フィンランドの都市ラハティは「欧州グリーン首都賞2021」も受賞したサステナブルシティだ。2050年までに廃棄物ゼロの循環型経済都市を目指しているラハティはこのほど、地元のビール醸造所「ANT BREW」と連携して地域循環型のクラフトビールを開発した。新たなビールは、道端の雑草や野生のハーブ、パンや果物などの食品廃棄物、さらに住民を悩ませているという公園のガチョウの糞までも活用して造られる。「ウェイスト・フリー・サーキュラー・エコノミー」「ワイルド・ハーブ#1」など7種類の期間限定サーキュラービールがこの夏、順次発売される。(翻訳編集=サステナブル・ブランド ジャパン)
首都ヘルシンキから北東に約100キロ、ヴェシヤルヴィ湖の南側の湾に位置するラハティには約12万人が暮らす。世界のほかの都市と同様に、第二次世界大戦後は急速に工業化が進み環境問題を抱えたラハティだったが、現在、2025年までにカーボンニュートラルを、2050年までに廃棄物ゼロの循環型経済都市を目指し、市民参加型の都市づくりを進める。すでに家庭ゴミの99%がリサイクルされており、2019年には石炭火力発電の使用をやめた。暖房にはリサイクル燃料と地元の認証木材が使われているという。ラハティでは、交通手段も徒歩や自転車、スキー、公共交通機関など持続可能な方法をとることが推奨されている。
クラフトビールのシリーズ名は、廃棄物の可能性(ポテンシャル)を追求して造られたビールを意味する「Wasted Potential(ウェイステッド・ポテンシャル)」。ガチョウの糞を利用することで、すべての廃棄物はそこで終わりではなくさらに利用可能なのだと示すことにもつながる。公園から回収するという糞は食品の安全性に配慮した方法で麦芽を燻すために使われ、「グース・プープ」と名付けられたユニークなスタウトビールに仕上がっているという。ラハティ市は、公園がきれいになる上に、夏季限定のビールは公園でのピクニックのお供に最適でまさに「一石二鳥」の解決策だと推奨する。
麦芽を燻製する過程でガチョウの糞を使うこのスタウトビールは、夏の終わりに発売される予定だ。第一弾は先月発売された循環型経済(サーキュラーエコノミー)に着想を得たベルジャンスタイルのビール。地元の市場で出たジュースの搾りかすのオレンジの皮や、賞味期限を過ぎたザクロとイチヂクのピューレを使って醸造された。このほかこれから発売される予定のビールには、コケ科の一種のハナゴケとエイランタイ(アイスランドゴケ)を使った酸味のあるベルリナー・ヴァイセ(ベルリンの白ビール)、タンポポの花と葉、ローストした根を使ったヴィットビール、ローズマリーやタイム、レモンバーベナなどのハーブを使った酸味のあるゴーゼビールなどがある。
ラハティ市の持続可能な取り組みを推進する「ラハティ・ヨーロピアン・グリーン・キャピタル(LAHTI – EUROPEAN GREEN CAPITAL)」の広報部長、サラ・ピスパネン氏は「持続可能な未来には、資源の有効利用と革新的なリサイクル方法が必要だ。ラハティには有名な醸造所がいくつかある。この夏、地元で造られたビールを片手に、ラハティの自然環境を祝福できることはこれ以上ない素晴らしいこと」と話している。
ビール醸造所「ANT BREW」のカリ・プットネン氏は「今回のシリーズは、ビールをきっかけに、ビール愛飲家が食品の廃棄、廃棄物の利用、都市農業(アーバンファーミング)、地域食材、野生の食材について話し合う重要な機会をつくろうというものだ。ラハティ・ヨーロピアン・グリーン・キャピタルとの連携は素晴らしいこと。われわれは新たな素材を使った醸造方法を常に追求しており、既成概念にとらわれることなく物事を考えることを恐れない」と語っている。
「ラハティにとって重要な環境と循環型経済の話をおもしろく楽しい方法で議論したいと考えている。環境に配慮し、持続可能な消費につながる解決策を一緒になって生み出していきたい」(ピスパネン氏)
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Source: ハフィントンポスト
フィンランド・ラハティ市、「新たな」クラフトビール開発。ダチョウの糞など活用