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「お前程度の容姿の女の俳優は腐るほどいる」…。表現の現場で起きる、深刻なハラスメントの実態

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記者会見の様子

アート、演劇、映画、音楽業界など、表現に関わる仕事場でのハラスメント被害を調べた「表現の現場調査団」によるアンケート結果が公開された。

回答者1449人のうち、8割以上がハラスメントを受けた経験が「ある」と回答。被害の具体例には性行為の強要なども含まれ、表現の現場での深刻なハラスメント被害の実態が浮き彫りとなった。

 

アンケート答えた人の8割が「ハラスメント経験あり」

調査を行ったのは、アーティストや作家でつくる表現の現場調査団

2020年12月から21年1月にかけて、表現にかかわる活動・仕事をしている人を対象としたインターネット調査を実施した。

アンケートには、アート・美術、演劇、映像、ジャーナリズム、写真業界などに携わる1449人が回答。雇用形態はフリーランスと答えた人が56%で、過半数を占めた。回答者の年齢は30代が最も多く、次いで20代が多かった。

調査の結果、1449人のうち、約8割の1195人が過去10年以内で「(何らかの)ハラスメントを受けた経験がある」と回答。パワハラ被害を受けたと回答した人の数は、約9割の1298人にも及んだ。

「表現の現場 ハラスメント白書 2021」より「表現の現場 ハラスメント白書 2021」より

なお、このアンケートは調査対象者のネットワークを介して調査対象者を抽出していく「スノーボールサンプリング」方法を採用しているため、業界の統計的な調査結果ではない。

調査に協力した評論家の荻上チキさんは、「本調査で扱われている数字は、あくまで参考的なものである。他⽅でスノーボールは、サンプリング調査では明らかにしにくい、 特異なクラスター(集団)の特性を明らかにするためのヒントを得られる」とコメントしている

荻上チキさん

 

「お前程度の容姿の⼥の俳優は腐るほどいる」「殴る、蹴るの暴⾏を受けた」…深刻な被害状況が明らかに

調査の自由記述欄には、多数の被害報告が寄せられた。

その内容は、160ページ以上にも及ぶ『「表現の現場」ハラスメント⽩書 2021』でつまびらかにされている。

上下関係など立場を利用したハラスメントの事例が多く、報告書によると、ほとんどの項目で女性が男性より被害を受けやすい傾向にあった。

「体を触られた」などのわいせつ行為や、無理やり性行為をさせられたなどのケースもあった。

自由記述で寄せられた事例の一部を抜粋する。

 

アート分野のハラスメント

  • 20代の頃、展示を観に来ていた初老の男性客に、「浮気相⼿になって欲しい」と言い寄られた。断ったが、SNSを使って連絡してきたりと不快な思いをした。(30代、女性、イラストレーター)
  • 2時間以上会場に居座り一方的に話を聞かされ、⼀点も買う事なく「久々に女の子と話せて楽しかった♪」と言われた。(30代、女性、美術家)
  • 海外出張中にギャラリーのオーナーから夜中にホテルの部屋に呼び出された。(20代、女性、ギャラリースタッフ)
  • 20代の頃、師事していた先生にヌード写真を撮らせてくれと頼まれた。強制ではなかったが、印象や待遇が悪くなるかと思い不安で、誰にも相談出来ず結局撮影を受けた。(30代、女性、美術家)

映像分野のハラスメント

  • 殴る、蹴るの暴行を受け、それを撮影され、映画として公開された。撮影や映画の公開に支障がでることを懸念し、強く言えなかった。悪い意味での体育会系(上下関係、労働時間の長さ、先輩のいうことが絶対)の気風が縁強く残っていること。ハラスメントを繰り返す人間が、業界で生き残って出世している。またこうした労働条件のため、キャリア形成が極めて難しい。(30代、男性、映像関係者)
  • 撮影のために真冬に川に浸からせられた。その時⼀緒に浸かった別の俳優が倒れた時、「倒れたのは君のミスだ」と責任を押し付けられた(20代、男性、映像関係者)
  • 映像周りの世界では、「女は才能がなく男が才能がある」という謎常識がある気がします。 女だから体で仕事をとってこいという雰囲気なのは当たり前ですが、20代の頃コンペなどでも 「○○の⽅が男だからたたせてあげたい」という理由でコンペを落とされたこともあった。結果としては泣き寝⼊りするしかなかった。(30代、女性、監督)

演劇分野のハラスメント

  • 演出や脚本に性的な内容は⼀切ないにもかかわらず、劇団長より「演技のために必要だ」と猥談を聞かされたり、「性行為をすべきだ、性交をできないのは⼈間として欠陥があるからだ」と言われた(30代、女性、俳優)
  • 若年女性の出演者が、演出家から「演技をよくするため」との理由で、性的な関係を迫られていると相談してきた。(30代、女性、俳優)
  • 研修所で「このメンヘラ野郎」「お前が演出家になれるわけがないだろ」と言われ、打ち上げで同期全員に私に向けてダメ出しをするように言われた(20代、男性、俳優)
  • 演出家からの執拗なダメ出しを受け、その期間中の記憶がほとんどない(40代、男性、俳優)
  • 20代の頃出演していた劇団の演出家に、お前程度の容姿の女の俳優は腐るほどいるから、いつでも変えがきくと言われた(30代、女性、俳優)

 

⾳楽分野のハラスメント

  • ライブハウスで演奏する際に、見知らぬ女性から体をむやみに触られる事例が多いです。お客様なので強く言えません。(30代、男性、ミュージシャン)
  • 男性客からコンサートの差し入れとして卑猥な服や望まないプレゼントを渡される、断りもなく観劇チケットを押しつけられ同行を求められるなど。コンサートの主催者に報告し出禁にしてもらい、SNSをブロックした。(20代、女性、音楽系学生)
  • 広報宣伝担当者に、「体で⼀番武器にできる場所はどこか、愛人になる覚悟はあるか」と問われた。また、合宿と称しホテルに誘われ、お互いを分かり合うには身体を交える事が一番だと言われた。(20代、女性、音楽関係者)

 

写真分野のハラスメント

  • 被写体仕事に応じたら、「美しくないと作品にならない」と高圧的な態度で脅され、脱がされたうえ、体を触られた(30代、女性、俳優)
  • 写真のモデルをしてほしいと言われ、断れず、ヌードを撮られてしまった。(30代、女性、映画館スタッフ)
  • 20代フリーランスのカメラマンですが、契約書を受け付けてもらえないことや金額を明示されないこと、未払いが殆どだったためうつ病にまでなりました。それらがおかしいことだったのだとこのアンケートを通して再認識しました。(20代、女性、写真家)
  • 懇親会では、男性は基本裸にパンツ一枚、女性は下着姿で接待する。「お前らみたいなスタジオマンは裸になることと酒を飲むことでしか笑いを取れないから」と言われた。相談しても、「カメラマンはそうやって根性をつけてなるものじゃないの?」と言われた(30代、男性、写真家)

 

デザイン・建築分野のハラスメント

  • 入社して数ヶ月後から交通費が給料に含まれる、定時なし、ほぼ毎日終電、薄給、辞めたいと伝えると「あなたに払ったお金と時間を返せ」と言われた。(20代、女性、デザイン事務所 スタッフ)
  • この仕事を続けたいなら恋人をつくることも結婚することもしてはいけない、してしまったらぬるい仕事しか出来なくなるためデザインは諦めろなどと数々の暴言を吐かれた。(30代、女性、グラフィックデザイナー)
  • 職場の後輩が他の後輩に性的な冗談を言うのを聞いたり、セクシャリティに関する冗談を咎めたところゲイなのかと聞かれた。(30代、トランス、デザイナー)
  • 当時のクライアントから体を触られていた。最終的には連絡も無く一方的に仕事の提携を切られた上に、業界内に有る事無い事噂を流され一部の仕事がなくなった。(30代、女性、グラフィックデザイナー)
  • フリーランス時代に、クライアントから収⼊未払い、暴言、脅迫を受けた(20代、女性、デザイナー)

 

⽂芸・ジャーナリズム分野のハラスメント

  • 男性アーティストへの取材時。女が来たというだけであからさまに態度と言葉遣いが変わったことが数えきれないほどあった。私自身の交際相手に関してなど、プライベートなことを探られたりするのも不快だった。(40代、女性、編集)
  • 文芸誌の編集長に、容姿に関して言及される。 「女性作家は太っていると売れない」など。 (20代、女性、文筆家)
  • 男性編集者と打ち合わせで会うと、毎回容姿や服装について評価してくるのが不快だった。紹介した女性カメラマンの容姿を見て、彼女のいないところで「あれ、ズーレー?(レズビアンか)」と聞かれた。全て私が駆け出しだったときのこと。そのときは何も言えなかったが、 今になって思い出すと怒りが込み上げることがある。(20代、女性、ライター/編集者)

 

漫画・イラスト分野のハラスメント

  • 編集者から、「男なんだからもっと頑張れ」とか、「女に負けて悔しくないのか」と言われた。(30代、男性、漫画家)
  • 編集者が、提出した原稿を見下し、馬鹿にしてくる。パワハラ・モラハラ発言が原因での体調不良を訴えても、自分の評価を気にして隠蔽するよう指示された。体調不良での原稿の遅れを、原稿料の減額を提示して無理矢理スケジュール通りに強行させようと脅された。(40代、 性別欄未記入、漫画家)
  • 面白い漫画だけを載せると女性ばっかりになっちゃうから男性も載せていると言われ、今後の掲載に不安を抱いた。パーティーで他の若い女性作家と共に男性作家の隣に座らされ、お酌をする役をやらされた。(30代、女性、漫画家)
  • 成⼈向け漫画を描いているので、依頼主にプライベートでも性にオープンでそのような話をしてもいいのだという認識を持たれ、親しくない相手とは話さないような個人的な性事情についての話をさせられる(30代、女性、漫画家)

 

「ハラスメントが今でもたくさん起きていて、それが隠され続けている」

調査は、表現の現場で横行する深刻なハラスメントの実態を浮き彫りにした。

表現の現場調査団」は、「未だにハラスメントが横行している現場を変えなければならない」という問題意識のもと発足された団体だ。

メンバーの一人であるアートユニット「キュンチョメ」のホンマエリさんは3月24日の記者会見で、「表現の現場ではハラスメントが今でもたくさん起きていて、それが隠され続けている」と指摘。「表現の現場を更新していきたい」と訴えた。

「私たち一人ひとりがハラスメントに自覚的になること。そしてハラスメントを止めるための目になること。そしてその目を増やしていくことがとても重要だと思っています」

ホンマエリさん

 

「ジェンダー的な偏りが構造的な問題を生んでいる」

弁護士の笠置裕亮さんは、今回の調査結果から制度的な問題が浮かび上がると指摘する。

一つが、フリーランスや非正規雇用として働く人の法的保護が薄いという問題だ。労働法の保護対象外のフリーランスは、仕事を失うことを恐れてハラスメントを甘受しなければならないなどの状況がある。

また、ジェンダーの不均衡も理由の一つに挙げた。

「セクシュアルハラスメントやアカデミックハラスメントの具体的なエピソードを見ていると、男性からの加害が非常に多い。指導する側にジェンダー的な偏りがあることが構造的な問題を生んでいるのではないか」と指摘し、「性差別的な格差の是正は急務だと考えています」と訴えた。

調査団では今後も調査活動を継続し、フリーランスの法的保護を求める活動や、ジェンダーバランスの不均衡をなくしていくための取り組みを行っていく方針だ。

3月24日の記者会見より

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Source: ハフィントンポスト
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