匿名のペーパーカンパニーが国内で活動することを事実上禁止するAnti-corruption law(汚職防止法)や、軍事費の大枠などを定める国防権限法が2021年1月1日に連邦議会上院で3分の2以上の賛成を得て可決されました。
シンガポールでは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)接触確認のためのアプリTraceTogetherと、専用のウェアラブルデバイスが国民に無料で配布されており、これらは人口のおよそ78%に普及しています。しかし、シンガポール当局は法執行機関がこれらのデータにアクセスして犯罪捜査に利用できることを確認しており、個人情報保護の観点から国民に懸念の声が広がっています。
Singapore police can access COVID-19 contact tracing data for criminal investigations | ZDNet
https://www.zdnet.com/article/singapore-police-can-access-covid-19-contact-tracing-data-for-criminal-investigations/
TraceTogetherとウェアラブルデバイスについては当初からプライバシーに対する懸念があがっていました。しかし、TraceTogetherとウェアラブルデバイスはいずれもインターネット通信もGPSも使用せず、Bluetoothのみで他のデバイスと通信する仕組みであるため、追跡デバイスではないと何度も主張されてきました。また事前に登録した電話番号と識別番号はランダムなIDに暗号化されて保存され、シンガポールの外務大臣であるヴィヴィアン・バラクリシュナン氏は「デバイスを物理的に手渡すことでのみデータへのアクセスが可能で、陽性と診断されない限りはアクセスは行わない」と強調しています。
バラクリシュナン氏はデータにアクセスできるのは「限られた接触追跡チームのみ」と述べていましたが、シンガポール内務大臣のデスモンド・タン氏が2020年1月4日に議会で発言した内容によると、シンガポール警察は犯罪捜査のためにデータにアクセスできるとのこと。以下が発言のあった議会の映像です。
タン氏はTraceTogetherについて、個人データ保護のため「許可された人物のみがデータにアクセスでき、許可された目的のためにデータを使用し、安全なプラットフォームにデータを保存する」という厳格な措置を施していると述べ、「刑事訴訟法に基づきあらゆるデータにアクセスすることは可能だが、それらは許可された人物のみが行い、新型コロナウイルスのまん延と戦うためだけに使用する」と説明しました。これに対し、警察によるデータの使用がTraceTogetherのプライバシーポリシーに違反していないかどうかを尋ねられたタン氏は「我々は市民の安全が脅かされている状況下でTraceTogetherのデータを使用することは否定しないし、こういった使用は他のすべてのデータにも適用される」とも述べています。
このニュースを受けて、デジタルプライバシーの専門家であるレイ・ウォルシュ氏は「一般市民に配布された追跡システムにより大規模な監視ネットワークが構成され、これらが悪用されたり、移動の自由などの権利を奪うものになるのではないか」と懸念しています。
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Source: ギガジン
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