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「女子学生だけに奨学金」は逆差別か? ジェンダーギャップ解消に取り組む芝浦工大の本気(学長インタビュー)

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芝浦工業大学は、2022年度の学部入試から100人超の成績優秀な女子入学者へ入学金相当(28万円)を奨学金として給付する。

創立100周年を迎える2027年までに女性教員と学部の女子学生の比率を30%にする目標を掲げている同大学の、理工系の女子学生を増やそうという取り組みの一環だ。

ただ、「28万円」という金額は、私立大学理系学部の初年度納入金額の平均約155万円と比べれば、それほど大きな数字ではない。

「期待しているのは、金銭的なインセンティブよりもメッセージングの効果」と語る山田純学長に話を聞いた。

インタビューに応じる芝浦工業大学学長の山田純さん

<この記事のポイント>

💡「女性教員がいない学校に女子学生は来ない」。退職教員を可能な限り女性に置き換えることから始めた。

💡女子中高生が進路選択で理系を選ばない理由は「お母さん」。なぜ?

💡女子学生だけが利用できる奨学金が「逆差別」ではない理由。 

 

女性教員比率は5年で倍増

ーー2027年までに女性3割という目標を大学が掲げるのは、なぜですか?

まず、芝浦工業大学に女子学生が非常に少なかった。世界的にも理工系の女子を多く輩出しないといけない、という流れもあったし、企業も大企業は特に女性のエンジニアを欲しがっていた。

男性だけのアイデアよりも女性もいる中で生まれるアイデアが非常に重要だし、男女だけではなく、国籍も含めたダイバーシティが非常に重要。多様な人が集まるキャンパスにしていきたいというのもありました。

もう一つ、少子化で受験人口が減っていく中で学生数を確保するには、女子学生を増やさなくてはいけない。女子学生がいれば男子学生が増える、という傾向もあるのです。

そういったところから、まずは宣言することが大事だと思って、2013年に男女共同参画推進室を設置しました。

 

ーー2021年の女性比率は教員が19%、学部生が18・7%で、着実に増えつつあります。特に教員の増え方が大きいですね。

女性教員と女子学生の比率の推移

男女共同参画を推進するにあたって「女性の先生がいないところに女子学生は来ない」ということを強くおっしゃった先生がいたんです。

なるべく女性の教員を採用しようということで、まずは退職教員を可能な限り女性教員に置き換えていく、ということをやりました。書類選考の段階で必ず女性を残すとか、選考メンバーに必ず女性の先生を入れるとか……。

2014年に文科省の「女性研究者研究活動支援事業」に採択され、お茶の水女子大学と連携が進んだことも大きかったと聞いています。「いい女性研究者がいたら紹介してほしい」と声をかけて回るといった地道な取り組みを続けました。

「女性教員を増やしていこう」という空気を、学長以下全員で共有する努力が実ったと思います。

ーー他の大学でも同様の取り組みが始まっています。

最近の採用を見ていますと、なかなか応募してもらえないということが起きていますね。国立大学が積極的に女性を採りにきて、私大のうちがなかなか選んでもらえないという状況があります。

うちの取り組みがかなり早かったので、早めに女性教員を増やせる流れが少しできたのかなと思っています。ライフイベントの最中の女性教員への支援も充実してきています。

 

インタビューに応じる芝浦工業大学の山田純学長

女子の理系進学、ハードルは「お母さん」

ーー女性教員を積極的に採用という動きに対して、他の先生方の反応はどうでしたか?

「女性を増やさなくては」という方向性はみんなで共有していたのですが、その方法については、実は私は少し違った考えを持っていました。卵が先か鶏が先か、という話ですが、私は女子学生を先に増やさないといけないと思っていました。それに、女性の先生がそもそも少ないのに女性を採りなさいと言われても困ります。

私がいた機械工学の女子は多くても120人中5、6人。0人という年もありました。これでいいのか?という思いが強く、オープンキャンパスでは参加した女子高生を引っ張ってきて女子学生と女性教員にお茶とお菓子を出しながら話をする、というようなこともやってもらいました。

男子ばかりというイメージがある工学部に入って楽しく学生生活が送れるのか不安に思う受験生に、ロールモデルを増やすというのは大切だと思っています。

 

ーー学部入学者の女性比率は、工学部で15%、理学部で28%。15歳の男女で理数系の学力にはほとんど差がないのに、女子は中学高校の「文理選択」の段階で理系から離れてしまうという実態があります。何がハードルになっていると感じていますか?

「お母さん」です。

女子校で日立やホンダの女性社員に出前講義などをしてもらうと、生徒ーー特に偏差値の高い女子校の生徒ーーは、すごく食いつきがいいんです。それでも進路選択に結びつかない。「そんなところ(工学部)に行ってどうするの?」と言われることもあるそうです。高校1年くらいで進路を決める時に、母親からそう言われたらそこでおしまい。親の不安がそのまま伝わって選ばれません。

ーーなぜ「お母さん」なのでしょうか?

女子高校生が進路について相談する相手は、9割近くが「母親」というデータがあります。

アドバイスをするお母さんが、多分工学部を卒業した後のキャリアパスが見えていないのだと思います。母親自身が文系出身だとより娘に理系を勧めないという悪循環もあると思います。ただ、実際には大手企業ほど理工系の女子学生の採用に力を入れているし、女性が働きやすい職場環境も整ってきています。

生徒よりも保護者へのアプローチが、非常に課題だと感じています。

STEM分野における女性のジェンダーギャップ

「入学金相当の奨学金」の効果は? 

ーー家庭教育や学校教育の中でのすり込みの影響はとても大きいと思います。どう変えていけばいいのでしょうか?

今は変化の過渡期。大学教育の出口である企業側にもダイバーシティが広がっていますし、政治の世界でも閣僚に女性がどれくらいいるのか、が毎回ニュースになる。社会はそういう方向に動いているので、その変化を少しでも早められるような取り組みをしていくべきだと思います。

 

ーー教員の募集要項には「選考において評価が同等と認められる場合は、積極的に女性を採用」と表記されているそうですね。こうしたアファーマティブアクションは素晴らしいと思いますが、「逆差別」という反論はありませんか?

「積極的に女性を採用」と打ち出している学校はうちだけではありませんが、入試に女子枠を設けることなどが逆差別にならないか、という点は議論しました。

先に取り組みを始めていた大学や弁護士にもヒアリングを行い、これだけのギャップがある状況を積極的に是正していくための措置ということであれば、逆差別にはならないという判断です。

 

ーー女子学生だけに奨学金を設けるというのもアファーマティブアクションですね。ただ、28万円(入学金相当)という金額は少し中途半端なようにも感じます。どれくらいの効果が期待できますか?

正直なところ、金額的に大きなインセンティブにはならないんじゃないかと思っていますし、議論の中でもその話は出ました。ただ、本学が女子学生を積極的に求めているという姿勢を示せるだろう、というメッセージの部分で効果を期待しています。

結局のところ、学長は経営のトップではありません。女性教員や女子学生を増やそうという私たちの動きを受けて、お金を出そうと決めたのは法人の理事長。OB会からも金銭的な協力をいただいています。

2017年度から共学化した附属高校に続き、21年度からは附属中学でも女子生徒を受け入れ、高大連携のSTEAM教育を発展させています。「工学系の女性を増やしていくことは大事だ」という我々の認識は、そこまで来ていると思っていただきたいです。

【取材:中村かさね、吉田遥 撮影:中田真弥】

身近な話題からSDGsを考える「ハフライブ」。10月のテーマは「STEM分野の女性を増やすために何ができる?」。Waffle Co-Founderの斎藤明日美さんとタレントのSHELLYさんを迎え、話し合います。

<番組概要>

配信日時:10月11日(月)夜9時~

配信URL: YouTube
https://youtu.be/va5fQHiSVJw

配信URL: Twitter(ハフポストSDGsアカウントのトップから)
https://twitter.com/i/broadcasts/1ypKdEboEEpGW
(番組は無料です。時間になったら自動的に番組がはじまります)

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Source: ハフィントンポスト
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