誰かが自殺について考えたり話したりした場合、多くの人は緊急の危機だと考えるだろう。
しかし、全ての希死念慮が一つの型にはまるわけではなく、むしろスペクトラムのように幅がある。今すぐ介入が必要な人もいれば、生きる願望はないが自傷や自殺の危険性が低い人もいる。
スペクトラム上にいる誰もがケアや助けを必要としているが、その内容は状況によって異なる。
メンタルヘルス団体「The Trevor Project」のトレーニング・マネージャーであるキーガン・ミラー氏は、希死念慮は「広くさまざまな意味を持つ言葉」だと説明する。
希死念慮は、自殺や死に関する考えや関心、願望が、様々なレベルで存在するといい、「できるだけ多くのタイプの思想を含めるため、曖昧で広範な言葉になっているのです」と述べる。
認定カウンセラーのロバート・ジョンソン氏は、希死念慮の中には、能動的なものと受動的なものがあると話す。能動的な自殺とは、多くの人が一般的に思い描く自殺のことで、危機的状況のもの。もし誰かがこの状況にあるならば、必ず専門家に連絡をとるべきだという。
一方、受動的な希死念慮は、多くの人が時折考える幅広い思考が含まれている。そしてこれは、人々が想像するよりも一般的なことだという。
ここでは、受動的な希死念慮について知っておくべきこと、そしてその対処法を説明する。
ジョンソン氏は、能動的な希死念慮はかなり具体的で、計画や方法を考えているのが通常だという。それは急に計画されることも、時間をかけることもあるという。
受動的な場合はもっと幅が広い。ある人は自傷行為について考えるかもしれないし、ある人はもう生きたくないと思いながら、それを行動に起こす気持ちがないかもしれない。受動的な希死念慮に青写真は特にないが、生きていたくないという気持ちがある。
ミラー氏は「多くの人は受動的な考えに対処しようと思いませんが、それも重要なのです」と言う。
CDC(アメリカ疫病対策予防センター)によると、2020年には推定1220万人の人が真剣に自殺を考えたといい、約320万人が自殺の計画を立て、120万人が自殺未遂をしたという。このデータの多くは自己申告によるものである為、実際の数字はもっと高い可能性があるとミラー氏は話す。
特定のグループに属する人々は、他の人たちよりもリスクが高い。ミラー氏によると、自殺は10歳から24歳の若者の死因で2番目に多く、LGBTQの若者は「その世代の他の若者に比べて4倍も自殺を試みる可能性が高い」という。
またアメリカンインディアン、アラスカ先住民、黒人や他の有色人種も、退役軍人と共にリスクが高まっていると加えた。これは、このグループが危険因子となる差別やハラスメントなどに長期にわたって直面しているからだという。
失業や大きな病気など、人生の困難によって誰もがストレスを経験する。しかしこのストレスが希死念慮につながる場合、その人のストレスに対するベースラインの脆弱性に注意する必要がある、とミラー氏は話す。
ベースラインの脆弱性とは、それが感情的であれ身体的であれ、傷つくリスクがどれだけあるかということ。
ベースラインの脆弱性が低く、相談できる友人や頼れるセラピストなどの対処法があれば、ストレス要因を経験しても危機的状況に陥ることはないだろう。しかし、ベースラインの脆弱性が高く、差別を受けたり家族から拒絶されたりしており、その上に新たなストレスとなる出来事が起きると、危機が限界に達し希死念慮を抱く可能性が高くなる。
つまり、「対処能力が限られている人」にとって、希死念慮はストレスの多い状況やきっかけに対する反応になることもあるという。
どんな希死念慮だろうと、それがどんな頻度で起ころうと、支援を求めることは重要だ。
どんなケースであろうと、「まず第一に、すぐに助けを求めてください」とミラー氏は言い、人によって「助け」の意味は異なると述べた。
友人や家族、メンタルヘルスの専門家、オンライン上で友達に話したり、「いのちの電話」などの相談窓口に連絡したりすることもできる。メンタルヘルスの専門家に相談する際は、それが能動的な考えでも、ただ生きているのが嫌になっただけでも、希死念慮があることを伝えることが大切だ。
またミラー氏は、助けが必要な人の愛する人が警告サインに気づくことの重要性も指摘した。
「希死念慮のある人はときどき、虚しさ、絶望感、罪悪感や羞恥心、精神的・肉体的苦痛を口にしたり、愛する人に迷惑をかけているよう感じている、と言ったりすることがあります」
愛する人たちから距離を置く、アルコールや薬物の使用量増加、別れの挨拶、スピードの出し過ぎなどの危険行為、突然の著しい行動の改善(計画を立てた後の安堵のサインかもしれない)といった兆候があるかもしれない。
どんな状況であっても、希死念慮は危険であり、専門家に相談する必要がある。自殺や希死念慮に関しては、「そこまで危険ではない」という行動はない。どんな人も希死念慮を持ちながら生活する必要はなく、治療によって改善できる。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
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