いまだ収まらないロシアによるウクライナ侵攻ですが、ロシア軍の当初の勢いには陰りが見えています。対してウクライナ側は強い抵抗を見せており、プーチン大統領としては思い通りに計画が進んでいない状態といっていいでしょう。
これについて、国際情勢などに詳しいジャーナリストのジョニー・ハリス氏が「プーチン大統領がすでに負けたといえる理由」を、3月5日の時点で解説しています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:Johnny Harris ,The Gurdian
ジョニー・ハリス氏は動画の冒頭で、「ウラジーミル・プーチンはすでにこの戦争に負けている」と断言しています。この意見を理解するためには、2つの点を見なければなりません。1つは、侵攻直前のプーチンの発言。そして2つ目に、侵攻後に実際に起こったことです。
侵攻の数日前、プーチン大統領はテレビに出演し、1時間にわたって国民に語りかけました。この演説でプーチン大統領は「なぜウクライナは偽物の国なのか」ということについて話しています。
同氏の話を簡単にまとめると「ウクライナは、ロシアが起源となった国なのにも関わらず、アメリカとヨーロッパに乗っ取られ、凶悪なネオナチが運営している」という内容です。そして「西側諸国は最終的にウクライナをNATOという軍事同盟に参加させ、ロシアを打ち負かそうとしている」と彼は真剣に語っています。
プーチン大統領は以前から「ウクライナはそもそもロシアのものだ」ということを強調しています。しかしそもそも「この土地が誰のものか」という考えは、侵略を正当化するのに十分ではありません。
しかし、ウクライナはロシアが起源ではありません。ウクライナの首都キエフは、モスクワが地図上に現れるずっと以前から繁栄していた都市です。ウクライナには非常に古い文化がありますが、プーチン大統領は近代史をねじ曲げ、ウクライナは実は正当な国ではないという主張を作っただけです。
だからこそ、プーチン大統領は欧米とネオナチを結びつけ、悪役を仕立て上げようとしました。では、2つ目の主張である「ウクライナは、ロシア語を話す人々を絶滅させたいネオナチによって運営されている」ということが事実かどうかを整理してみましょう。
ジョニー・ハリス氏は「ウクライナ国内には、政党と民兵部隊を持つ極右のネオナチの一派が確かに存在する」と断言しています。この民間部隊は過去8年間、ロシアがこれ以上ウクライナ東部の領土を併合しないように撃退するために、実際にウクライナ軍に加わっていたとのこと。
8年前にロシアがクリミア半島の大部分を占拠した際、それに対する抵抗勢力として登場してきたのがこの勢力です。プーチン大統領は、この派閥がウクライナを動かしていると主張しています。しかし実際に2019年のウクライナでの選挙のデータを見ると、極右派閥の得票率はかろうじて2%強で、議会で獲得した議席数はゼロでした。
さらに、ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人で、ホロコーストで亡くなった家族がいるというバックグラウンドから考えても、「ウクライナがネオナチに支配されている」というプーチン大統領の主張には無理があるといっていいでしょう。
このようにプーチン大統領は事実を曲げ、都合のいいように解釈しています。しかし、それでもプーチン大統領の正しく認識していることが一つあります。この2つの国は、文化や言語、歴史を通して交流が深く結びついている、という点です。
ほとんどすべてのロシア人には、友人や親戚、同僚など、ウクライナ出身の人がいます。だからこそ、ウクライナに対する戦争は、ロシア国民は好みません。だからこそ、プーチン大統領はウクライナを乗っ取る侵略戦争ではなく、「この国を本当に支配している悪党たちからウクライナの人々を救う」という名目を掲げるのです。
プーチン大統領が作ったストーリーを整理すると、次の4つに分けられる、とハリス氏は語ります。
1つ目は、ウクライナは本当にロシアのものである。2つ目は、ウクライナはアメリカとヨーロッパ、すなわち欧米に乗っ取られた。3つ目は、欧米がネオナチの傀儡で、ウクライナを支配している。そして4つ目に、NATOと呼ばれる西側軍事同盟は、ウクライナを、打倒ロシアへの橋渡しとして利用しようとしているということ。
これが、プーチン大統領が何年も、何十年もかけて作り上げてきた「正当な理由」なのです。そしてこの理由を掲げ、ロシア軍はウクライナへと侵攻を開始しました。
そして、ロシア軍が戦争を仕掛ければ、ウクライナ人は眠りから覚め、両手を広げて彼を歓迎し、ネオナチの大統領は逃げ出す、それがプーチン大統領のシナリオでした。しかし現在、全世界がウクライナ軍と住民による断固とした抵抗を目の当たりにしています。
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「プーチンは負けた」といえる明確な理由
1: 通りすがりのコメンテータ…