのでしょうか。海外YouTubeチャンネル「Kurzgesagt」がシュミレーションを行っています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:Kurzgesagt – In a Nutshell ,wikipedia
今回検証する100メガトンの核兵器は史上最強の爆弾の約2倍の威力です。核爆弾の爆発スイッチを押した後、最初の数ミリ秒間は外見からわかる変化はありません。
しかし、爆弾の内部では高爆発が発生し衝撃波が放射性金属のコアに伝わり、圧縮し、臨界に達し、核分裂の連鎖反応を起こしています。そして、第一段階で生じた1億℃のプラズマが第二段階の爆発を誘発します。まるで、星の核のように、原子核が融合するのです。
そして、10ミリ秒後、核兵器は爆発します。
しかし、月での爆発は地球上の爆発とは異なります。なぜなら、月には大気が無いからです。
核兵器が爆発すると、X線と熱光子の閃光が放たれ、静かな熱の波が全方位に放出されます。この爆発が地球であった場合、少なくとも半径50㎞以内のものを焦がし、燃やすでしょう。
一方、月には大気も酸素もないため、まったく燃えません。むしろ、燃えるモノがありません。月の表面は、隕石の衝突で粉々になった珪酸塩岩と金属で形成されています。そして、そこに微量の水が混ざっています。
核兵器が爆発すると、X線が月面の薄い岩石雲を蒸発させ、ダストを生成します。そして、ダストは溶けてガラスのようなモノになり月面に降り注ぎます。もし、約50km以内に宇宙飛行士がいたら丸焦げになることが予想されます。
月での爆発と地球での爆発には、大きな違いがまだあります。地球で核兵器が爆発した場合、火球の圧力に押し出された大気により、強烈な衝撃波が発生します。この衝撃波が建物を粉々にし、大音量で鳴り響くのです。
しかし、月で核兵器が爆発した場合、大気がないため衝撃波は発生しません。そのため、月では不気味な沈黙の中で火球が大きくなっていきます。
これは、安全な距離から見れば神秘的な景色かもしれません。ただし、大気が無いため、強力な放射線がそのまま飛び続けます。その結果、爆発の近くにいた人は致命的な量の放射線を浴びることになります。
さらに、爆発エネルギーの約10分の1が地震として伝わります。月は地球よりもはるかに小さいため、非常に激しい揺れを感じることになります。
揺れの大きさはマグニチュード7程度に匹敵し、月に建設したインフラに深刻なダメージを与えます。もし、月の裏側に人がいたなら、この揺れが爆発によるものだとは気がつかないでしょう。もしかすると、巨大な大きさの小惑星が衝突したかと感じるかもしれません。
爆発が地表に到達すると、1億立方mもの塵や岩石が掘り起こされ、1㎞のクレーターが形成されます。岩盤は粉々に砕け散り、四方八方に飛び散ります。大気がないため、破片を減速させるような抵抗もありません。
その破片は、地球にも降り注ぎます。当然、宇宙飛行士や人工衛星、宇宙ステーションにも衝突し大きな影響を与えます。
また、爆発の後の見た目も全くことなるはずです。地球で核兵器が爆発した場合、火球は熱気球のように上昇し、周囲の冷気を取り込みキノコ雲を形成します。
しかし、月には大気がないため、キノコ雲にはなりません。プラズマが大きくなればなるほど、冷却され、エネルギーが少なくなります。そのため爆発して、しばらくすると視界から消えるはずです。
地球から月で核兵器を爆発させた様子を見ていると、月がほんの一瞬だけ光ったように見えるでしょう。
また、月で核兵器を爆発させても、月の軌道は変わりません。核爆発の威力は大きいかもしれませんが、宇宙はもっと大きいのです。核兵器の爆発程度では、せいぜいクレーターを残すことが限界です。
ただ、月には大量の放射性物質が降り注ぎます。そのため、月面はおそらく汚染されたままになるはずです。しかし、幸いなことに、放射線は宇宙線によって1年程度で自然界のレベルと同程度まで減衰します。
結局のところ、月で核兵器を爆発させても、大きな影響を与えることはないでしょう。しかしそこから発生したチリなどは人工衛星などに被害を及ぼす可能性があるため、月を核兵器の実験場にすることは予算を度外視しても好ましいとはいえません。
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月に〝最強の核ミサイル〟を打ち込むとどうなるのか?
1: 通りすがりのコメンテータ…