芸能人の“キラキラ子育て”は「みんなの心を窮屈にさせるだけ」。べッキーさんが苦悩を赤裸々に語る理由

撮影:西田香織

2歳と0歳、2人の娘を育てるタレントのベッキーさん。テレビなどで子育ての苦悩を赤裸々に語り、立て続けに話題になっている。

Eテレの育児番組で「子育てを楽しめてない私は母親失格と思い、自分を責めた」などと打ち明けると「私もそうだった」「(テレビの中のベッキーさんと)一緒に泣いた」「心が救われた」といった共感の声がSNSに並んだ。

そんなベッキーさんを訪ねてみると、開口一番「かなりヘトヘトです」と言って迎えてくれた。まだまだ授乳中で、2〜3時間おきに子どもを見る生活だという。

“いつも元気でニコニコ笑顔”のベッキーはそこにはいない。

あるのは、現在進行形の悩みや自己嫌悪を、なんとか言葉にして身体の外に押しだそうとする等身大の姿だった。

育児生活のリアルに始まり、芸能人として弱さをさらけ出す理由、女性の身体への理解を深めようという提案など、ベッキーさんが率直な言葉で語った。

撮影:西田香織

テレビで赤裸々に喋ったら、「抱きしめてあげたい」と言われた

ーー今日はよろしくお願いします。昨年春に2人目の娘さんも誕生されて、毎日お忙しそうですね。

かなりヘトヘトです。子育てと仕事とうまく両立ができていないなって感じですね。“元気キャラ”って思われちゃってるけどそんなことないです。

ーーそうした素直なしんどさを語った、NHK Eテレの子育て番組「すくすくナイト」。大反響でしたね。

すごかったです。一番多かったのは「抱きしめたくなりました」っていう反応。思い出しただけで、もう泣いちゃうけど…。

子育てって一言にいってもケースがみんなバラバラで、教科書や参考書も一つじゃなくて、それぞれ悩みあるしそれぞれ正解がある。

自分の言葉が、今苦しんでいる人の負担になってはいけないという難しさはあって。

そんな中で、思い切って語ったことに対して「言ってくれてありがとう」と言われて本当によかったです。

ーー番組でも、子育ての悩みを溜め込んでしまうと話していましたね。やっぱり悩みや本音って言いにくいものですか。

すごく言いづらいです。頼りづらいですし。「お母さんはこうじゃなくちゃいけない」っていうのがどこか、あるんですよね。頼ればいいって頭ではわかってるのに、頼ったら迷惑がられるだろうなって思ってしまう。

普段以上にセンサーが敏感になって、ブレーキをかけちゃう。で、爆発するって感じです。

ーー感情が溢れちゃうんですね…。

今みたいに涙を流しては“小爆発”をして、耐え切れなくなると激しくわーっと泣いたり、空中に向かって「ああ”ーーー」って叫んだり…。とにかく何かを自分の外に放ちたくて。

頼りたいけど、頼れない。葛藤と自己嫌悪の日々。

ーーベッキーさんが抱えるプレッシャーやしんどい気持ち、夫の片岡(保幸)さんとは話せていますか。

私は本当に恵まれていて、夫が去年、プロ野球のコーチを退任したんですよね。仕事を辞めて結構家にいてくれるので、すごく助けてはくれるんです。それでももっとやって欲しいと思っちゃうことがある。

なのに「十分やってくれてるんだからこれ以上頼めない」っていう葛藤を感じてしまって…。その繰り返しです。

撮影:西田香織

ーー「助けてくれる」という言葉に、大変さが垣間見えてきます。助けたり手伝ったりするものではなく一緒にやるものなのでしょうが、なかなか難しいですね。

(夫が育児をすることに、自分が)駄目なことしてるって思っちゃうんですよね。例えば彼が、子ども2人を連れてお友だち家族の家に行ったりすると、「そこのお母さんは私のことをぐうたらな母親って思うのかな」とか考え込んじゃったり…。

でも、だんだん言えるようになってきましたよ。というかもう言わずにいられなくなって。1人じゃ抱えきれないから。

女性のホルモンバランスのこととか、それによって体調や気分が乱高下することとか、やっぱりどうしても理解できていない部分があるから「お願いだから自分で調べたり、この先生に話を聞いてほしい」と伝えたりしています。

ホルモンバランスの揺らぎはお母さん1人で乗り越えるんじゃなくて、やっぱり2人の子どもを産んだんだから、2人で乗り越えるものだと思うんですよね。

そうやって伝えていくうちに、少しずつ色んなことで動いてくれて感謝しています。

身近な人にうまく頼ることができない孤独

ーーベッキーさんが一番弱音を吐いたり本音を話したりしやすい人って誰なんでしょうか。

話せる人、話せる人、話せる人…。

……(30秒ほどの沈黙)

うーん、悲しいけど結局は、自分に言うしかないかなぁ。

友だちにも「パンクしてて、きつくて毎日泣いてる」とか言うと「何でもっと早く言わないの?」って返されるんですけど、こっちから絶対言えないんですよ。

友だちが子育ての愚痴を話してくれた時に、便乗して言わせてもらうくらいですかね。やっぱり(子どもが)1歳半をこえるまでは“自分との戦い”ですね。まだまだ授乳期だし、しょうがないです。

撮影:西田香織

ーー本当はこんな風でありたいな、というイメージはありますか。

「私は私だし。これでいいよね、オッケー!」って言えるようになりたい。自分の中に正解を作りたいです。今は、自分よりちゃんとできている他人のことを正解だと思っちゃうから。もう自分のことを責めたくないんですよね。

でも、頭ではわかってて、これだけ喋ってるのに、まだまだ全然変われない。本当に情けないです…。

なぜ、ボロボロな自分をありのままに見せるの?

ーー情けなくないです。でも、周囲にもなかなか弱音を吐けないベッキーさんが、テレビをはじめメディアでオープンにお話しできるのはなぜでしょう

一つには、「場」を用意していただいている方が話しやすいっていうのがあります。今日もすごく楽しみだったんですよ。ずっと溜め込んでるから、オフィシャルに喋っていいですよっていう機会をもらえて、すごくありがたい。

それから、私の場合は一時期お休みしていたこともあり、飾らず自然体でいようと思ったのもあります。

でもそれだけじゃなくて、時代の変化として、今はこういうリアルさが求められていると思うんです。

撮影:西田香織

10年前だったら、バラエティーに出る人は「明るいところだけ見せていればいい」「キャラを貫くべし」「芸人は笑わせてナンボ」という空気があった。

けど、今は表も裏も見せて、その上で皆さんに支持してもらえるかだと思うんですね。例えば、芸人さんがメンタルヘルスの不調で休養するといったようなことも、受け止めが変わってきてますよね。

少しずつ、人間には多面性があるわけだし「全てひっくるめて私です」っていう時代になってきたと感じます。

そういう中で、求めていただいているなら、必要としていただけるなら、自分もありのまま出しちゃおうって思うようになりました。それがもしも誰かの役に立ったり、誰かとわかりあうきっかけになれたら、本当に嬉しいですね。

ーー実際、ベッキーさんの発信に、子育て中の方たちからかなりの共感が集まっていますね。

芸能人が美しい子育てを見せすぎだと思うんですよ。表に立つ人の「キラキラ」って、みんなの心を窮屈にさせるだけだと思うし、良くないです(笑)

「今日は手抜きなので、こんな感じで〜す!」っていいながら、おかずが6皿くらいあるインスタ投稿なんて、こっちの首をぎゅっと絞めてきますよね(笑)

「私もうまくいってなくて必死です」「苦しいです」ぐらいの方がいい。テレビで(俳優の)菅野美穂さんが子育ての苦労話をいっぱいされていて、それが面白くて最高で。私も絶対こっち派だなぁと思ったんです。

撮影:西田香織

女性のホルモンバランス「義務教育にしてほしい」

ーーせっかく影響力のあるタレントとして、赤裸々に語っていただいたので、何か世の中に提案したいこと、みんなと一緒に変えていきたいことがあれば教えていただけますか。

とにかく女性のホルモンバランスや身体のことについて、義務教育で全員に伝えて欲しいです。

自分の苦しさの原因の一つに、PMS(月経前症候群)や産後のホルモンバランスの乱れに関する情報が世の中に浸透していないっていうのもあるんです。

例えば、同僚に「すみません今日風邪なんで、少しケアお願いします」とは言えるけど、ホルモンバランスの崩れは気軽に口にしづらい。「恥ずかしいこと」「みんな乗り越えてきたんだから自分で何とかしろ」っていう風潮がまだあると感じます。

ーー女性の身体の問題は「社会の問題」であるはずなのに、個人の問題として処理されがちで、しんどいですよね。

そうそう。もちろん私も、切羽詰まった時に夫に話したりするけど、1対1の関係だと「自分の大変さをアピールしてるって思われないかな」と考えすぎちゃうところもある。仕事でそれを言ったら「何、そんなことまで主張してるの?」っていう空気になる気がして怖い。 

そうじゃなくて、これはみんなの問題だから、男性も含むみんなが若い時から当たり前に知る機会があるべきだと思います。

我が家も娘2人なので、彼女たちがそういう教育を受けた世代として大人になっていってほしいですね。

撮影:西田香織

ーー本当に。いいバトンを渡していきたいですよね。

今日、色々吐き出しちゃったけど、やっぱり根底には圧倒的な感謝があるんです。子どもを授かる、子どもを産める、という状況に恵まれたのは、本当に本当にありがたいことだと思っています。

戦争についてのニュースを見ていると余計に、家族でリビングでのんびりするっていうことが特別なことなんだと、身に染みて思います。

自分の心との戦いはハードだけど、それを上回る感謝を感じながら、ちょっとずつお返ししていけると嬉しいですね。

ーー今日は、現在進行形の心境をお話してくださって、ありがとうございました。

(取材・文:南 麻理江/撮影:西田 香織)

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