2022年は「DEI」を軸に。SDGsの実現目標そのものにも当てはまるこの言葉、ご存じですか?

2022年もよろしくお願いいたします。 

2021年はというと、田原総一朗さんと7党の超党派国会議員による「クオータ制勉強会」を立ち上げて、「衆議院の女性議員が9.9%ってあまりにも少なすぎでは」という状況を改善するべく議論を進めていたところ、秋の衆院選でさらに9.7%に減るという展開に「どないやねん~」と叫びながら年が暮れていきました。 

手元に内閣府の「政治分野における男女共同参画に関する資料」(2021年12月15日)があるのですが、衆議院の女性議員比率9.7%は、190カ国中168位。日本より下位はミクロネシア連邦、パプアニューギニア、バヌアツなど。

この資料によると、スウェーデンはもちろん、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、韓国など諸外国の国会議員に占める女性割合は、どこもこの30年で大幅に上昇しています。なのに日本だけが減少。もはや謎。

衆院選後、12月に開催した「クオータ制勉強会」では、

・選挙運動、国会議員の働き方が、とりわけ子育て世代の女性にとって難しい状況

・そもそも各党、県連など候補者選びをする選挙対策委員が男性ばかりで、女性候補者を増やす発想にならない

・2世、3世が多くて家業としての政治になり、女性、異分子を入れたがらない

・候補者どころか、党の執行部、意思決定機関に女性議員を置かない(立憲は新党首のもと改善との意見) 

といった生々しい意見が上がりました。聞いていると、これでは200年たっても変わらないのではと遠い目になります。

よく聞かれるのですが、私が女性の国会議員を増やしたいと思うのは、フェミニズムとか女性活躍といった視点と少し違うところにあります。

2021年「総合職の新卒採用に占める女性の割合を現状の2、3割から、2024年までに4、5割程度に引き上げる」と宣言した丸紅の柿木真澄社長にインタビューをしたのですが、その理由について柿木社長がこう説明されました。

「我々世代が若い頃、お客様の要望はシンプルで原始的だった。例えば、“衣食住”に関わるもの。家が欲しいとか車が欲しいとか。何時までにどこそこまで届けてほしいとか、注文がシンプルで乱暴というか、男性の粗っぽさのある発想がフィットする世界でした。

ところが、最近はそもそも個人の要求自体がはっきりしなくなってきた。こういう雰囲気のもの、とか、オーダーメイドでその人だけのものといった繊細な要望に変化し、むしろ、こちらから顧客の気持ちを読んで提案させていただくなど、これまでのような均一的な発想では対応しきれなくなってきた。

9割が男性という同質性の組織が新しいビジネスチャンスを開拓するのには限界があると思いました」

コロナ禍でさらに人々の価値観が変化し、ポストコロナの時代を迎える激動期にあって、柿木社長の考え方はまさに日本の政治にも当てはまると思いました。いけいけドンドンの経済成長期は男性による力技の政治が機動的だったのかもしれない。

しかし、女性が働くことが日常になり、様々な環境に生きる生活者への目配り、セイフティネットが求められる時代にあっては、社会の半数を占める女性のみならず、障害者、セクシャルマイノリティも含めた多様な視点が直接国の政策に反映されることで、働き方のデジタル化をはじめ、結果として日本のイノベーションや成長に繋がるのではないかと思ったのです。

「DEI」という言葉を知っていますか?

「DEI」という言葉をご存知でしょうか。最近、民間企業や日本セーリング連盟などが推進を宣言して話題になっています。

「デイ」といって、「Diversity, Equity and Inclusion」の略です。日本語だと「多様性・公平・包括」といった意味になります。

「EQALITY(平等)」と似ている「EQUITY(公平)」という言葉、耳なじみがないかもしれませんが、2つは下記の絵のように微妙に異なります。

「Equality」は全ての人に同じ高さの踏み台を与えること。それに対して「Equity」は全ての人の頭の高さを同じにすることです。 

ジェンダー「平等」というと、なぜ女性ばかりにゲタを履かせるのかという批判が起きてなかなか議論が進みません。

一方、頭の高さを揃える「Equity」は、すべての人が公平に扱われ、同じアクセスの機会が与えられるように、一部のグループの参加を妨げてきた障壁を特定して、排除するよう努めることを意味します。

丸紅の柿木社長が、「女性にゲタを履かせるのではなく、採用環境をフェアにする」と言っていたのは、まさに「Equity」の考え方といえます。「Equity」がビジネスチャンスのブレイクスルーになることに気づき始めた企業はすでに動き出しているのです。 

そしてこれは「2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位やその他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワメント及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する」というSDGsの実現目標そのものにも当てはまります。

2022年は私もこの「DEI」を軸において、本業とともに引き続き「クオータ制勉強会」やUNHCR協会報道ディレクターとして難民問題に取り組んでいけたらと思っています。本年もよろしくお願いいたします。

(文:長野智子 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版) 

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