「好き」と「得意」を生かして副業を成功させる方法は? 実践者にその秘訣を伺いました。
My Another Path
働き方が多様化するなか、「副業・複業」「ギグワーク」といった道を選択する人が増えつつあります。1つの仕事にとどまらず、さまざまなプラットフォームで活躍する人の働き方・生き方の“リアル”をお届け。
「好き」と「得意」を生かしておこづかい稼ぎを…。そんな軽い気持ちで始めた副業が、人を雇わないと回していけないほど軌道にのってしまったら?
今回お話を伺ったのは、株式会社エンファクトリーでは飯田さん、藤生さんに続いて3番目の登場となる山崎俊彦さん。
会社が掲げる「専業禁止」に後押しされて夫婦で始めた副業がうまくいき、単なる「副業」とは違うフェーズに入っているようです。
副業を始めたきっかけ、本業と副業の両立の仕方はもちろん、事業の法人化や雇用に関する課題のほか、気になる年商についても本音で話してくれました。
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──現在のお仕事内容について教えてください。
2012年12月に入社し、現在はショッピングユニット カスタマーサクセスチームでマネージャーをしています。
エンファクトリーでは、国内外のつくり手が手がけた衣食住にまつわるアイテムから、専属バイヤーがセレクトしたものを紹介する「STYLE STORE」等のECサイトを運営しており、私はカスタマーサポートを担当しています。
大学を卒業してからずっとECに関わってきたので、その経験を生かしたかったことと、ECの仕事をするなら誰にでも胸を張って紹介できる商品を取り扱っている「STYLE STORE」に関わりたいという思いで、エンファクトリーへの入社を決めました。
転職活動をしている時からエンファクトリーに「専業禁止」の制度があることは知っていましたが、当時は副業をしたいという思いはありませんでした。
──副業を始めたきっかけや目的を教えてください。
エンファクトリーに転職する約半年前に、夫婦で犬を飼い始めたんです。
犬種はパグなのですが、身体的特徴として首が太く胴体が短いため、既製の服ではなかなかサイズが合わなかったり、サイズが合ってもかわいいデザインがなかったり。そこで、「だったら自分たちで作ってみよう」となったのがきっかけです。飼い主あるあるですね(笑)。
母親にミシンを借りて、いざ作ろうと思っても私は服作りの知識もないし、妻もミシンに糸が通せない(笑)。そこで、妻が裁縫を習いにいき、その間私はECサイトを準備しました。
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現在は、「HANAPECHA YA(はなペチャ家)」というECサイトで、パグをメインにした犬の服やハーネスなどのお散歩グッズを販売しています。
──趣味ではなく、当初からビジネスにしようと考えていたのですね。
パグの飼い主さんなら同じ悩みを抱えているので、良いものさえ作れれば売れるだろうなと思いましたし、会社が副業を認めていることにも背中を押されました。
会社に副業の発表会があることは藤生がお話したと思いますが、発表会の初回で「こんな副業をやりたいと考えている」とみんなの前で宣言し、半年後には「HANAPECHA YA(はなペチャ家)」をプレオープンすることに。
本業との両立は大変でしたが、宣言したからにはやらなければいけないと励みにもなりました。
──ECサイトに関する知識というご自身の経験とスキルも大きかったのではないでしょうか?
それはあります。副業をするなら、ECショップしかないと思っていました。一般の方がECショップで何か売りたいと思っても、まず何をどうすればいいのかわからない。迷っている間にモチベーションダウンしてしまう人が多いと聞きますが、それはそうだろうと思います。ECはすごく特殊な世界なので。
私の場合も、自分ではECの知識があると思って始めましたが、自分でサイトを作ってみて、意外な気づきや学びがたくさんありました。
たとえば、「STYLE STORE」のような大きなサイトではシステムが自動化されていることも、個人のショップではそうはいきません。手作業で一からシステムを構築するなかで、理解していたつもりでいたことも「ああ、こういうことか」と改めて納得することができました。
今は、手数料もかからず簡単にサイトが作れるBASEなどもありますが、ECの仕事に携わっている人は、規模は小さくても一度自分でやってみるとすごく理解が深まると思います。
──副業に手ごたえを感じた瞬間はあったのでしょうか?
大きなターニングポイントがありました。
犬好きで知られるタレントの坂上忍さんがうちの商品を使ってくれていて、それがテレビで紹介されたんです。それをSNSで拡散したら、一気に売り上げが伸びて…。テレビの影響を実感した出来事でしたね。
それまでは、注文が入ったらサイズを聞いて妻が作るというオーダーメイドだったので、サイズ展開や在庫の心配がありませんでした。
ただ、注文数が増えてくるとそれだけでは間に合わず…。時間がかかってお客様にもご迷惑をおかけすることになるので、サイズ展開のある既製服も作るようになりました。生産をコントロールできるのは内製の強みかなと思います。
──現在は法人化されているそうですね。年商はどのぐらいか教えていただけますか?
個人事業主として事業を始めましたが、売り上げに伴い、税金面のこともあって法人化したほうがいいと思うようになりました。法人化はそれほど難しいことではないし、やってきた証にもなりますからね。
平均すると月に約60万円なので、年商にすると700万円ほど。夫婦2人でやっているので、一般的なECに比べると販売1件あたりの利益率は倍くらいになると思います。頑張ればこちらの仕事だけでも生活できなくはありません。
とはいえ、あまりカツカツになるのも嫌ですし、以前勤めていた会社が突然倒産してしまった経験があるので、いつ何があってもいいように収入のライフラインは1つじゃダメだと思っているところもありまして…。
──とはいえ、副業でそれだけ稼ぐということは本業に影響が出ないわけではないと思うのですが…。
特にこの1年はコロナ禍で、本業の衣食住のアイテムを多く揃える「STYLE STORE」はいつも以上に忙しかったんです。
片や、ペット需要の高まりもあってか副業のほうも忙しく…。本業に費やす時間が10だとしたら副業は4とか5とか。両方合わせて実質15働いていたので休みはなく、心身ともに厳しい時期はありました(笑)。そこは副業の大きな課題ですね。
ECショップは、買う方にとっては便利で手軽な優れたサービスですが、販売する方は正直大変な面もあります。うちの場合は商品を作るところから始まりますが、写真の撮影・加工、コピーの作成から、サイズや素材の情報の掲載まで終えて、初めてやっと受注ができる。そして入金、梱包、発送…ととても手がかかります。
かといって、社員を雇える余裕はありません。今は、複数サイズ展開がある服の制作において妻をサポートしてくれる人を3人お願いしていますが、不定期です。
定期的に開催しているポップアップストアの開店前は忙しいので、そうした時はスポットでお願いできればいいんですけどね。
犬の服作りは常に人材不足なので、妻は犬服教室を始めました。いずれ人材育成に繋がればと思います。
──エンファクトリーはECのスペシャリストが揃っていますが、手伝ってもらったりすることはないのですか?
それは申し訳ないので、我慢しています(笑)。発表会や月次報告で、チームのメンバーも私の副業のことは理解してくれていますし、犬のグッズも「かわいい」と褒めてくれたりして、それはすごくありがたいなと感じています。
そういえば、会社の後輩と、副業と副業がコラボするといううれしい出来事がありました。ECサイトのオフ会を動画に残したかったのですが、以前から「動画制作を副業にしたい」と話していた後輩にお願いすることができたんです。良い出来栄えでしたし、後輩にとっても小さいながらも実績の1つになると思うので、こうした連携はとてもいいと感じました。
──副業のメリットとデメリットを教えてください。
デメリットは、やはり仕事が増えることの負担ですね。ここを解決して事業を大きくしたいなら、仕事を人に振っていくしかないと思うので、考えなければいけない時を迎えたかなとは思っています。あとは、体調とモチベーションの管理は永遠の課題ですね。
そんななかでも、メリットはやはり「楽しい」ということに尽きます。お客様が喜んでくださることはもちろんなのですが、仕事でも愛犬と関われるのがうれしいです。休日にお台場へ出かけて、ランチ後に散歩がてら犬の写真を撮って…それは週末の癒しのひとときでもあり、仕事でもある。仕事と家庭と趣味が一度にできるのがありがたいです。
あとは、先ほどお話したように、会社のメンバーと副業と副業のコラボができるのはすごく良いと感じます。あとは社内に「ECをやってみたい」という人は多いので、言ってもらえれば喜んでサポートしますし、ECのコンサルという副業もできそうですけどね(笑)。
──こんなに忙しいのに、次なる副業のことを考えるとは!
「副業は1つ」とは考えていないです。ただし、やるとしてもまたECに関わることでしょうね。
私は鳥取県の出身で、都会とは違って、欲しいものを手に入れるのにとても苦労した過去があります。欲しい服があれば、雑誌の巻末にある「掲載店一覧」を見てはショップに電話をかけ、通販をしてくれるところを探したりしていました。
そんななか、高校生の時にわが家にもパソコンが来て。「怪しいかな」と不安を抱きつつもインターネットで物を買ったんです。自分の生活圏では絶対に手に入らないものをインターネットを介して手にする喜びを初めて知りました。私がECを好きだと感じるのには、そんな原体験があるからなんです。
今はいろんなものが誰でも簡単に買える時代になりましたが、まだまだ「届けられていない」と感じることがあります。たとえば、インターネットを使いこなせない高齢者の方が重いものを買いに行かなくても済むように、地方に住む人々へもスムーズにものが届けられるように。それは本業と副業の両方で叶えていきたいですね。
今後の野望
ECを通じて、多くの人の「欲しい」を叶える。
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写真提供: HANAPECHA YA(はなペチャ家)
Source: エンファクトリー, STYLE STORE, HANAPECHA YA(はなペチャ家)
Photo: KOBA
大森りえ
Source: ライフハッカー
「好き」と「得意」を副業に生かす方法。始め方や課題は?