東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が6月21日、公式報告書を公開。その中で、「大会を間近に控えた時期に起きた組織委員会幹部や関係者の人権に関する言動」について、「日本社会全体の議論を活発化させることになった」などとまとめた。前会長の森喜朗氏の女性蔑視発言に対する評価とみられ、騒動を前向きなものとして総括しようとする組織委の姿勢がうかがえる。
21日に公開された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会公式報告書第1部」の「多様性と調和」について総括する部分では、森氏の発言について「2021年2月12日、森会長はJOC 評議員会におけるジェンダーに関する自身の発言による混乱の責任を取って、辞意を表明した」と記述。
さらに、「大会を間近に控えた時期に起きた組織委員会幹部や関係者の人権に関する言動は、組織委員会がジェンダー平等や多様性と調和の重要さを再認識する契機となっただけでなく、日本社会全体の議論を活発化させることになった」とつづっている。言動の影響を肯定的に紹介しており、森氏の蔑視発言だとすると、あたかも前向きな作用を起こしたかように捉えられている。
森氏の女性蔑視発言とは?経緯を振り返る
森氏は2021年2月3日のJOCの臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」「私どもの組織委員会に女性は7人くらいか。7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」などと発言。女性蔑視・差別だと批判を受け、翌日撤回、謝罪した。
その場にいただれも森氏の発言をとがめず、63人いる評議員で女性が1人だけというジェンダー格差も問題視された。
森氏が発言を撤回した報道陣の囲み取材では、その理由について撤回の理由について「誤解を生んではいけないので」と話し、「不快な思いをした皆さんにお詫びを申し上げたい」などとコメント。進退や蔑視発言について追及する記者に対して声を荒げ、反省した様子はみられなかった。
国際オリンピック委員会(IOC)は幕引きを図ったが、国際人権団体の「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が、森氏の発言を受けて「日本の性差別に金メダル」と非難声明。各国の駐日大使館も「DontBeSilent (沈黙するのはやめよう)」というハッシュタグで、男女平等への支持と連帯を表明。国内外で批判が高まり、森氏は会長を辞任した。
合同懇談会で辞任表明した際には、「不適切な発言でご迷惑をおかけした」などと話したものの、女性蔑視との批判に対して「解釈の仕方だと思う」「多少意図的な報道があった」などと不満を漏らしていた。
森氏は差別・蔑視という言葉を使わなかった一方で、再発防止策などを求める抗議署名を提出した発起人によると、組織委側から面会の場で、森氏の発言について「女性蔑視だったと認識している」という発言があったという。
共同通信によると、2022年6月7日、東京都内で開かれた自民党議員のパーティーで、「女の人はよくしゃべると言っただけだ。本当の話をするので叱られる」など、自身の発言に対する批判について不満を述べたという。
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森喜朗氏の女性蔑視発言が「議論を活発化」?組織委が「幹部の人権に関する言動」を総括