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再エネと原発にどう向き合うべきか。“再エネ後進国・日本“に今こそ必要な議論とは。

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「石炭火力発電への依存度が高く、再エネに消極的」

電力の約7割を石炭や天然ガスなどの火力発電でまかなっている日本。脱炭素に向かう国際社会から、このような批判を受けています。

各国の再生可能エネルギー比率を比べてみると、ドイツでは45.3%、イギリスは44.5%に対し、日本は20.9%と遅れています。さらに欧州各国は石炭火力発電をゼロにする(フェードアウト)目標年を設定していますが、日本は設定していません。

各国の「再生可能エネルギー」比率

こうした日本の遅れに対する指摘には、次のような反論もあります。

「欧州は地理条件が日本と異なる上に、国同士が陸続きのため各国間で電気が融通できる。日本と比べても意味がない」
「資源も土地も限られている日本では、再エネ100%は不可能だ」

しかし、実際のところ日本政府は2050年までに脱炭素、カーボンニュートラルの実現を宣言しています。私たちはその目標に向け、否が応でも動かなくてはなりません。そのためにまず何を知り、議論しなければならないのか。ボトルネックは何で、どんな社会的システムチェンジが必要なのか。

再エネ電力を販売する新電力会社「みんな電力株式会社」の専務取締役の三宅成也さん、15年以上に渡って政府や企業に脱炭素を訴えてきた国際NGO「世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)」の小西雅子さん、Z世代でユーグレナの初代CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者 )の小澤杏子さん3人と、ハフライブで考えました。

<目次>
「再エネは安定供給が難しい」って本当?
再エネは本当に持続可能?太陽光発電の是非
原発と国民感情。どう考えればいいのか
電気は目に見えないものだけど「選べる」

「再エネは安定供給が難しい」って本当?

ーーWWFジャパンは、「2050年に日本でも再生可能エネルギー100%を実現できる」というシナリオを公表しています。「再エネは安定供給に不安がある」などの意見もありますが、いかがですか?

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小西
「再エネは不安定」という認識こそが、日本の再エネ導入の遅れを示しています。

再エネは不安定なのではなく「変動的」なのです。電力というのは「需要」も時間帯や季節によって「変動的」ですので、海外では太陽光や風力の発電量を高度な天気予報を活用して予測し、需要と供給を調整しています。

小澤
日本の再エネに対する認識が、欧州と比べて「遅れている」というのはその通りだなと思いつつ、日本全体の意識を変えるのはなかなか難しいことですよね。まずはシステムを変えていき、そこに人の意識がついてくる形が理想だなと思います。

小西
そうですよね。システムの話をするときに、「欧州は国家間で電気が融通しあえるから」ということもよく言われます。そこで見ていただきたいのが図2です。再エネの導入には6段階あり、日本は段階2にいます。今の段階では、日本は既存のシステムを最大限活かすことで、再エネを40〜50%まで引き上げても、十分安定した電力供給が可能なんです。

例えば九州、四国、関西など地域間の送電網をもっと活かして、欧州のようにもしもの時に電気を融通し合うこともできます。

蓄電池や水素発電などの新技術導入が求められるのは段階4以降の話で、2030年に向けての議論においては、まだ早い議題です。

図2:変動制再エネ統合の6段階。IEAの報告書を元に京都大学大学院の安田陽特任教授が作成

再エネは本当に持続可能?太陽光発電の是非

ーー日本では再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電が多いですよね。政府はこれからさらに増やしていく方針です。

小澤
同級生と話していると、「日本は土地がないから太陽光発電はこれ以上無理なんじゃないか」という人もいます。私は日本にもまだポテンシャルはあると思いますが、それが伝わりきっていないのが課題だと考えています。

また、今後太陽光発電を増やしていくと、太陽光パネルの設置をめぐる森林破壊や環境汚染などが発生する可能性もあるのではないかと心配しています。

三宅
確かに森林伐採をしたり、地域住民とトラブルを起こす事業者もいます。一方で、ちゃんと地球環境に配慮した発電所もあります。

太陽光パネル設置のルールづくりが必要であると同時に、電気を使う皆さんが、どんな発電所で発電された電気なのか確認して選ぶことも重要だと思います。

みんな電力では、自分が使っている電気がどこでどのように作られたものなのか「見える化」する「P2P電力トラッキングシステム」を活用するなど、ちゃんと環境に配慮した発電所にお金が流れる仕組み作りをしています。

小西
「日本は土地が狭い」という指摘については、森林破壊をしなくても、住宅の屋根や使われていない耕作放棄地、さらに建物の壁や側面など、太陽光パネルが設置できるポテンシャルはまだまだあります。

原発と国民感情。どう考えればいいのか

小澤
電力の話でもう一つ気になるのが、原子力発電についてです。

将来的には原発に頼らない、というのはみなさん共通していると思いますが、一方であと数十年で脱炭素を目指すスピード感が必要な今の段階では、現実的に考えて原発は必要なのではないかと思いますが、いかがですか?

小西
WWFジャパンのシナリオでは、2040年までには原発をゼロにできるとみていますが、その過程においては、今ある原発を可能な範囲で使って、再エネが十分導入されるまでの時間稼ぎをする必要があると考えています。

ただ、現在再稼働できている原発は10基以下、電力に占める割合にして6%という現実も見据えないといけません。政府が第6次エネルギー基本計画で掲げる「原発を20~22%」にするためにはさらに原発を再稼働する必要がありますが、国民感情からして難しいとみています。

小澤
まさに「国民感情」が肝だと考えています。

「原発を止めるか動かすか」もそうですし、「再エネを使うか使わないか」についても国民感情のぐらつきがある。そんな中で国民の間で対話を深めていくには、どのような方法があるのでしょうか。

小西
最近では地球温暖化対策推進法が改正され、環境省が「再エネ促進区域」の新制度に取り組み始めました。自治体が地域住民と話し合った上で「環境や地域へ配慮する事項」と「再エネ促進地域」を定める仕組みです。

こういった機会を通じて理解を深めていけるのではないかと思います。火力発電にしろ、原発にしろ、再エネにしろ、完璧な電源はありません。だからこそ、将来のために何を選ぶのか、みんなで考える必要があります。

ーー原発については福島第一原発事故以降、大規模な自然災害発生の可能性を考慮した新規制基準が設定されました。三宅さんは前職で関西電力の原子力担当をされていましたが、日本における原発の立ち位置をどう見ていらっしゃいますか。

三宅
私は2007年まで関電の原発担当でしたが、今となっては、原発は国民感情を一旦脇に置いておいたとしても「頼りたくても頼れない」ものになりました。

理由は使用済み燃料が処理できないことです。現在、使用済み核燃料の再処理場は青森県の「六ヶ所再処理工場」の一つだけですが、審査に時間がかかるなどして未だに完成しておらず、動かせていない状況です。そのため今動いている原子力発電所内に使用済み核燃料を保管しているのですが、あと5年もすれば空き容量の80%を越えてしまう原発が多いとの試算も出ています。

じゃあどうするのか。2050年脱炭素を掲げる中で代わりにどのエネルギーを使うかといえば、再生可能エネルギーしかない状況だと考えています。

ーー思えば、10年前の3.11直後は、脱原発派にしろ推進派にしろ、もっと原発について議論があったり、国会でも質問がたくさんされていました。今はどうでしょうか?どこか原発への関心が「薄れて」行ってしまっている気がします。原発を廃炉するにしろ、再稼働するにしろ、必要な情報がきちんと開示され、国民全体で合意形成をしていくことが大事ですね。

電気は目に見えないものだけど「選べる」

 ーー2050年までに脱炭素を目指すために、日本にはどのようなシステムチェンジが必要でしょうか?また、私たちひとり一人にできることはなんでしょうか?

三宅
日本で再エネの導入が遅れた原因の一つが、電力業界の「変化の遅さ」だと思います。

例えばドイツでは、火力発電を分社化して縮小していき、再エネに投資を回す、といったような、電力会社自体のあり方が経営判断によって変化しています。日本の地域の大手電力会社も変化しなければいけないと分かっていると思いますし、少しずつ変わっていますが、スピードが遅い。

これからは、「エネルギーの民主化」が必要だと思っています。これまで電気は「見えない誰かが発電して届ける」もので、その料金も「無意識に」払っていたと思います。そのお金がどこに行っているのかも分からない、ブラックボックスと化していました。しかし、2016年に電力が全面自由化し、私たちは電力も自分で選べるようになっています。もっと電力にまつわるお金の流れを見える化して、自分が選んだ発電事業者にお金が払える仕組みづくりがもっと広がる必要があると思います。

小西
誰もがそうだと思いますが、既存のやり方を変えるというのは一番難しいですよね。

脱炭素は「産業革命」だと思います。雇用の問題もありますし、産業構造そのものを変える必要がある業界もあります。重要なのは、社会の変化を見据えて旧産業から新産業へ雇用や人材をシフトしていくこと。例えば東電と中部電力の合弁会社であるJERAは、元々火力発電の技術者しかいなかったところから、洋上風力発電の技術を学びたい人を社内で募集し、台湾の洋上風力発電のプロジェクトに参加させています。学び続ける意欲も大事ですよね。

また、電気を使う側である企業や個人も再エネの電気プランに切り替えていくことも大事です。再エネの需要が増えれば、「再エネって売れるんだ」というシグナルを電力会社側に送ることができます。最近では企業の事業活動で使うエネルギーを再エネ100%にする国際的な企業連合「RE100」へ加盟する日本企業も増えています。

小澤
私はユーグレナのCFOだった時、社内で再エネ100%を提言したことがあります。企業がどこからエネルギーを仕入れて、どれくらい電力が必要なのか調べていくうちに、地理条件だったり契約面だったり、いくつもハードルがあることを知りました。

実際に再エネ100%へ向けて努力する企業は素晴らしいと思いますし、今はまだできていない企業も、まだ形になっていないだけで、中で努力している企業が増えているのではないかと思っています。

同年代の人にぜひ伝えたい「私たちができること」は、小さな変化に目を向け続けること、そして疑問を持ち続けることです。エネルギーの問題も環境問題も、とても大きな問題で一見遠い話に聞こえます。だからこそ、「自分だったらどうする?」と自分ゴト化して考えることで、議論を深めるきっかけになると思います。

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Source: ハフィントンポスト
再エネと原発にどう向き合うべきか。“再エネ後進国・日本“に今こそ必要な議論とは。

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