UberやLyftなどの配車サービスは自分たちが社会にもたらすメリットとして、「人々の生活に配車サービスが根付くことにより、車の所有者が減少する」という点を主張してきました。ところが、カーネギーメロン大学などの研究チームが行った新たな研究により、実際には配車サービスの浸透に伴って大都市圏における車の所有者が増加していることが示唆されています。
「UberやLyftなどの配車サービスが浸透することで車の所有者が減る」という主張は間違いとの研究結果
UberやLyftなどの配車サービスは自分たちが社会にもたらすメリットとして、「人々の生活に配車サービスが根付くことにより、車の所有者が減少する」という点を主張してきました。ところが、カーネギーメロン大学などの研究チームが行った新たな研究により、実際には配車サービスの浸透に伴って大都市圏における車の所有者が増加していることが示唆されています。
The impact of Uber and Lyft on vehicle ownership, fuel economy, and transit across U.S. cities: iScience
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(20)31130-5
Uber and Lyft Say They Reduce Car Ownership, But That Might Not Be True
https://www.vice.com/en/article/n7v4kd/uber-and-lyft-say-they-reduce-car-ownership-but-that-might-not-be-true
UberやLyftなどの配車サービスはかつて、ドライバーは配車サービスによって高収入を稼ぐことができる上に、都市部における渋滞が減少すると主張してきました。しかし、Uberはドライバーの年収に関する主張は誇張であると連邦取引委員会に非難されており、配車サービスの車両が交通渋滞の一因になっていることもわかっています。
また、配車サービスは車の所有者を対象とした調査結果から、「配車サービスの浸透によって都市部の住民が自動車を手放し、環境の保護につながる」と主張しています。Lyftが行った調査では、配車サービスの利用者のうち49%は「UberやLyftが利用できない場合は自動車を購入する可能性が高い」と回答したとのことで、配車サービスの浸透によって自動車の購入を思いとどまっている人がいるのも事実です。
by Tati Tata
カーネギーメロン大学などの研究チームは配車サービスの浸透と車の所有率との関連を知るため、「2010年~2017年にかけてUberやLyftが参入した都市圏における自動車登録数」の変化を調査。その結果、配車サービスが参入した都市圏ではサービスの参入前と比較して、自動車の所有率が0.7%増加することが判明したと研究チームは述べています。
配車サービスの導入によって車の所有者が増える理由について、研究チームは「配車サービスのドライバーになるために新しく車を購入している」可能性があると指摘。UberやLyftでは車種によって利用料金が違うため、より多く稼ぐために高ランクの車種を購入するケースもあったと考えられるそうです。
車の所有者が増加する割合は、1人当たりの車の所有率が多い「自動車依存の大きい都市圏」で特に大きいそうで、自動車依存の小さい都市圏に配車サービスが参入した場合、車の所有者は必ずしも増加しませんでした。また、人口増加が遅い地域では車の所有者の増加数が人口の増加数を上回る傾向が見られますが、人口増加が速い地域では車の所有者の増加数を人口の増加数が上回る傾向が見られ、1人当たりの車両保有数は減少する傾向があるとのこと。
調査を主導したJeremy Michalek教授は、調査を行った都市圏全体で自動車所有率が上昇したことは注目に値すると主張。「今回の調査結果は、配車サービスが参入した時に何が起きるのかに関する私の見方を変えました」とコメントしました。
一方、今回の研究結果には制限もあり、「UberやLyftの使用率が低い都市圏全体まで調査すると結果にノイズが入る」「調査が行われた2010年~2017年は経済が成長した時期であり、景気の循環によって自動車の所有率が増加した可能性もある」といった指摘があります。これに対しMichalek教授は、差分の差分法という統計手法を用いて補正を行ったと述べています。
また、研究結果にノイズが入りやすいという点に加えて、そもそもUberやLyftの「車の所有率を減らす」という主張自体がナンセンスという声も上がっています。たとえ車の所有率が高くても、道ばたや車庫に止まっている車は有害な温室効果ガスを排出しないため、環境にそれほど大きな影響はありません。海外メディアのMotherboardは、「人々が単に自家用車での旅行を誰か別の人の車を用いた旅行に置き換えただけならば、車の所有は都市の問題を解決しません」と指摘しました。
Source: ギガジン
「UberやLyftなどの配車サービスが浸透することで車の所有者が減る」という主張は間違いとの研究結果
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