「飛行機出勤OK」Yahoo!のテレワーク制度拡充から考えた、オフィスを離れて働くということ

Yahoo! JAPANが1月12日に発表した、新しい人事制度が話題になっている。

一体、どんな内容なのか。

Yahoo! JAPANによると、今回発表したのは、社員約8000人を対象とし、4月1日から適用されるもの。

これまでは「午前11時までに出社できる範囲」と限定していた居住地の対象を、全国に拡大し、通勤手段に特急や飛行機などを認め、「1日あたり片道6500円」としていた交通費の上限を撤廃することーーなどが柱だ。

一覧にすると、以下の通りだ。

・居住地

(従来)出社指示があった際に午前11時までに出社できる範囲に限定

(今後)日本国内であればどこでも居住できる

・通勤手段

(従来)電車や新幹線、バスのみ

(今後)特急や飛行機、高速バスでの出社も可能に

・交通費の片道上限

(従来)片道6500円/日、15万円/月

(今後)片道上限を撤廃(※月15万円という上限は継続)

・手当の増額

(今後)働く環境を整備するための「どこでもオフィス手当」を1000円増額。毎月最大1万円の補助(どこでもオフィス手当5000円+通信費補助5000円)を支給。

・希望者へのタブレット端末の貸与

(今後)希望する正社員に対し、業務用PCとは別に新たにタブレット端末を貸与。

・懇親会費の補助

(今後)コミュニケーションの活性化を目的に、社員間で行われる懇親会の飲食費用を、1人あたり5000円/月 まで補助。

「オフィス回帰」の動きがある中、なぜ今?

テレワークは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って多くの企業に広まった。

新型コロナの変異株「オミクロン株」による感染も広がっており、収束は見通せない中ではあるが、2021年9月末に緊急事態宣言が全面的に解除されて以降、一部企業で出社を求めるなどの「オフィス回帰」の動きもある。

Yahoo! JAPANは、なぜこのタイミングでテレワークを含む自由な働き方を支援する制度を拡充しようと思ったのか。

広報担当者にたずねると、オミクロン株などを念頭に置いたものではなく、「一番の狙いは、社員がそれぞれのニーズに合わせて働き方を選択できるので、ウェルビーイング(幸福)が向上し、社員のパフォーマンスが最大化されることです。その結果、ユーザーに対してよりよいサービスを提供できることにもつながります」と語った。

回数の制限なく、働く場所を自由に選択できるリモートワーク制度を2020年から導入していたYahoo! JAPAN。

定期的に社員へのアンケートを実施する中で、約9割の社員がリモート環境でも「パフォーマンスへの影響がなかった」、もしくは「向上した」と回答。約8割が現在のオンラインを前提とした職場環境に「満足」していると回答した。

また、2022年1月現在でも約9割の社員がリモートワークで業務をこなしているという。

広報担当者は「(働き方については)正解がないものではありますが、こうしたアンケートからパフォーマンスが低下してないことや、様々なメリットが確認できました」といい、社員の声が後押しになったと明かした。

「オフィスの求心力は捨てがたい」けれど

Yahoo! JAPANの川邊健太郎社長は自身のTwitterで、「経営サイドとしてはオフィスの求心力は捨てがたいものがあります」としつつも、「社員をオフィスに縛り付けるよりかは、社員のウェルビーイングの向上やそこから生じるやる気や創造性を重視する方向に舵を切りました」と今回の制度拡充の狙いを語っている。

川邊健太郎 (@dennotai) on X
経営サイドとしては、オフィスの求心力は捨てがたいものがあります。(なのでGAFAがオフィス勤務にちょいちょい戻そうとするのかなと推察) が、社員をオフィスに縛り付けるよりかは、社員のウェルビーイングの向上やそこから生じるやる気や創造性を重視する方向に舵を切りました。

こうしたYahoo! JAPANの取り組みには、SNS上で多くの声が上がっている。

「テレワークは経営層の判断次第なんだよね…テレワーク辞める話ってだいたい経営層か上司は言い出すから…」

「オフィスに縛り付けるってもう古いと思う」

「選択肢があると言うことがすごく素敵だなと思う」

「もっと日本の企業に広まってほしい」

「飛行機通勤OKで月15万円すごい…」

オフィス回帰か、テレワークか。

もちろんテレワークに置き換えられない業種や職種もあり、一概にどちらが正しいと言えるものではない。

Yahoo! JAPANの広報担当者は、「今回の取り組みは、オンライン(での業務)が正しい、オフィス(での業務)は間違っているとするものではありません。オフィスはニーズに合わせてリニューアルしていますし、顔を合わせて働くことを否定していません。社員共通の働く場はオンライン空間で、体はオフィスでも、どこにあってもいい、とするものです」と語る。

コロナ禍で地方移住。テレワークの日々に思うこと

コロナ禍で東京都内から地方に移住して日々テレワークで働く筆者としては、Yahoo! JAPANをはじめとした柔軟な働き方を支援する制度の拡充は多くの企業に広まってほしいと心から思う。

特に経営陣には、社員に様々な働き方の選択肢を示すことが、働き手の満足度を上げ、多様な人材の確保につながることを理解して、そうした制度を推進してほしい。

その上で、都内から特急電車で1時間以上かかる地方に移住してまもなく1年が経とうとする筆者が感じるのは、テレワークでも業務上の不都合はないものの、オフィスから距離のある場所に暮らす期間が長くなればなるほど、社員同士の横のつながりや人間関係といった心理的な距離も生まれてしまうのではないかという懸念だ。

また、「気軽にオフィスにすぐ行ける」ような距離にいないことにふと不安を感じたり、Yahoo! JAPANのように「社員共通の働く場はオンライン空間」とされていない場合、業務上の制限やハードルを感じたりするような場合もあるのではないかと思う。

そうした社員の精神面にも目を向けることを忘れずに、少しでも多くの企業で社員が自由な働き方が選択できるように制度を拡充していってほしい。

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