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ネット中傷やデマ対策の“盲点”、Amazonレビューが温床に。識者から「透明化」求める声

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Amazonレビューで、中傷やデマが放置されるケースが後を絶たない

(※この記事には、インタビュー対象者が実際に受けた誹謗中傷の言葉を掲載しています)

「醜い生き方」

「どう育ったらこうなるのか」

世界最大のネット通販「Amazon」の書籍商品のレビュー欄で、著者の人格を攻撃したり、デマを流したりする書き込みが問題になっている。Amazon社は、ガイドライン違反の書き込みへの対策を取っているものの、実際には著者への嫌がらせ目的とみられる投稿が放置されるケースも多い。

SNSでの誹謗中傷が問題視される一方で、AmazonのようなECプラットフォームはネット上の誹謗中傷やデマ対策の「盲点」になっていると、慶應大学法科大学院の山本龍彦教授は指摘する。

被害の実態や課題を取材した。

 

編集者「レビューではなく暴言」

「私生活を切り売りして下品」

「小学生みたいな文章」

書籍編集に約15年間携わる東京都の編集者Aさんは、これまで担当した書籍のAmazonレビューで、著者の人格や能力を否定したり、個人攻撃したりする数々のコメントを見てきた。

「ショックで作品を書くのが怖くなった、という著者からの相談を日常的に受けます。作品に対する正当な批評なら良いのですが、具体的な根拠を全く示さずストレスのはけ口のように書き散らしている書き込みは多い。レビューではなくただの暴言といえるものもあります」 

著者をおとしめる内容のレビューも目立つ

一方で、Aさんは作品への批評と、作者に対する人格攻撃の「線引き」の難しさもあると指摘する。

「誰が見ても明らかな差別やヘイト、という投稿はむしろほとんどありません。『文章(作品)への批評だ』と主張しながらも、実際には著者をおとしめる目的で人格攻撃ともいえるような内容を書き込む。そうしたレビューの多くは容認されて、削除されずに残り続けています」

悪質な書き込みの矛先は、著者に対してだけではない。

Aさんによると、「誤植がいくつもある。校閲が機能していない出版社なのか」といった、事実と異なるレビューを投稿されたこともあった。再度確認したが、誤植は一つも見つからなかったという。

Amazon商品の各レビューには「役に立った」ボタンがあり、ユーザーは有用なコメントだと判断したら、内容の真偽にかかわらずその投稿への「支持」をクリックで表明することができる。

「間違った情報でも、『役に立った』がたくさん集まってしまえば見ている人はそれを真実だと信じますよね。営業妨害ですし本当に困っています」(Aさん)

 

「デマが真実のように広まる」

コラムニストの伊是名夏子さんも、Amazonレビューで中傷投稿の被害にあった著者の一人だ。

車椅子ユーザーの伊是名さんは4月、「JRで車いすは乗車拒否されました」と題するブログを公開。鉄道会社の不十分な合理的配慮の問題を提起する内容だったが、ネット上で「わがままだ」などの批判が広がった。その直後から、伊是名さんの著書のAmazonレビューには、デマや個人攻撃の書き込みがあふれた。

「最低な生き方」

「ヘルパー虚偽申請」

「どう育ったらこうなるのか」

伊是名さんは、「本には書いていないことが、書いてあるかのようにレビューで書き込まれた上、ヘルパー虚偽申請などのデマが真実のように広まっていることがとてもショックでした」と打ち明ける。

伊是名さんは、障害者自立支援制度に基づきヘルパーによる生活支援のサービスを受けている。だが、レビューには「ヘルパー虚偽申請」「ヘルパー申請時の上手な嘘のつき方」などと事実ではない情報を書き込まれ、多くの「役に立った」ボタンが押された。

伊是名夏子さんの著作のAmazonレビューに投稿されたコメント(画像の一部を編集しています)

Amazonにデマを削除依頼 ⇒ 対応されず

デマなどの不適切なレビューが投稿されないよう、Amazonはユーザーに対してガイドラインを示している

この中では、レビューにおいて「虚偽の情報や誤解を招く内容、不確かな内容」の記載を禁止している。違反した場合、利用制限や投稿の削除、アカウントの利用停止などを行い、法的措置を取ることもあるとしている。

さらに、誹謗中傷、嫌がらせのほか、人種や性的指向、障害に対する憎悪や偏見を表現することも禁止している。

また、レビューとして機能するように、投稿する内容は「商品に関連したものである必要がある」と定めている。

しかし実際にはAmazonで書籍を購入していなくても投稿でき、本の内容に一切関係しないレビューも掲載されている。

Amazonは、こうしたガイドラインに違反する書き込みをどう覚知しているのか?

Amazon Japanは、ハフポスト日本版の取材にメールで回答した。

「優れた機械学習のツールや専門の担当者により、世界で週1000万件以上の投稿を分析し、問題のあるレビューを掲載前に阻止するよう努めております」と説明。「掲載済みのレビューをモニタリングし、問題を確認した場合は速やかに対処しています」としている。

ユーザーによるチェック機能もある。ガイドライン違反とみられる投稿を見つけた場合、ユーザーは「違反を報告」のボタンをクリックしてAmazon側に通報する。同社は、報告を踏まえて調査を行い、「適切な対処をいたします」と強調する。

だが、実際にはこうした対策が行き届いているとは言い難い。

Amazonは、違反報告や削除の件数を公開していない

前出の編集者Aさんは、「誤植がいくつもある」というコメントが虚偽であることを理由にAmazonに削除を求めたが、対応されなかったという。

伊是名さんも、出版社を通じて、デマなど複数のレビューの削除をAmazonに依頼した。数カ月以内にいくつかは削除されたものの、「ヘルパー不正受給」という誤った情報や、「醜い生き方」などの本の内容ではなく人格を否定するレビューは残ったままだ。

削除された時期や理由、削除されなかった理由の説明はAmazonから受けていないという。

削除されなかったこれらのレビューは、嫌がらせや虚偽の情報を禁じるガイドライン違反に当たる可能性があるが、Amazon側は取材に「個別案件の対応に関しては詳細を答えられない」として削除しない理由を明かさなかった。

Aさんは、「せめて削除しないと判断した理由を説明してほしい」と訴える。

「『中傷レビューは人を傷つける危害になり得る』という警告が表示されるなど、悪質な投稿を未然に防ぐ機能があったら良いと思います」(Aさん)

 

違反報告と削除の件数は非公開

Amazonレビューの中傷やデマをめぐっては、「件数が膨大すぎるので全部に対応するのは難しいのではないか」という意見もある。しかし、件数が多いのか少ないのかも含めて、情報の透明性には課題がある。

Amazonは、レビューをめぐる年間の違反報告件数や、削除件数を公開していないのだ。

これでは、同社が表向きに説明している通り、ユーザーから違反報告を受けてきちんと対応しているのかは不透明だ。

プラットフォーマーに対して情報開示や運営の公正性を求める「デジタルプラットフォーム取引透明化法」で、Amazonは規制対象の事業者に含まれているが、同法はガイドライン違反で削除されたレビューの件数を開示する義務は定めていない。

総務省などが入る中央合同庁舎第2号館=東京都千代田区霞が関

ECサイト、中傷対策の「盲点」に

国も、ネット上の誹謗中傷対策に動き始めているが、AmazonなどのECサイトへの対応は遅れている。 

総務省の「プラットフォームサービスに関する研究会」では、ネット上の誹謗中傷対策をめぐって、TwitterやFacebook、LINEなどへのヒアリングが行われた。

研究会の中間とりまとめ案には、「透明性・アカウンタビリティ確保が図られていない事業者に関しては、特にそれらを確保する取り組みを進めることが強く求められる。総務省はモニタリングと検証評価を継続的に行っていくことが必要」と盛り込まれた。

だが、ヒアリングの対象にAmazonは含まれていない。なぜか。

同省は、「AmazonなどのECプラットフォームでも誹謗中傷の課題があることは認識している」と強調した。一方で、「今回はコミュニケーションを行うためのプラットフォームを設置している事業者をヒアリングの対象にした」と説明する。

Amazonのような商品売買がサービスの主であるプラットフォームは、ネット上の中傷やデマ対策の「盲点」になっている。

ネットの誹謗中傷に詳しい慶應大学法科大学院の山本龍彦教授(憲法学)は、「他のSNSのプラットフォームと同様に、Amazonレビューにも表現空間としての機能があるにもかかわらず、それが十分に認識されていない。あくまで“ショッピングモール”として捉えられている」と指摘する。

山本龍彦・慶應大学法科大学院教授

Amazonの場合は、中傷する書き込みが精神的な苦痛を与えるだけでなく、商品の評価を不当に下げて経済的な利益を損なわせることもできるため、著者を二重に攻撃しかねない」(山本教授)

 

「国は透明化を求めるべき」

著者を中傷したり、デマを流したりする悪質なレビュー。プラットフォーマーはどう責任を果たすべきなのか。

山本教授は、「レビューが多くのユーザーの消費行動に影響を与え得ることから、有害な投稿への早急な対処が求められる」として、人工知能(AI)による監視の強化も必要という。

一方で、「AIの場合は問題のないレビューまでも過剰に削除してしまう恐れがあるため、専用窓口を設けるなど、ユーザーによる異議申し立ての仕組みも整えるべきです」と強調する。

国が担うべき役割について、山本教授は「Amazon側に透明化を求めていくこと」を提案する。

「違反報告の件数や削除件数といったデータのほか、表示されるレビューの順位の基準を公表するよう、事業者に要求していくことが望ましい。表現の自由が関わるため慎重に進めるべきですが、データ公表の要請にも応じず対策を怠っている場合は、これを義務付ける立法措置も検討する必要があるでしょう」

国連で2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されて以来、国だけでなく企業も人権保護への責任があるという認識が広まってきている。

Amazonは、レビュー欄における「人権問題」にどう向き合うのか。巨大プラットフォーマーとしての責任と姿勢が問われている。

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)

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Source: ハフィントンポスト
ネット中傷やデマ対策の“盲点”、Amazonレビューが温床に。識者から「透明化」求める声

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