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「そろそろ結婚?」「いい人いた?」価値観を押し付ける親たち。私たちが年末に帰省したくない理由

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帰省ラッシュが始まり、人であふれかえるJR東京駅の新幹線ホーム=2018年、東京都千代田区

年末年始、2年ぶりの帰省ラッシュが始まった。

オミクロン株が全国で徐々に広がっているものの、新型コロナウイルス全体の感染者数が一時期に比べて減っていることから、新幹線や飛行機の予約は増えている。

家族や友人に久しぶりに会えることを嬉しく思う笑顔が見られる一方で、「実家に帰りたくない」と思う人も少なくない。

20、30代の2人に、帰省したくない思いを聞いた。

「結婚・恋愛至上主義」価値観の押し付けに疲弊

関東在住の会社員、純子さん(32)=仮名=は、コロナ禍になって丸2年、東北地方の実家に帰っていない。

理由を一言で言うのなら、「女なんだから〜」「地元で、結婚するのが当たり前」といった「昔ながらの価値観」を押し付けられるのがしんどいからだ。

18歳の時、大学進学で関東に引っ越してきた。

地元にいた時は近所の人同士が、誰がどの学校に進学して、どんな仕事をして、交際相手や結婚しているかまで把握していた。

同級生の男の子と歩いて帰ると、すぐに噂話として広まった。どこか干渉されている感覚で、今思うと息苦しかった。

それが、関東に出て大きく変わった。人の数や出入りが多いからか、お互いに適度に無関心だと感じる。

もちろん、関東でも周囲からの過干渉で悩む人もいるし、自分自身も今もゼロではない。ただ地元に比べて、自己開示をそこまでしなくて良い生活が楽だと思う。

服や食べ物、遊ぶ場所など、選択肢が多いところも気に入った。

関東に引っ越してきたのも、学びたい分野の大学が地元にはなかったからだ。

「自分の好きなものを選んで生きたい」。そう思い、大学4年のころには地元に戻らないと決断した。

結婚はしないとも決めた。自分に合っていて、幸せになれると思うからだ。

具体的になぜかと問われると、一人の時間が好きとか、夫婦別姓を選べない今の制度下では、男性の姓になる女性が構造的に多く、自分の姓を奪われる感覚があるとか、理由はたくさん出てくる。

ただ「結婚したい人にはみんな、なぜかなんて、あまり聞かないのにな」という思いもある。

「関東で、結婚せずに生きていく」。

気持ちが固まっている純子さんだが、お盆や年末年始に実家に帰ると、親や親戚から必ず掛けられる言葉がある。

「そろそろ結婚か?」、「いい人いた?」、「結婚式、楽しみにしているね」。

「結婚したくないと思っているんです」。

そう伝えると、冗談や強がりだと思われ、呪いのように「女なんだから」、「女の幸せは…」と、結婚を押し付けられる。結婚を望んでいるかどうかは、聞かれたことがない。

「私」の幸せなんて、どうでも良いんだなと感じてしまう。

住む場所についての話題も同じだ。「いつ、地元に帰ってくるんだ?」との問いは正直、耳にたこができる。

両親はもっと歳を重ねた時に、自分に面倒みてほしいと願っている。

力になりたい気持ちはあるが、これまで家事を母に押し付けてきた父による、「家事要員」として自分に家にいてほしいとの思惑も感じる。「女の役割」のイメージを押し付けられるのが嫌だ。

実家に帰るたびに、男兄弟には何も言わない中、女の自分だけに、お茶汲みや兄弟の衣服の洗濯、アイロンがけなどをするよう命じてくるのも、その思いを強くさせる。

「いい歳なのに、結婚もしないで…」といった価値観から、親自身が世間体を気にしているのも感じる。

もう少し歳を重ねれば、親も親戚も、諦めてくれるとは思う。

ただ「行き遅れで、女として価値がない」と思われた上であることも容易に想像できる。

地元に帰るたび、「古い価値観で、サンドバックにされる感覚」がある。

故郷を出てもうすぐ15年。時代に合わせて少しずつ人の価値観は変化していくはずなのに、地元は変わらないと感じてしまう。

「社会には、いろんな価値観や生き方がある。押し付けるのではなく、まずは一人一人の話を聞いてほしい。それぞれの選択を認め合えたら、長期休暇に帰省するのも、もう少し楽なのにな」とも思う。

もう2年、地元には戻っていない。

ただ、親戚の中高生の女の子たちが自分と同じ目に遭っていないか、確認するために帰りたいという気持ちもある。

「そんな時代じゃないですよ。その押し付けが、地元から若い世代を減らすことになるかもしれないですよ」と伝えたい。

「普通の幸せ」が多様化すれば…

大阪市内で会社員をしているゲイの康太さん(27)=仮名=も今回、東京の実家には帰省しないつもりだ。

帰りたくない理由について、なけなしの言葉で言語化するのなら「幸せのロールモデルと疎外感のある自分に向き合わないといけないから」だと思っている。

あえてこの言い方をするが、ゲイとして生きていく覚悟を決めたのは23歳の時だった。

思い返すと中学生の頃から、同級生の男の子に目がいく自分がいた。友人との恋愛話に違和感があったが、「男性が男性を好きになる」という発想がなく、違和感の正体に気づかなかった。

大学生になり、LGBTQに関するニュースが増えた。ゲイの人の記事を読むたびに共通点が多く、「自分もゲイなんだろうな」と確信に近い感覚があった。だがそんな自分を認められなかった。

周りの人はみんな異性と結婚して子どもを育てていたし、当たり前のように、そんな「普通の幸せ」に憧れてきたからだ。

父にはよく、「家族に余裕ある暮らしをさせて、男として一人前。そのためにも勉強して、良い大学に行くんだぞ」と言い聞かされてきた。有言実行する父に感謝もしているからこそ、自分もそうならなければと思い、努力してきた。

付き合えば変わるかもしれないと、告白してくれた女性と交際することもあった。遊びに行くのは楽しかったが、どうしてもそれ以上の感情を持てず、傷つけるだけだと罪悪感を抱いた。ゲイとして生きようと決めた。

ゲイが集うコミュニティスペースやバーに行くようになった。

今まで誰にも言えなかった悩みを打ち明けると、反応はさまざまだったが居場所ができて、ゲイである自分を認められた。

24歳の時、バーで知り合った5歳上の男性と交際を始めた。

長男で、父からよく後継ぎの話をされるため、25歳の時に電話で母に、カミングアウトした。

母が家に遊びにきて、3人でご飯を食べた。帰り際「康太の人生なんだから、康太の思うように生きてね」、「彼氏さん、夢があって、素敵な人だね」と言ってくれ、泣きそうだった。

元気をもらい、その年の年末に、久しぶりに実家に帰省した。だが一気に現実に引き戻される感覚があった。

集まる親戚のほとんどが、妻や夫、子どもを連れてきていた。昔から見ていた「普通の幸せ」の光景が、目の前に広がっていた。

男女の価値観が当たり前で、「康太もあと2、3年したら結婚?」と聞かれる。

「俺にも、長く付き合っているパートナーがいるよ。でも結婚できないし、ここには連れて来られない」。胸の中の叫びを、必死に抑えた。

そして何よりも、愛する人と子どもを授かり育てる親戚の姿が、羨ましくて仕方がなかった。

自分は今、幸せだ。パートナーとは交際して3年以上が経つ。何気ない会話をしながら過ごす日々が、とても心地よい。母にも背中を押してもらえている。

これ以上、何を望むのだろうという思いもある。

帰りたくない理由に、実家に直接的な理由があるわけではない。

ただ、「普通の幸せ」の形に直面すると、その価値観に縛られている自分に気づく。昔から憧れていたその道を選べないと改めて実感し、ただただ苦しくなるのだ。

「普通とされてきた幸せの形。それが多様化すれば、自分みたいに悩む人も減るかもしれない」。

もうすぐ、新年を迎える。来年はもう一歩、生きやすい未来になってほしいと願う。 

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「そろそろ結婚?」「いい人いた?」価値観を押し付ける親たち。私たちが年末に帰省したくない理由

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