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会社を辞め、ほぼ全財産でウクライナ映画の配給権を獲得。粉川なつみさんは「清水の舞台から飛び降りた」

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インタビューを受ける粉川なつみさん(左)と、粉川さんの会社が配給する『THE STOLEN PRINCESS(英題)』のポスターインタビューを受ける粉川なつみさん(左)と、粉川さんの会社が配給する『THE STOLEN PRINCESS(英題)』のポスター

ロシア軍の侵攻に日々、ウクライナの人達は苦しめられている。10月に入ってからは発電所などエネルギー施設への攻撃が相次ぎ、ウクライナのエネルギー相顧問は「国内の発電能力の少なくとも40%が失われた」と明かした。国民生活に大きな打撃となった。国連機関によると10月19日時点で、ヨーロッパの他国に避難した人は全人口の約2割に当たる771万人に上っている

侵攻に苦しむウクライナの人々を勇気づけるために、何か自分にできることはないだろうか。都内の映画配給会社で働いていた粉川(こかわ)なつみさんは、そう思って一念発起した。会社を辞めて独立。個人で配給会社を立ち上げ、貯金をはたいてウクライナのアニメ映画の日本配給権を獲得した。

目指すは吹き替え版の全国上映。10月末からクラウドファンディングを開始した。「ほぼ全財産」を配給権の獲得に充てたという粉川さん。なぜそこまでしてこの映画を上映したいのか。思いを聞いた。

■軍事侵攻を受けてキーウのスタジオに連絡を取ったのがきっかけ

粉川さんは勤務先で、海外アニメの国内上映に関する事業に携わっていた。「まだ日本には知られていないアニメが世界にはたくさんある」と、作品のリサーチを進めていた。ウクライナで制作が進むアニメ映画『MAVKA the forest song(英題)』にも興味を持ち、首都キーウのアニメスタジオ「Animagrad」のことも、この作品で知ったという。

2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始した。首都キーウには連日のように砲撃があり、近郊までロシア軍が迫った。スタジオの安否が気になった粉川さんが数日後、Animagradに連絡したところ、まもなく返信があった。スタッフの中には国外に避難したり、ロシア軍に一時拘束されたりした人もいたが「士気は高く、完成に向けて頑張っています」という内容だった。

やり取りをする中で、軍事侵攻に苦しむウクライナの人々を支援するために、Animagradのアニメ映画を日本で上映できないかと思うようになった。粉川さんの格闘が始まった。先方との交渉の中で、『MAVKA』と同じ監督が、2018年に手がけた『THE STOLEN PRINCESS(英題)』の日本上映のプランが持ち上がった。

■「映画業界にいる私ができる最大の支援はこの映画を配給すること」

ウクライナのアニメ映画『THE STOLEN PRINCESS(英題)』のポスターウクライナのアニメ映画『THE STOLEN PRINCESS(英題)』のポスター

日本のアニメを愛好しているオレ・マラムシュ監督や制作スタジオのスタッフから「日本は特別な国です。もし日本で上映できたら、ウクライナの人にとってすごくうれしいニュースになります」と熱烈なラブコールがあったという。粉川さんは勤務先に掛け合うも、他の作品の上映スケジュールの関係などから断念する結果となった。

そこで、社会人4年目だった粉川さんは思い切った行動に出た。7月に会社を辞めて個人企業「Elles Films」を立ち上げた。自費で日本での配給権を獲得したという。「ほぼ全財産という感じではあるんですけど。清水の舞台から、飛び降りました」と苦笑する。粉川さんは次のように振り返った。

「映画業界にいる私としては『これは何としても日本で上映したい』と思ったんです。金銭的な支援も必要とは思いますが、映画業界にいる私ができる最大の支援はこの映画を配給することなんじゃないかと」

■実現すればウクライナのアニメ映画は日本初上映に。収益はウクライナ政府などに寄付

9月30日からは『THE STOLEN PRINCESS』の日本語吹替版の制作と、2023年の全国上映に向けてクラウドファンディングが始まった。日本ではウクライナのアニメ映画が正式に全国の劇場で公開されたことはなく、実現すれば日本初となるという。

目標金額は1700万円。未達成となった場合でも、上映館を絞るなど公開規模を変えて、できるだけ多くの地域で上映できるようにする考えだ。

映画上映の収益の一部は、制作したアニメスタジオに分配されるほか、ウクライナ政府と危険にさらされている映画製作者の支援団体「ICFR」に5%ずつ寄付するという。

■「真実の愛は全てを乗り越える」というテーマが、現在のウクライナの状況とつながる

2018年の上映当時の地元紙キーウ・ポストによると、『THE STOLEN PRINCESS』は、19世紀の帝政期ロシアの詩人・プーシキンが書いた「ルスラーンとリュドミーラ」のプロットが元になっている。ただし、4年間にわたる制作過程で変更が加わり、あまり原型を留めていないという。

キーウの王女「ミラ」と売れない俳優「ルスラン」。身分が違う二人はお互いの素性を知らぬまま出会って恋に落ちる。悪の魔法使いに誘拐されたミラを救出するため、ルスランは旅に出るというストーリーだ。粉川さんは次のように話す。

「この作品が一番伝えたいテーマは『真実の愛は全てを乗り越える』ということです。どんな困難にも打ち勝つ、愛する人を守るということが、軍事侵攻をうける現在のウクライナの状況と通じるところがあると思っています」

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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
会社を辞め、ほぼ全財産でウクライナ映画の配給権を獲得。粉川なつみさんは「清水の舞台から飛び降りた」

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