ロシア軍の侵攻を受けるウクライナ東部の要衝マリウポリが、ほぼ陥落したとみられている。3カ月近く激戦が繰り広げられてきたが、アゾフスタリ製鉄所の地下に籠城していたウクライナ兵約1000人が投降したとロシア国防省が5月18日に発表した。
激戦によって徹底的に破壊したマリウポリを、親ロシア派勢力は以前のような工業都市ではなくリゾート地として再開発する意向だが、破壊されたアゾフスタリ製鉄所からは有害物質が海に流出する可能性が指摘されている。
マリウポリ市議会はSNSで「アゾフ海の全ての動植物が絶滅の危機にある」と警告した。
■「マリウポリをリゾート地として再建」と親ロシア派指導者。アゾフスタリ製鉄所は解体して公園に?
ドネツク州を実効支配する親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」の指導者、デニス・プシーリン氏が5月18日、SNS「テレグラム」などで、マリウポリの再建プランを示した。
米誌ニューズウィークとロシア国営「タス通信」によると、プシーリン氏はマリウポリは「リゾート事業に重点を置いて再建される」とした。
市街地の破壊が進んだことで「住宅の6割以上は取り壊して新築する必要がある」という見通しを示した。アゾフスタリ製鉄所の敷地については「新たに公園もしくは工業団地が建設される提案があるが、まだ決定してない」とした。
現地メディア「ウクライナ・プラウダ」によると、マリウポリ市議会は同日のテレグラムで「アゾフスタリ製鉄所を解体して、ウクライナ兵士の英雄的な行為の記憶を消すつもりだ」と非難しているという。
■「アゾフ海の全ての動植物が絶滅の危機にある」
ロシア軍の爆撃や砲撃で市街地が破壊されたことで、工業都市としての再建をロシア側が諦めた可能性がある。苦肉の策での「リゾート地」だったのかもしれないが、うまく行くかは不透明だ。
ウクライナ・プラウダによると、マリウポリ市議会は「アゾフ海の全ての動植物が絶滅の危機にある」とテレグラムで警告しているからだ。
アゾフスタリ製鉄所が破壊されたことで、数万トンの濃縮硫化水素溶液を貯蔵する施設がダメージを受けたことが考えられ、この液体が製鉄所に隣接するアゾフ海に漏れた場合、そこの動植物を一掃する可能性があるという。さらにアゾフ海から、黒海と地中海に流れていく恐れもあるとした。
ナショナル・ジオグラフィックによると、アゾフスタリ製鉄所は旧ソ連時代に建設されたもので老朽化が進んでおり、ロシア軍の侵攻前からマリウポリ市内の深刻な環境汚染が懸念されていた。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
アゾフスタリ製鉄所の破壊で「アゾフ海の全ての動植物が絶滅の危機にある」。マリウポリ市議会が警告